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「QuinRose」
現代の国のアリス(現代パラレル)

本編 日常風景~エース、モデルになる!の巻~前編

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 驚くようなことというのは、いつだって唐突にやってくる。

「君、モデルやってみない?」

 ・・・・・・一瞬、その言葉が誰に向けられたものか、まったくわからなかった。
 だけどスーツをびしっと着こなした男の人が名刺らしきものを差し出している相手は、明らかに私の横に立っている男で。


「・・・・・・やめておいたほうがいいと思います」
「あはは、アリスってば即答?ひっどいなあ」


 思わず真剣に忠告してしまったところを、爽やかな笑い声が割ってはいる。
 確かに外見だけは爽やかだし、好青年だ。黙っていれば美形だし、見栄えもするだろう。現に今、私の横で明るく笑っているエースは、白いシャツとジーンズという服装もあいまって数割増し爽やかに見える。
 そう、爽やかで・・・・・・爽やかすぎて、本気でうさんくさい感じだ。
 肩から無造作に下げている布に覆われたものが、人をばっさばっさ斬ってきた真剣だなんて誰が思うだろう。職務質問されることすら、きっとないはずだ。それくらい、今のエースの見かけは、爽やかで害の薄そうな人っぽい。


 ストーカー白ウサギに突然連れ去られ、弾丸飛び交う意味のわからない世界で生活することになり。ようやく慣れてきて別世界で暮らしていくことも決意した途端、引越しだとか理不尽な理由で親しくなった人とも離れ離れになった。
 いろいろと悩んで迷って・・・・・・そのことすら、ようやく自分の中で決着をつけたと思ったのに。
 とことん、あの変な世界は私を落ち着かせる気はないらしい。

 今、私たちがいるのは、常識が通じず時間の流れもデタラメなワンダーランドではない。
 時間は正しく流れ、胸に正しく鼓動を刻む心臓を持ち、恐ろしいくらい平和な世界。どちらかというと私が住んでいた世界に近く・・・・・・でもそれより少し近代的で、文化も違っているように思う。
 この世界を繋げたらしき張本人、ナイトメア曰く私の故郷よりもずっと東方の島国の「現代」とやらにあたるらしい。

 ・・・・・・いや、勝手に繋げたことだとか、折角慣れてきたのにまた環境が変わっておかしくなりそうだとか、そんなことはどうでもいい。もう諦めるしかない。怒っても疲れるだけだ。ナイトメアにはたっぷり心の中で嫌味と文句は伝えてある。
 それに、あのワンダーワールドよりずっと平和でずっと常識的な世界は、私にとっては落ち着ける世界でもある。

 私ひとり、なら落ち着けただろう。

 だが最悪なことに、この「現代」とやらへは他の知り合いも全員ついてきてしまったのだ。
 そう。あの常識が通じない世界でもとびっきりクセのある友人達・・・・・・役持ちの面々も、この現代で暮らしている。
 おかげで私は、この世界に来てからというもの頭痛の回数が増えてばかりいる。


「う~ん、どうしようかな。別にやってもいいけど・・・・・・」
「やめておきなさいって。あんた極度の方向音痴なんだから、毎回毎回遅刻して周りの人に迷惑かけるだけよ」
「ははっ、ハッキリ言うなあ。でもさ、アリスも言ってたじゃないか。この世界でしばらく生活するなら、仕事はあった方がいいって」
「さっきまで俺はアウトドアでも大丈夫だからとかなんとか言って、耳も貸さなかったくせに・・・・・・!!」

 わざとらしいまでに爽やかな笑顔が腹立たしい。
 これでも心配しているのだ。他の住人達は何だかんだ言いつつ、うまいこと仕事や住居を手にして生活している。一部なんて、どうやったら短期間でそこまでとツッコミたくなるような豪華な生活だ。それはそれで複雑なものもあるが・・・・・・とりあえず生活面とかの意味では、あまり他の面子は心配していない。
 問題はエースだ。
 仕事もない、定住する家も持ち合わせていない(あったところで迷って帰り着けなさそうだ)、しかも極度の方向音痴は相変わらずだし剣は手放さないし・・・・・・一歩間違えば、真っ先に警察の厄介になりかねない。

「本当にアウトドアでも大丈夫なんだけどさ、確かにお金はあった方がいいかなって。だってここ、森が全然ないんだぜ?ウサギさんとかクマさんの一匹でも出てきてくれれば、食料は調達できるんだけど・・・・・・せいぜい小さい鳥を捕まえるのが精一杯で」
「あんた今後二度と外でそういうこと大声で言うのやめなさい」

 若干引いた表情を浮かべたスーツの男に気が付いて、慌てて言葉を遮る。
 この平和な世界で、公園で狩りをして暮らしているアウトドア男なんて、変質者以外の何者でもない。
 エースもようやく思い出したように、声をかけてきた男を見やる。受け取った名刺を一瞥して、わざとらしく首を傾げてみせた。

「これ、やったらお金もらえるんだよね?」
「え、ああもちろん。実は今度、メンズのファッション雑誌で特集を組むことになっていてね。君のその爽やかな雰囲気が、すごくイメージにぴったりなんだよ。体格もいいし。なにかスポーツでもやっているのかな?」
「スポーツ・・・・・・ああ、剣ならよく振り回してるぜ」
「へえ、剣道か!だからそんなに姿勢もいいんだね。結構強いんじゃないか?」
「いやいや、俺なんてまだまだだぜ。トカゲさんに勝てないうちは、強いなんて言えないしね。なあ、アリス?」
「は、ははは・・・・・・」

 微妙に噛みあってないが、会話は成立しているからいいんだろうか。
 スカウトしてきた男は、エースが剣道をやっている謙虚な爽やか好青年だとすっかり思い込んでいるらしい。

(・・・・・・実際は本当に剣を振り回しているだけ、なんて思わないんだろうな)

 剣を振り回して・・・・・・人を斬りまくっている、が正解だ。
 そんなもの、スポーツと呼んではいけない気がする。

「そうだな、やってもいいよ!」
「本当かい!?」

 あっさりと頷いたエースにぎょっとする。もう少し考えてから承諾しなさいよと注意しかけて・・・・・・こちらへ向けられた意味ありげな視線に、言葉を飲み込んだ。
 感情の読めない赤い瞳に、嫌な予感がふつふつと湧き上がる。
 なんというかこう・・・・・・獲物で遊ぶいい方法を思いついた、というような。そんな光を一瞬そこに感じ取ったから。


「ただし、この子も一緒にやるっていうのが条件、かな」
「はあっ!?」


 思わず素っ頓狂な声が出る。
 後ずさりしようとしたところをがっしりと肩を抱き寄せられ、抱きしめられた。なんとか逃げようとしても、その腕はびくともしない。

「アリスも一緒にその”もでる”っていうのをやるんだったら、俺もやってあげるよ。面白そうだしね!アリスと一緒に写真を撮れるなんて、なかなかないだろ?ペーターさんとかに見せてあげたら、きっと羨ましがるだろうな~~~」
「じょ、冗談じゃないわよ!!大体、私なんかがモデルとか、ありえないでしょ!?」
「ええ?そんなことないぜ。俺が”もでる”をやれるんなら、アリスだってできるって。ね?」

 突拍子もない提案に必死で反論するが、エースはまったく気にした素振りはない。 それどころか、こちらの様子に困惑した顔の男性に、同意を求める始末だ。
 エースをスカウトした男性は、かわいそうに、突然話を振られて狼狽している。

「いや・・・・・・さすがにそれは・・・・・・」
「ええ~どうして?俺はアリスと一緒がいいんだ」

 そんな甘えたように言っても、可愛くなんて全然ないとよっぽど言ってやろうかと思った。思いっきりその足を踏みつけるなり蹴りつけるなりしてやりたいところだ。
 ・・・・・・後が怖いので、思うだけに留めるけれど。

「今回はメンズ服の企画だから、女の子はちょっと。それに、相手役なら他のモデルの子が・・・・・・」
「俺はアリスがいい。他の子なんて興味ないよ。だからさ、いいだろ?」
「そう言われても・・・・・・」

 なおも渋ろうとした男に、エースが微笑みかける。
 その明るい横顔を見た瞬間、ゾクッと背筋が震えた。


「いいよね?・・・・・・ね?」


 反論を許さない声。
 男性が雷に打たれたような顔のまま、動かなくなる。 念を押すように呟かれた言葉と同時に、放たれる威圧感。爽やかな声音が一変して、唐突に低くなり・・・・・・その場の空気が急に冷え込んだような感覚。
 何度かあちらの世界で体験したことがある。・・・・・・殺気、だ。

「・・・・・・なあ、別にいいだろ?」
「う、あ、ええっと・・・・・・」
「いいよね?」
「・・・・・・は、はいっ!」
「だってさ!よかったな~アリス♪」

 張り詰めた空気が一気に弛緩する。
 息苦しいまでの圧迫感から解放されて、思わず大きく息を吐いた。傍にいただけの私でさえこれなのだから、直にエースの殺気を向けられていた男性には相当なプレッシャーだったに違いない。
 案の定、男性は今にもその場に崩れ落ちそうな顔色で、冷や汗をだらだらと流している。


(・・・・・・だから、やめておいた方がいいって言ったのに)


 心底同情する。
 が、やむを得ないとは言え、こちらまで巻き込まれてしまったのだ。そこの点については恨みたい。

 隣には、非常に満足そうな笑顔の男。何を考えているのか相変わらず読めないが、ひとつ確実に言えることは・・・・・・私が、よりにもよってモデルをやらなければいけないということ。
 こんな平凡な女を捕まえて、モデルとは無理にもほどがあるだろうと思う。何よりも、心底面倒くさい。ようやくまともに常識の通じる世界に来れたのだ。変に目立ちたくなんてない。
 エースが「やっぱり面倒くさくなった」とか言い出してくれることを期待したが、珍しく自分から「やってみる」とか言い出したことだ。しかも絶対何か企んでいる。

(得意の方向音痴を発揮して、いますぐ旅立ってくれないかしら・・・・・・)

 その願いが叶う確率は低いとわかっていても、願わずにはいられない。
 今日ほど、エースの迷子道中に付き合ったことを後悔したことはなかった。



 それから数日後。エースが引き受けたモデルの仕事の撮影のため、私達はとあるお洒落な雰囲気が漂う並木道へとやってきていた。
 どうやら「デートで着る、男のモテ服」とかいうのがコンセプトらしく、恋人との休日デートというシチュエーションの撮影を行うらしい。何かしらの撮影があると感づいた野次馬が遠巻きに視線を送ってきて、ものすごく落ち着かない。

 相手役に(半ば強引に)抜擢された私には、とてもじゃないが荷が重過ぎる。せめてもの救いは顔が映らないように撮るということだったが、素人にいきなりモデルをやれと言われても無理なものは無理だ。
 現場監督の人が「こんな素人娘を起用できるか!」とか言い出してくれることを期待したが、スカウトしてきた男性同様にエースの殺気付きの笑顔の前に沈黙させられた。
 ・・・・・・そんなわけで私は今、白のフリルミニスカートに淡いベージュのニットという出で立ちで、ここにいる。普段着ているものよりは子供っぽくないとしても、結構かわいらしい服装だ。こんな状況じゃなかったら、少しばかり楽しめたかもしれない。

「へえ、似合うね。アリス。可愛いぜ」
「・・・・・・どうも」
「なんだ、つれないなあ。そんなに嫌そうな顔しないでさ。こんな経験できるなんて、結構貴重だと思うんだけどなあ」

 こちらに向かって話しかけるエースは、少し髪型も変わっていることもあってか本当に好青年に見える。
 爽やかな笑顔の中に、どこかワイルドさを秘めた印象。少し開けた胸元にシルバーのネックレスをつけ、白いシャツと黒のジャケットにジーンズというスレンダーな服を見事に着こなしている。
 あとで帽子かぶるんだって、とに爽やかに笑ってみせるその表情は・・・・・・なんというか、本当に・・・・・・。


「・・・・・・楽しそうね、エース」


 思わず、疲れた口調で呟いた。
 本当に楽しそうだ。心なしか、いつもよりもわかりやすく純粋に楽しんでいるように見える。
 ・・・・・・そんなに私を巻き込んで困らせるのが楽しかったのかと、嫌味のひとつやふたつ言いたくなってくる。

「そりゃあね。楽しいよ。だって君とこれからデートできるんだから、さ」
「で・・・・・・!?」
「いやあ、楽しみだなあ。君とデート、なんて。しかもちゃ~んと写真に撮ってもらえるって言うんだから、形に残っていいよね。嬉しすぎて、皆に見せびらかしちゃいたいぜ!!ペーターさんとかどんな反応するだろうなあ」
「あんた・・・・・・まさか最初からそれが目的だったんじゃ・・・・・・」
「はは、まっさかあ。ちょっとはそれも面白いなって思ったけど」

 面白くも何ともない。
 座っているのに、何故か立ちくらみがした。
 そんなものをペーターに見せたら、次の行動なんて目に見えている。ここは時間が経てば元に戻る世界じゃないのだ。頼むから余計な騒ぎを起こした挙句、ワンダーランドにいた頃のように物騒な「じゃれあい」をはじめるようなマネはしないでほしい。

「あ、ほらアリスそろそろ撮影始まるみたいだぜ!行かないと!」

 ぐいっと引っ張られ、有無を言わさず連れて行かれる。悲しいことに、こうしてエースに振り回されることにも慣れてしまった。
 ひとつため息をついて、大人しく引かれるがままに歩く。
 これから先の憂鬱な時間を思って、また頭痛がした。





続く
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