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「QuinRose」
アリスシリーズ

忘却に沈む(クローバーの国、ナイトメア→アリス)

 ←彼の望み(遙か4、風→千) →五章 鳳仙花 中編
※アリスはハートの国で誰かと恋愛エンドを迎えたのだけど、その人と引越しで離れ離れになってしまった・・・・という設定です。



 大きな手、優しく頭をなでてくれる感触、明るい笑い声、抱きしめてくれる温もり・・・・・・・・

 私の名を呼ぶ、愛しい声。

 消えていく。
 薄れていく。

 消えないで、と必死に叫んだって。
 夢は・・・・・・・・・・いつだって消えていくの。


「アリス」


 呼ばれて、ふと目を開ける。
 視界が滲んでいた。頬が濡れているのがわかる。
 悲しくて悲しくて、胸がどうしようもなく痛い。
 だけど、どうしてだか忘れてしまった。
 壊れてしまいそうなほど、狂ってしまいそうなほど切ない何かが、確かに胸の中にあったはずなのに・・・・・・・・その原因だけがポッカリ抜け落ちて、消えてしまったような感覚。

「アリス」

 また名前を呼ばれた。
 振り返るとそこには、夢の主。不思議な何もない空間で、ただ浮かぶ唯一。
 ナイトメアは、この曖昧な夢の中で一番の存在感を放っている。
 そう、ここは夢の世界。いつも見る夢。なにもない・・・・・・・・ナイトメア以外は会うことのない世界。
 なのに、どうしてだろう。

 違うと、思った。

 私が名前を呼ばれたかったのは・・・・・夢の中で会いたかったのは・・・・・・


「違わないよ」


 ひどく優しい声。
 気がつけば、ナイトメアの顔がすぐ間近にあった。眼帯で隠されていない方の瞳が、じっと向けられる。灰色の瞳が何故か怖かった。

「君のことを呼んだのは私だ。そして君も、私を望んだ。悪夢から逃れたいと、助けを求めていた」
「悪夢なんかじゃないっ!!」

 思わず強い声が出ていて、自分で驚く。
 けれどナイトメアは平然としている。よくわからない笑みを口元に浮かべて・・・・・・・・・そうしていると、ナイトメアが本当に「夢魔」らしく思えてくる。
 子供みたいに駄々をこねて病院や仕事を嫌がっている、確かに知っていたはずのナイトメアがわからなくなる。
 「夢魔」の側面をのぞかせるナイトメアは、嫌いだ。
 何もかも見透かされ、嘲笑っているかのよう。ただただ、怖いと感じさせる対象でしかない。

「悪夢なんかじゃ、なかったわ・・・・・・!!」
「だけど君は忘れている。忘れているということは、そこまで重要なことじゃなかったということだ。そんなものに固執するのは無意味だよ、アリス。忘れてしまえばいい」
「違う・・・・・・・・違うの、違う・・・・・・・・忘れていいことじゃなかった。コレだけは忘れちゃいけなかったの!!絶対に、忘れるなんて・・・・・・・・・・・」

 何かなんて覚えていない。何を夢見ていたのかなんてわからない。
 ナイトメアの言うとおり、忘れてしまうくらいだから大したことじゃなかったのかもしれない。
 だけど、決して悪夢じゃなかった。
 あの悲しくて涙がでるほど恋しい夢は、決して悪夢じゃない。
 そして・・・・・・・忘れていいことではなかった。
 どんなことになろうと、忘れるべきことではなかった。

 ああ、この感覚を私は知っている。
 姉さんを思い出すときと同じ・・・・・・・・・罪悪感を伴った、忘却の空虚感。

 ただひとつだけ違うのは、これが誰に向けた罪悪感かを思い出せないこと。


「忘れていいんだ、アリス」


 夢魔の声が耳元で響く。
 甘い甘い毒のように。
 胸の中にあった苦しさが解けて、記憶の片隅へと流れ落ちていく。

 誰かが、呼んでいる。
 遠い遠いどこかで、私の名前を呼んでくれている。
 愛しそうに、悲しそうに。

 私はここにいるよと叫びたくても、誰が呼んでいるのかわからない。
 名前を呼んで、あの人を抱きしめてあげたい。もう離れないって、そう伝えたい。

 でも・・・・・・・・でも・・・・・・・・あの人って、誰だったのかしら?

 涙が溢れる。消えて行く誰かのために、私は泣く。
 こんな風に泣いたことすら、忘れるんだろうか。
 こんなに愛しく思っている気持ちを、忘れるんだろうか。
 そんなの残酷だ。


「残酷かもしれない・・・・・・・・・だが、君が望んだことだよ」


 望んでいないと言いかけた言葉が、止まる。
 夢魔は心を読む。きっと私よりも正確に、心の奥底に確かにある願いまで。

 忘れてはいけない。
 忘れたい。

 だって苦しいもの。
 こうしてあの人のいない場所で生きていくのが、狂ってしまいそうなほど悲しいもの。

 だからきっと私は願った。
 ナイトメアはそれを叶えた。

 忘れたい・・・・・・・・・・忘れてしまいたい・・・・・・・・・



 ・・・・・・・・・を、愛していた、気持ち。



「・・・・・・・・忘れて、くれ・・・・・・・・・」

 ぽとりと零れた涙と共に、私の意識がゆっくりと沈む。
 夢もみないほど深い深い眠りの淵へ、落ちていく。
 落ちる瞬間、泣いている私よりずっと辛そうに呟くナイトメアの声を聞いた気がした。
 それがあまりにも悲しかったから、泣かないでと心の中でそっと呟いた。

 強く強く、痛いくらいに私を抱きしめたその腕は・・・・・・・・誰のものだったろう。

 思い出せずに、落ちていく、落ちていく・・・・・・・・・


 「帰る場所」を失って。




End.
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