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「QuinRose」
アリスシリーズ

震える唇で紡ぎだした音は無情にも届かなかった(ハートの国、ボリアリ)

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 同じ気持ちを抱えているはずなのに、どうして伝わらないんだろう。



「どうして・・・・・この国の住人は・・・・・・そこら中で銃撃戦開始するのかしら・・・・・・!!」

 全速力で走ったおかげですっかりきれてしまった息を整える。途切れ途切れのグチがつい零れるけれど、文句の1つも言いたくなるという話だ。
 私は周囲を木で囲まれた別れ道の真ん中で立ち尽くした。銃声音がまだ耳に痛い。
 うかつだった。休戦区域の時計塔広場だからと思って、すっかり油断していた。付近のお店で買い物をすませた後、久しぶりに1人きりでのんびりお茶を飲みながら読書でもして、うららかな昼を楽しもうとしていたのに・・・・・・・・まさか通行人同士の銃撃戦に巻き込まれるなんて。
 突然すぐ間近で響いた銃声音と文字通り飛び交った銃弾に呆然としたのも束の間、混乱したその場をダッシュで離れ、なんとか時計塔広場から脱出することに成功した。
 この世界での知り合いには些細なことですぐに銃を抜く人が多いため、悲しいことに銃撃戦には慣れてしまったけれど・・・・・・1人の時に巻き込まれたのは初めてだった。横を弾がバンバン掠めた場から、よく無事に逃げられたものだと自分のことながら感心する。

「っ・・・・・・・・・!!」

 緊張を解いた途端、右腕に走った痛みに眉をひそめる。見ると肌に赤い線ができていて、そこから血が少しばかり流れ出していた。
 そう言えば、逃げる途中で腕に何かが掠めたような痛みを感じたような気がする。
 必死で走っていたから、今になるまで全く気がつかなかったし痛みも感じなかったけれど。
 多分流れ弾か何かだろう、なんて冷静に考えられる時点で、私の頭も大概アレな感じだけれど・・・・・・見た感じ、出血も少ないし本当にかすり傷といった感じだ。あんな戦場みたいな中にいて、これくらいの怪我ですんだのだからよかったというべきかもしれない。

 いうべき・・・・・・・・・かもしれないけど。

「・・・・・・・・マズイ」

 別に跡が残るかどうかなんて気にしていない(むしろこんなかすり傷、跡も残らないに違いない)が、私は思わず苦々しく呟いた。眉間に皺がよるのを止められない。
 まずい、これはちょっとまずい。
 何度も言うようだけれど、本当にかすり傷だ。命に別状があるわけじゃない。ちょっと血が出てるくらいで騒ぐつもりも気にするつもりもない。


 ・・・・・私は。


「帰ったら大騒ぎになりそう」

 その様子がリアルに想像できて、思わずハアッと溜息がこぼれる。
 大げさかもしれないけれど、冗談でもうぬぼれでもなくて、それくらい大事にされている自覚がある。・・・・・・・・・というか自覚せざるをえない。
 この世界の住人に好かれやすいというナイトメアの言葉通り、知りあった人達の多数は恐ろしいほど私に好意を向けてくれる。

 なかでも滞在先の遊園地の居候仲間であり、気がつけば好いて好かれる恋人という関係になってしまったボリス。
 彼は壊れ気味じゃないかというくらい、私に対して好きだという態度を見せてくれる。

 過剰なまでの愛情表現はもちろん、恥ずかしげもなく独占欲を見せる。
 ボリスは猫みたいに気まぐれな性格だけど、私を特別だ好きだと言ってくれる気持ちを気まぐれだと思ったことはない。舞踏会でも彼に言ったが、その点に関して彼はとてもわかりやすい人(猫?)だ。
 少し前の時間帯、ちょっと遊びに出かけた時だったか。転ぶかなにかして、擦り傷を作ってしまったことがある。
 大した怪我じゃなかったのに、遊園地へと帰ってきた私が膝に擦り傷をこしらえてきたことにボリスはすごい形相で詰めよった。どうしたんだ、誰かにやられたのか、消毒はしたのかと質問攻めにされた挙句、大げさなとあきれてしまうくらい丁寧な治療を受けた。
 ・・・・・・・・・・今度ケガして帰ってきたら、オシオキだからねなんていう物騒な言葉つきで。

「・・・・・・・・・・・・・・本気でまずい」

 思い出して、さあーっと血の気が引く。
 まだ記憶に新しい出来事から、そんなに時間は経っていないというのに。
 ボリスがあのシニカルな笑みで、でも瞳は笑っていない状態で迫ってくる光景が一瞬脳裏をよぎった。彼は冗談みたいに言っといて、結構本気で言ったことは実行するタイプだ。もうそれはそれは様々なことを経験させられた身としては、嫌というほどわかっている。
 しかも前回は自分の不注意で転んだということでボリスは落ち着いてくれたが、今回の怪我は流れ弾が原因。こういう言い方はしたくないし間違っているのだけど、私は誰かに撃たれて怪我をしたということにもなる。
 いくら私が偶然だ、別に狙われたわけじゃなくてたまたま掠めただけだと説明したところで、あの短気なボリスが言うことを聞いてくれないのは目に見えている。絶対に私を撃った(あくまでも偶然)人を殺しに行こうとするだろう。
 わかりやすすぎるほど私を大切にしてくれるボリス。
 そして自分のものに手を出されることは許せないと常々言っているボリス。

「・・・・・・・・しばらく帰るの止めようかしら。」

 幸い今立っているのは、遊園地か帽子屋屋敷へ続く別れ道。このまま帽子屋屋敷の方に行って、適当な理由をつけて怪我の治療をさせてもらったほうがいいかもしれない。帽子屋には知り合いも多いから、しばらく過ごさせてもらえるだろう。
 帰ったらボリスに相当文句を言われそうだけど、それくらいで人命救助ができるなら安いものだ。


「だって、誰が撃ったかもわからない流れ弾で怪我しました~とか言ったら、探しだすのが面倒くさいからその場にいた全員を殺すとか言いかねないんだもの・・・・・・・・・・こんなかすり傷くらいで、大量殺人の原因になりたくない・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・あんたを傷つけたってだけで、俺はその場にいた奴ら全員殺してやりたいけどね。かすり傷でもさ」


 ・・・・・・・・・・・・・・・聞き間違いであってほしい、と真剣に思った。


 物騒な言葉にかなり低めの声。
 けれどよく知りすぎているそれに、壊れた人形みたいな動作で恐る恐る振り返る。
 帽子屋屋敷へ続く道、そこのど真ん中に立っている見間違えのないピンクは・・・・・・・・・・

「ぼ、ボリス・・・・・・・・・・なんでこんなところに・・・・・・・・・・」
「双子と遊んできた帰り、だよ。そしたらアリスが立ってるの見つけてさ。声かけようと思ったんだけど、なんか1人でぶつぶつ言ってるし難しい顔してるし・・・・・・・・・・」

 にっこりと。
 ボリスは笑った。そう、にっこりと。


(・・・・・・・・・・・・・・これは・・・・・・・・・・そうっっっとう怒ってる、わね・・・・・・・・)


 明るすぎる、わざとらしい笑顔が逆に怖い。
 固まっていると、ボリスが距離をするりと縮めて私の腕を取る。すでに半分乾いている血と傷を見た瞬間、すうっと笑顔が消えて無表情になった。
 今まで見たこともないくらい冷たい顔に、背筋が凍る。

「・・・・・・・・・・・殺す」
「だ、ダメよ、ボリス!!??」
「あんたを傷つけたんだ。絶対許さない」
「かすり傷なんだってば!!」
「かすり傷じゃすまなかったかもしれないだろ!?」

 震えそうになる声をなんとか励ましてボリスを止めると、ボリスは本気で怒ったように私を睨む。
 あまりに強い視線と口調に思わず黙ると、ボリスは私の腕を引き寄せて傷口にぺろりと舌を這わせた。
 湿った感触にぴりっとした痛みが走り、少し顔をしかめる。
 ボリスはそんな私の反応にも構わず、ただ何度も傷口を癒すように舐める。乾いていた血が消え、後には皮膚が破れたような薄い傷口だけが残るくらいになっても、彼はそこから唇を離さなかった。


「・・・・・・・・・・・もっとひどい傷を負ってたかもしれない、死ぬかもしれなかったんだ。そんなの絶対許さない・・・・・・・・・・あんたをそんな危険な目に遭わせたヤツを許せない・・・・・・・」


 今にも消え入りそうな吐息でそう呟くと、ようやくボリスは私の腕から顔を上げた。
 そしてそのままコツンと額をあわせてくる。金色の瞳が不安そうに揺れ、触れ合いそうなくらい唇が近づくのが間近に感じられた。


「アリスは特別なんだから・・・・・・・死んだり傷ついたりしちゃ、絶対ダメだ。」

「・・・・・・・・・・ボリス・・・・・・・・・・・」

「あんたが死んだら、俺は生きていけない。」


 触れるだけの優しいキスが、そっと唇に降りてくる。
 ぎゅっと抱きしめられて、何だか少し心が痛む。こんなにも心配させたのに、たかがかすり傷だなんて言っていた自分が恥ずかしい気がした。
 考えてみれば流れ弾だって当たり場所が悪ければ、死ぬ可能性がある。ボリスがここまで神経質になるのも当たり前なのだろう。


「・・・・・・・・・ゴメンね。大丈夫だから」


 そう言って、ボリスの頭をそっとなでる。ふわふわした感触が心地いい。
 ああ、どうして気付かなかったんだろう。私も同じ気持ちなのに。ボリスが怪我をしたり死んだりしたら、私だって・・・・・・・・・・・
 恐る恐るという風に顔をあげたボリスに、そっと今度は私から唇を重ねる。
 すぐに離れるはずだったそれは、ボリスが頭を抱え込むようにして押さえ込んできたせいで、逆にますます深くなる。


「・・・・・怪我なんて、もうしないわ・・・・・・・だから・・・・・・・ボリスも怪我しないで・・・・・・・」


 途切れ途切れの吐息の中で、震える唇で、そう伝えた。




 今、私はこう思う。
 どうして彼は同じ気持ちなのにわかってくれないんだろうと。
 どうして私がボリスを特別だと思っていること、怪我してほしくないと不安に思っていることを理解してくれないんだろうと。

「今は、あなたを自分が特別だって思わせてあげたいって思うわ。」

 ボリスの怪我を見つめながら、手当てをしながら、私はそう呟く。
 あの時ボリスが怒った傷と同じ、いやそれよりもひどい銃弾の傷を見ながら。



震える唇で紡ぎだした音は無情にも届かなかった



 あなたにもわかってほしい。傷つかないでほしい気持ちは同じだと。





End.
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