スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←本編 日常風景~エース、モデルになる!の巻~前編 →彼の望み(遙か4、風→千)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
総もくじ  3kaku_s_L.png ネオロマ
総もくじ  3kaku_s_L.png QuinRose
総もくじ  3kaku_s_L.png オトメイト系
総もくじ  3kaku_s_L.png リジェ系
もくじ  3kaku_s_L.png その他
総もくじ  3kaku_s_L.png お題もの
  • 【本編 日常風景~エース、モデルになる!の巻~前編】へ
  • 【彼の望み(遙か4、風→千)】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「ネオロマ」
手折り華(遙か3、将望前提ヒノ望)

五章 鳳仙花 前編

 ←本編 日常風景~エース、モデルになる!の巻~前編 →彼の望み(遙か4、風→千)
 この恋が本気だと知ったばかりの頃は、絶対にあの華を手折ってやろうと思っていた。
 手に入らないなら、奪うまで。
 むちゃくちゃなほどに傷つけて・・・・・・・彼女の中に残るのが、オレだけであればいい。
 そんな暗い願望を抱いていた。

 だけど華を知れば知るほど。
 恋すればするほど。

 傷つく姿を見たくないと。
 泣かないで笑ってほしいと。

 ―――そんな気持ちが加速した。

 彼女を傷つけるものは何だろうと許せず、ただひたすらに守りたいと思うようになっていた。


 傷つけたい気持ち。
 守りたい気持ち。
 そのどちらもオレの本音。


 矛盾した感情に揺れているうちに、やがて生まれたのは不安だった。
 手に入れた瞬間に、望美が腕の中から消えてしまうかもしれない。失うことへの恐れが、知らないうちに逃げに変わっていた。
 彼女を繋ぎとめる術を求め、自分の気持ちを偽ってまで将臣の代わりに甘んじようとしていた。
 オレを見ようとしていた望美の想いも、一人の男として見て欲しいというオレの想いも。いつの間にか否定して、ただ望美を自分のもとに繋ぎとめることに必死になって。

 ・・・・・・・・・まったく、オレらしくない。

 熊野別当として幼い頃から冷静な判断力を叩き込まれてきたオレは、行動する前にその結果や対策を予測してから行動するのが常だった。個人的な感情を介入させることなど滅多になかったし勢いに任せて行動することもなかった。
 だけど望美に関してはどうだ。
 バカみたいに感情で突っ走り、とった行動の意味も深く考えず。
 そして今頃になって、こんな風に自分の感情や行動を整理できるようになっている。
 自分だけじゃない。
 望美や将臣の気持ち、それに行動の意味だって・・・・・・・今さらながら思い出しては、何となくその意味を推測できるようになってきた。
 全く、こんな調子じゃ弁慶もわざわざ忠告めいたことを言いたくなった理由がよくわかる。あまりにオレは周りが見えてなくて、漠然とした未来しか予想できていなかった。


 たとえ今さら状況が理解できたって、望美の気持ちを知ったって。
 もう何もかも、遅いって言うのに。





 窓から差し込む光が変わったことを瞼の裏で感じ、閉じていた目を開く。日の高かった空は橙色に染まり、いつの間にか随分と時間が経っていることに気がつく。
 少し一人でゆっくりと考えたくて、宿の部屋で座り込んでいるうちにいつの間にか寝てしまっていたらしい。思ったより体は疲れているようだと今さら気がつく。まあ、厳島神社でのケリがついた直後から、ろくな睡眠もとらずに戦後処理に携わっていたのだから・・・・・・・当然といえば当然か。
 寄りかかっていた壁から体を離し、少しだけ溜息をついて視線を障子の向こうへと動かす。足音がこちらに近づいてくるのが聞こえたからだ。
 源氏の要として働いた人物達のために用意された宿で、しかも多くの人間が出払っている今、宿にいてこんなにも軽快な足音を響かせている相手は一人しかいない。

「ヒノエくん、いる?」

 聞こえてきた声の主は、最も愛しい人のもの。
 そして同時に・・・・・・・今、最も会いたくない人のもの。
 一瞬、このまま居留守を決め込もうかと思ったけれど、すぐに思い直して「ああ、いるよ」と言葉を返した。


 ・・・・・・・・・もう壊れるものならば、いっそ今すぐ壊してしまえばいい。
 向こうから来てくれたのだから、ちょうどいい機会だ。


「あの・・・・・ね、入ってもいいかな。話があるんだ」
「・・・・・・・・・もちろんだよ。麗しい姫君の訪問は、いつだって大歓迎さ」

 その言葉に、少し遠慮がちながらも障子が開かれる。
 夕陽を背にした望美の表情は影になってオレからよく見えなかったけれど、妙に晴れ晴れとしているようだった。


「オレも・・・・・・・姫君に話しておきたいことがあったしね」



 まがいものの絆など、本物の絆には敵わない。
 代わりとしての立場など、本物には敵わない。
 オレがやっとの思いで少し傾かせた望美の気持ちだって、あいつは手を差し伸べるだけで簡単に取り戻してしまうんだ。

 だからこそ、厳島で茶吉尼天を消滅させた時。
 望美の祈りと将臣の願いによって生じた応龍の下、手を握ったまま微笑みあう将臣と望美を見て。

 ―――月の隣に相応しいのは、オレじゃないと悟った。



 オレの向かいに腰をおろした望美は、いつもより穏やかに笑っていた。
 戦がようやく終わったことで緊張感が消えたためか、それとも心から想う相手と気持ちが通じ合った嬉しさからか。何か抱えていたものを吹っ切ったような表情に、オレは取り残されたような気持ちを覚えた。
 もう少し早く我に返って、的確な手が打てていれば。

 こうして向き合い、全てを終わらせる覚悟を決めなくてもすんだんだろうか。

「さっきまで譲くんと一緒に平家の人達がいる屋敷に行ってきて、将臣くんと会ってきたの。話があるって言うから」

 オレの決心を知らない望美は、何気ない顔でそう告げる。
 いきなり将臣のことを聞かされて胸が痛みに疼いたけれど、平静な顔をして続きを待つ。
 将臣が望美を呼び出した理由、そして話の内容。嫌と言うほど予想がついて、吐き気がしてくる。

「なんでも今日の朝早くに書簡が届いて、九郎さんが平家を追討しない許しを頼朝さんから勝ち取ったって書いてあったらしいよ」
「ああ、それならオレも聞いてる。源氏側にもその知らせが昼過ぎに届いて、あっちもこっちも退却やら何やらの準備で大わらわさ」
「そっか。えっとそれでね、将臣くんが言うには・・・・・・・・あまり長く瀬戸内に留まって源氏方から難癖をつけられても困るから、船旅の準備とか修繕が終わり次第、南の島へ出発することに決まったんだって」
「まあ、懸命な判断だろうね」

 切り札が敗北した頼朝は、すぐさま大軍を率いて鎌倉へと戻った。怨霊の力を使って源氏と最後まで戦うことを主張していた清盛も消えた。そして何より、それぞれの軍の希望として祭り上げられていた源氏の神子と還内府が手を組んで戦い、異国の神に勝利したのだ。もはや源氏だの平家だの、半ば関係なくなった形で戦は終焉を迎えている。
 けれど長い歴史の中で育った源氏と平家の憎しみと対立が、すっかり消え去ったわけではない。いつまたひょんなきっかけでいがみ合いが再発するとも限らない。
 頼朝の気が変わらないうちに離れたほうがいいという意見は確かだろう。

「港の船をざっと見た感じだと、急げば支度がすっかり整うのは大体二日後くらいってとこかな。・・・・・・・そういや、譲は?一緒に出かけたんだろ」
「うん、そうなんだけどね。まだ将臣くんと話してるよ。将臣くんがオレは元の世界に帰らない・・・・・・・なんて言いだしたものだから」

 やっぱりな、と心の中で小さく呟く。
 妙に義理高いところのある将臣のことだ。元の世界より今まで苦楽を共にしてきた仲間を選ぶだろうとは予想していた。

「平家の皆が無事に辿りつくのをちゃんと自分の目で見届けたいんだって。将臣くんらしいって私は思うんだけど、譲くんは違うみたいで。結構モメちゃったものだから、2人だけでゆっくり話し合った方がいいかなと思って、私だけ先に帰ってきたの」

 結局は将臣くんの頑固さに譲くんが折れて、話はおしまいになっちゃうんだろうけど。

 そんな風に言葉をつけたすあたり、やっぱり望美は将臣のことをよくわかっている。
 彼女の言うとおり、きっと将臣は意見を変えないだろう。この世界に残り、平家の人間と遠くの地へと落ち延び、そこで新しい生活を始めていくだろう。
 別にそのことをとやかく言う気はないし、平家との繋がりも持つ熊野の人間としては、彼らが生きのびてくれることに安堵感を覚える。

 ただ。


「・・・・・・・・・姫君は?」
「え?」
「姫君はやっぱり、元の世界に帰るのかい?それともお前も残る?」


 望美はオレの問いにしばらく答えを返さなかった。
 少しだけ視線を落とし、物思いに耽るような目をしているのは、自分が出した答えにもう一度問いかけているようにも思える。それで本当にいいのか、と。

「・・・・・・・・すっごく、悩んだんだけどね。向こうの世界には家族も友達もいるし、思い出もたくさんつまってる。けどさっき、将臣くんと話をして・・・・・・・・将臣くんの言葉で、覚悟決めたよ。」

 問いかけても答えは変わらなかったのか、望美はそう言って決意に溢れた視線でオレを見つめた。
 話すときに相手の目を見る。
 姫君のこの癖は好ましいものだけど、今はその強い視線を直視したくなかった。



「私、この世界に残る」



 言い切ったそれは、予想していたものと寸分も変わりはない。
 いくら後悔することになろうとも、決して揺るがずに決断していく彼女らしい答え。
 将臣がこの世界に残るとしたら、望美がどうするは何となくわかっていた。

 望美は、もう『白龍の神子』ではない。
 将臣も、もう『還内府』ではない。

 異国の神に取り込まれそうになった望美の手を誰よりも早く掴み、将臣は最後まで彼女を守り抜いた。
 正反対を向き続けていたはずの二人が、同じ方向を向いて戦い・・・・・・・そして勝利した。応龍を復活させるほどの絆が戦を終焉に導き、望美と将臣を分け隔てていた宿命はすでにない。


 二人の想いを妨げる障害は、もう何もない。

 やっと結ばれる未来が見えたというのに、どうしてわざわざ別れてしまう道を選ぶものか。あんなにも互いを求め、想い、強い絆で結ばれている二人が。
 だから、望美の出した答えは当然といえば当然だし、わかりきったものだった。
 理解も予想もしていたのに・・・・・・・・・・・胸がイタイ。


「・・・・・・・・・・・・・・将臣はいいね。月の姫君にこんなに愛されて」
「え?」

 ずっと傍にいて、見つめてきて。望美が将臣を心底大切に想っていることくらい、言うまでもないほど思い知らされてきた。
 それは将臣も同じ。屋島での戦の後、雪原で対峙した時に将臣がオレに向かって吐き出した言葉が何よりもの証だ。
 あの頃はただ、望美を泣かせる最大の原因だったあいつに腹が立って、絶対にあいつにだけは望美を渡すものかと躍起になっていたけれど。
 あの二人の間に何もなくなった今となっては、想いあった男女の仲を無理矢理引き裂くような、無粋な真似ができるわけない。やっと将臣の隣で明るく笑えるようになった望美に、また辛い顔をさせたくない。

 だからこそ・・・・・・・・・・・オレは。

「何でもないよ。それじゃあ望美も将臣と行くことになるわけだ。よかったじゃん、これからはずっとあいつと一緒にいれるよ」

 そう言って笑顔を向けると、たちまち望美の顔に困惑が浮かんだ。

「今日の将臣の話っていうのも、それだったんだろう?一緒に行かないかって言われたんじゃないのかい?」
「そ、れは・・・・・・・・・・・そうだけど・・・・・・・・・・・」
「じゃあ望美も早めに出発の準備をしておいた方がいいだろうね。欲しいものがあったら、何でも言ってよ。2日以内には必ず届けるように手配するからさ。無事に着いたら、文の一つくらいはよこしなよ」

 望美が何かを言いたげな表情をしたが、それを押しとめるように言葉を一気に並べる。

 オレは、決めたんだ。
 つかみかけた、この手を離そうと。
 笑って望美と将臣を見送ってやろうと。

 まだ諦めたくないと往生際の悪い心が血が出るほどに叫ぼうが、将臣のものになってしまうのだったら、いっそ全てを捨ててもオレだけのものにしてしまおうかなんていう浅ましい想いをこの期に及んでも抱いていようが。
 望美の手を・・・・・・・・離そう、と。


 だから、頼むから何も言わないでほしい。
 そんなに寂しそうに瞳を曇らせて、期待させないで。

 お前がもし、少しでもオレを想っていると言ってしまえば。
 こんな脆い決心、きっとたちどころに揺らいでしまう。


「ヒノエくんは・・・・・・・・・平気なの?」


 オレの願いも虚しく、望美は悲しげで、けれど真っ直ぐな声で問いかける。どうしてそんなことを聞くのか?なんて尋ねるまでもなく、声の調子に含まれた恋心と哀愁が素直に彼女の心情を表していた。
 弁慶に言われるまでもなく薄々感づいていた望美のオレに対する想いは、将臣と邂逅した今も、残酷なことに彼女の心中に残ってしまったようだ。
 不自然でない程度に視線をそらす。望美の顔を見たら、胸に抱えている想いを全て打ち明けてしまいそうだから。

「吉野の里で将臣くんと別れた後・・・・・・・・ヒノエくんは言ったよね。私のことが好きだって」
「・・・・・・・・・・」
「初めはね、冗談だと思ったの。ヒノエくんみたいな人が私のことを好きになるなんて、絶対にありえないだろうし、きっとからかわれてるだけだと思ってた。いくら信じてくれって言われたって、嘘はつかないって言われたって・・・・・・・・・心の底では、全然信じてなんていなかった」

 オレは何も言わなかったし、真っ直ぐに望美の視線を見ることもしなかった。
 こみ上げてくる感情がせわしなく心を刺激した。

「でもね、私が本当に辛い時や寂しい時。仲間の誰よりも傍にいてくれたり支えてくれたりしてくれるヒノエくんの姿を見るうちに、気がつけばヒノエくんのことばかり考えるようになってた。傍にいると安心できたし、ヒノエくんの言葉だったら何とかなるって信じられた。将臣くんと真っ直ぐ対峙できたのは、他でもないヒノエくんのおかげだよ」
「・・・・・・・・・・・望美」
「今なら、あの時のヒノエくんの言葉は嘘じゃなかったって思える。ヒノエくんの言葉も視線も・・・・・・・すごく真剣だった。あれを嘘じゃないって、今なら・・・・・・・・」
「望美」

 もうそれ以上言うな、という意味をこめて彼女の名前を呼ぶ。
 望美に対しては滅多につかわないような、威圧する命令口調。大抵の人間はこれで口を噤むもの。案の定、彼女もそれに言葉を飲み込んだ。
 が、それは一瞬のこと。戦場でいくつもの死線を乗り越えてきた彼女にこの程度の威圧は聞かなかったらしく、すぐに気を取り直したように言葉を続ける。

「・・・・・・・・私の、思い違いじゃないなら・・・・・・・私を好きだと言ってくれたヒノエくんが嘘じゃないなら・・・・・・・・・・今でも、それが変わっていなかったら・・・・・・・・・教えて欲しいの、あなたの本当の気持ち」

 嘘じゃないし、今でも変わらずに・・・・・・・・・・本気で好きだよ。
 言いかけた唇をきつく噛みしめる。
 言いたいのに言えないことが、どれだけ辛いか。敵同士であり、幼馴染であるが故に気持ちを伝えられなかった将臣の苦悩を今さらのように思い知った。


「・・・・・・・・・・・知って、どうする気だい?得るものなんてないよ」
「あるよ、知りたいの。だって私は、ヒノエくんのことがす・・・・・・・んっ!?」


 それだけは言わせない、言っちゃダメだ。
 素早く望美の口を自分のそれで強引に塞ぐ。突然のことに目を見開いたまま固まっている彼女に心の中で謝罪し、そのまま全てを奪い尽くすように舌を絡める。
 口封じ目的の行為だったが、すぐに彼女の柔らかなそれに夢中になっていた。おそらくは将臣すら踏み込んだことのないであろう領域に自分がいると思うと、勝ち誇ったような気持ちに眩暈がした。
 眉根が苦しげによせられ、小さく震える手が離れてくれと言うように胸をしきりに叩くが、そんなものはお構いなしに口内を犯す。息を吸う機会は与えても、抗議の声が発せられる前にまた塞ぐ。卑猥な水音が、空の切れ目に残る臙脂色の光だけが頼りの暗い一室にやたらと響いた。
 やがて彼女の手が力をなくすのを感じ、名残惜しさを感じつつも顔を離した。
 繋がったままの銀糸、暗い部屋でもわかるくらい紅く染まった唇、上気した瞳。その全てに捕らわれそうになるのを堪え、オレはわざと余韻を残す望美に冷たく笑いかけた。

「神子姫は悪い女だね。たった一人の男じゃ満足できないってわけだ」
「な・・・・にを・・・・・・・・・?」

 そう言いながらゆっくりと望美を床に押し倒す。
 常とは違うオレの態度に脅えたのか、望美は抵抗することも忘れて呆然と見上げてくる。自分が何されそうなのか、全く理解していないらしい。



「お前が好きなのは、将臣、だろ?」



 途端、望美の表情が強張る。
 何かを言いかけて、けれどもいい言葉が思いつかなかったのか、そのまま口を閉ざす。グッとかみ締めた唇が、痛々しかった。
 それでもあえてオレは冷たい笑顔を崩さずに、望美の耳元に顔を近づける。
 囁く。残酷な言葉を。彼女をひどく傷つける言葉を。

「それなのに、オレも好きだなんて・・・・・随分欲張りなんだね」
「・・・・・・・・・っ・・・・・・・!」
「まあでもオレも似たようなものだし。人のことはとやかく言えないから、このお誘いに乗ってやるよ。他ならぬ姫君と二人だけの秘密をつくるのも悪くない」
「どういう・・・・・・・・意味?似たようなものって・・・・・?」

 怯えを含んだ眼差しが、恐る恐るオレを見返す。
 どこで間違ってしまったんだろう。彼女が欲しくて近づき、その心に触れようとしてしまったのが、そもそもいけなかったのだろうか。
 こうなってしまうことを考えもしないで、月を手に入れようとしてしまった報いが、今さらになってオレを傷つける。


「オレには、もうすでにこの身を捧げると決めた相手がいるんだよ。それなのに一人じゃ満足できないっていう点で、お前とオレは似てるねってそういう意味」


 望美の瞳が驚きに見開かれ、信じられないという表情へ変わる。
 信頼をよせた仲間であり、恋心を少なからず抱いた相手から告げられた言葉は、きっと望美には裏切り宣言に聞こえたことだろう。
 望美は優しいから、オレがお前を支えてきたと無邪気に信じ・・・・・・・・オレに真っ直ぐで綺麗な恋心を少しでも傾けてくれて・・・・・・・。
 そのことで、今になって苦しんでいるんだろう?
 いっそ将臣への想いが彼女の心を全て塗り替えてくれれば、どんなに楽だったろうに。
 きっとオレも望美も・・・・・・・・今さらになって苦しむことなんてなかった。
 望美はオレと将臣への想いの板ばさみにはならなかっただろうし、オレは彼女を無理矢理手に入れたい気持ちと幸せを見守りたい気持ちに翻弄されなかっただろう。



 そんな苦しみ、もう終わりにしよう。



 お前は将臣といた方が、きっと幸せになれる。
 あんなに強い絆を持って、お互いを信頼しあって。きっとお前達なら、これから先にどんなことがあっても笑って乗り越えていける。
 それに、どんなにえらそうなことを言ったところで望美を一番には考えてやれないオレよりも、これからはただの男として望美を愛していける将臣の方が・・・・・・・・きっと、望美を幸せにしてやれるだろうから。
 知っていると思うけど、オレはお前の幸せそうな笑顔が好きなんだ。
 それが誰に向けられたものだとしても・・・・・・・・・結局のところ、その笑顔が消えなければそれでいいって思えるくらい。

 だからいっそ、オレのことなんて残酷なまでに切り捨てて、幸せそうな顔で将臣の元に真っ直ぐ駆け寄ってくれたら、それでよかったのに。
 傷つくのなんて、もう今はオレだけでよかったのに。


 ごめん、オレの気持ちがお前を苦しめたね。
 好きになりすぎて周りも未来も見えていなかったオレを・・・・・・・どうか許してくれ。

 もう十分だよ。
 お前が少しでもオレを愛しく思ってくれて。
 少しでも将臣とオレの気持ちの間で揺れてくれて。

 もう・・・・・・・・それだけでいい。
 その優しさだけで。



 ありがとう、愛する気持ちと恐さを教えてくれた・・・・・・・唯一の愛しい華よ。



 オレはお前を・・・・・・・・あいつの元へ、帰してあげる。





「オレがお前に本気で恋なんてするわけないだろ?」





 だからごめん、望美。
 一つだけ、約束破るよ。

 お前にオレは、嘘をつく。





続く
関連記事
スポンサーサイト


総もくじ 3kaku_s_L.png ネオロマ
総もくじ 3kaku_s_L.png オトメイト系
総もくじ 3kaku_s_L.png リジェ系
総もくじ 3kaku_s_L.png お題もの
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
総もくじ  3kaku_s_L.png ネオロマ
総もくじ  3kaku_s_L.png QuinRose
総もくじ  3kaku_s_L.png オトメイト系
総もくじ  3kaku_s_L.png リジェ系
もくじ  3kaku_s_L.png その他
総もくじ  3kaku_s_L.png お題もの
  • 【本編 日常風景~エース、モデルになる!の巻~前編】へ
  • 【彼の望み(遙か4、風→千)】へ
  • Tag List 
  •  * |

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【本編 日常風景~エース、モデルになる!の巻~前編】へ
  • 【彼の望み(遙か4、風→千)】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。