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「ネオロマ」
遙かシリーズ

彼の望み(遙か4、風→千)

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 時々、わからなくなる。
 俺が本当に望むこと。

「ただいま。いい匂いですね、今日の夕飯は?」
「あ、風早おかえり!今日はね~、ハンバーグにしてみた」

 そう言って千尋はエプロン姿で机の上にできたてのハンバーグが乗った皿を並べていく。いつもの定位置に、皿や箸が人数分きちんと整えられていた。

「今回はちょっとがんばって、手作りなんだ!」
「おや、冷凍のハンバーグじゃなかったんですか。デキがいいからてっきり・・・・・・・」
「・・・・・・・それ、どういう意味?」

 むうっと頬を膨らませる千尋が可愛らしくて、思わず笑ってしまう。すべての運命が狂ってしまったあの日以来、傍で守り育ててきた大切な姫は、いつまで経っても可愛らしい。
 冗談ですよ、と笑いを堪えながら頭をなでると、ますます眉をひそめてしまう。子ども扱いして!というのが千尋の言い分で、千尋が可愛いから仕方ないというのが俺の言い分。

「でも美味しそうなのは本当ですよ。初めての手作りハンバーグにしては、とても上手にできたじゃないですか」
「本当!?」
「ええ、これを機会に他の料理のレパートリーも増やしてほしいものです」

 そう付け加えると、うっと千尋は言葉につまる。弁当を作らせれば、大半が冷凍食品だらけになるという自覚があるのかもしれない。

「そ、それはわかってるけど・・・・・・・・朝バタバタしてる時に、お弁当作るのって面倒なんだもん」
「面倒でもやった方がいいですよ。千尋は筋はいいんですから、面倒くさがらずにレパートリーも増やせばかなりの料理上手になります。花嫁修業と思って、がんばってください。千尋ならきっといいお嫁さんになれますよ。俺が保証します」
「嫁とかまだ全然先のことじゃない・・・・・・・・そんなこと言ったら、風早の方がよっぽど早く結婚していい旦那さんになりそうじゃない。風早モテるんだし、そういう相手とかいないの?」
「俺は・・・・・・・」

 きらきらした期待の目で見られ、今度はこっちが返事に困る。
 正直なところ、結婚なんて考えたこともなかった。こちらに来てしばらくは見知らぬ世界で千尋や那岐を抱えて暮していくことに必死だったし、落ち着いた後も千尋達が自分の力だけで生活できるようになるまでは、とそれだけを考えていた。


「俺のことはどうでもいいんです。俺は、千尋が幸せになってくれれば、それだけで」


 結局、口から出てきた言葉は限りなく本音に近いものだった。
 俺の幸せの基準は千尋で、一番に考えなければならないこと。お守りすると決めた姫の幸せこそが、俺の望みで・・・・・・・・・そのためなら、俺は何もいらない。
 そんな思いを胸に言葉を告げると、千尋は初め何度か目を瞬かせ、その後段々と不機嫌そうに眉をひそめた。
 わかりやすい怒りに、俺は何か千尋が怒るようなことでも言ってしまっただろうかと会話を反芻するけれど、思い当たる部分がない。
 内心首を傾げていると、千尋は不機嫌そうに「夕飯だから降りて来いって、那岐を呼んできて」とだけ言って夕飯の支度に戻ってしまった。何が何だかわからないまま、とりあえずこれ以上千尋の機嫌を損ねないようにと、言われた通り那岐を起こしに階段へと向かおうと背を向けた。

「風早。さっき『俺のことはどうでもいい』って言ったよね」

 不意にかけられた声に振り返る。
 千尋はこちらを向かないまま、手を止めて背中を伸ばして。顔が見えなくても、怒った表情で射抜くように真剣な瞳をしているのがわかる。それくらい、俺と千尋は一緒に過ごしてきた。


「どうでもいい、なんて言う風早は嫌い。風早だって幸せになるの!幸せにならなきゃ、私が許さないんだからね」


 言い捨てて睨むように俺を振り返った千尋は、予想通りの表情で。
 でも予想外に、その真っ直ぐな瞳が綺麗だったから。
 俺はどういう表情をしていいかわからず、結局ぎこちなく笑って「ありがとう」と言うことしかできなかった。



 時々、わからなくなる。
 すべてを忘れたまま、平和に異世界でこのまま生きていくこと。
 すべてを思い出し、戦いに身を投じるとわかっていても生まれ故郷へ戻ること。
 千尋にとって、本当に幸せなのはどちらの道なのだろうか。
 千尋に平和に生きてほしいことも本当、戦いに巻き込まれるとしても千尋に中つ国の後継者として生きてほしいことも本当。あの豊かで美しかった故郷を思い出してほしいのも本当、家族を失った悲しい記憶を思い出してほしくないのも本当。
 すべてが俺の本音ならば、俺が望むことは結局何だろう。

 千尋は俺も幸せにならなきゃ許さないという。
 けれど俺は、俺の幸せがわからない。望みがわからない。

 俺の幸せは、千尋が幸せになること。
 大切な姫の望みが、俺の望み。
 だからやっぱり、俺のことなんてどうでもいいんだよ。
 俺は千尋が幸せなら、それでいいのだから。





終わり
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