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「QuinRose」
アリスシリーズ

元カノ~ver.エース~(クローバーの国、エスアリ)

 ←三章 花菱草 →歪んだ赤(クローバーの国、エリアリ)
「エースってモテそうよね」

 ふとそんなことを口にすると、目の前の男はきょとんと目を瞬かせた。
 小さいながらも赤々と燃える炎が、ぱちっと音を立てる。
 街の明かりも遠くに見えるような夜の森で、テントを張ってキャンプファイヤー・・・・・・これが単なるアウトドアならいいのだが、毎度毎度迷子騎士による自称「旅」に付き合わされた結末だと思うと頭が痛くなってくる。慣れた自分が悲しい。


「ふうん?アリス、俺がモテたかどうか気になるんだ?」
「別に大した意味はないわよ。あんた顔だけはいいからモテただろうなあ、と思っただけ」


 「顔だけ」という部分を強調してみせると、エースは爽やかな笑みを浮かべながら「ひどいなあ」と笑ってみせる。
 実際、エースは精悍な顔立ちだ。外見だけで言えば、真っ青な天気のいい空があれほどまでに似合う『爽やか好青年』もいないだろう。そうかと思えば、夜の闇の中、こうしてわずかな炎に照らされて見るエースの姿は、どこか艶っぽさを漂わせている。男の色気、とでも言うのか・・・・・ふとした瞬間に垣間見える表情に、思わずどきりとさせられる。
 だからこそ、つい「モテそう」などと口にしてしまったのだけれど。

「そうだなあ・・・・・・・まあ、女に苦労したことはないかな」

 あっけらかんと答えるエースに、少しさっきの言葉を口にしたことを後悔した。
 非常に認めたくないことなのだけど、私はこの目の前の男に恋心に近いものを抱いている。恋ではないかもしれない。同情のようでいて、それよりもずっと深い何か。それでも、少しはエースに対して特別な感情があるのは確かだ。
 その本人から「女に苦労したことはない」とかアッサリ言われたら、多少なりともムカつく気持ちはある。

「・・・・・・・あんたと付き合った人は苦労したでしょうね」
「付き合った人?」
「え、だって一人くらいいるんでしょ?付き合った人・・・・・・・いわゆる元カノってやつ」

 私だって、まさかエースが今まで誰一人と付き合ったことがないとは思っていない。
 ほとんど恋愛経験のない私にでさえ、エースが女性慣れしていることはわかる。あれで未経験とか言われた方が驚きだ。

「元カノ?そんなのいないよ。恋人と呼べる存在を何人も作るなんて、不誠実だろう?俺、騎士だからそういうことはしないよ」
「・・・・・・・・・・・ものすごく嘘くさいわね」
「ええ!?嘘なんてついてないぜ~、俺。恋人として、愛を捧げる相手はただ一人、って決めてあるんだから。・・・・・・・・・・・まあ、そんな相手、実際にできたりしたら、気持ち悪くて思わず殺しちゃいそうだけどね」

 声の調子を変えないまま、続けられた最後の言葉に寒くなる。
 エースに愛されたくらいで殺されるのなら、それは確かに「恋人」を作らない方が懸命だろう。・・・・・・・・・それを羨ましく思うほうが、異常だ。

(以前の私なら、狂ってるって思ったでしょうね・・・・・・・・・)

 今だって思ってる。狂ってる、と。それでも少しだけ、わかる気持ちがある。
 彼が・・・・・・・・・強くあろうとし続けていること。
 弱さを、寂しさを、怯えを、彼自身が否定する。エースは切り捨てることしか知らない。自分の見たくないもの、都合の悪いもの、自分を弱くする可能性のあるすべてを・・・・・・・気が付いた時点で、壊してしまう人。
 そのことに薄っすら気が付いてきたから、私はエースから離れられない。放っておけない。これを同情と呼ぶか、それとも違う名前をつけるのか・・・・・・・・私にはわからないけれど、エースの傍にいなきゃいけないと思った。
 私がエースを止められるなんて思っていないし、エースを理解しているとも言えない。彼の考えを本当の意味で理解することなんて、きっと私には一生無理だ。
 ・・・・・・・・だけど傍についていてあげたいと思ったし、エースも私が傍にいることを拒まなかった。
 望まれているのが、「恋」じゃないと知っていて。

「・・・・・・・つまり、恋人じゃない相手は山ほどいたってわけ?」

 問いかけると、エースは軽く口角を吊り上げた。
 それだけでいい。それが答えだ。


「どっちが不誠実よ・・・・・・・・・・最低ね、あんた」


 その言葉がエースに愛されずにいた「元カノ」達のことについてなのか、それとも彼女達と同じように「恋人」とされないでいる私自身のことについてなのか。どちらのことについて責めているのか、私にもわからない。
 自殺願望はなかったはず。死にたいだなんて思っていない。
 それなのに、今、私は悔しいと思っている。「恋人」と認められ、彼に殺してもらえないことを悲しいと思っている。
 ・・・・・・・・こんなの、異常だ。エースに愛してもらえるなら、特別な感情を向けてもらえるのなら、「ただ一人」と認めてもらえるなら。

 エースになら、殺されてもいいと思い始めている。

 小さく唇を噛んで俯いた私の肩に、不意に大きな手が触れた。
 気が付くとエースがすぐ傍まで来ていて、じっと私を見つめている。その表情はいつもの爽やかな笑みではなく、怖いほどに何の感情も映していなかった。

「・・・・・・・・・アリスは、・・・・・・・・・」

 何かを言いかけ、けれど何も言わず。
 肩に置かれていた手が、するりと私の首に添えられる。硬い手袋越しに感じる温もり。この手に力がこめられたら、私なんていとも簡単に殺される。


「・・・・・・・・・・・・・・違うわ」


 エースの問いを先回りして答えた。
 ここで是と答えるのは簡単なこと。そこで彼が殺してくれるのなら、私は彼にとっての「恋人」になれたということなのだろう。それは少し・・・・・・・幸せかもしれない。
 でも、エースが求めている答えは多分違う。赤い双眸の奥にある感情なんて、私に理解できるはずもないけれど・・・・・・・・・彼はまだ、終わりを望んでいないから。


「恋なんかじゃ、ないわ」


 ―――それでも、傍にいる。
 私がいなくなったら、誰がこんな面倒でかわいそうな人の傍にいてあげてくれるの?
 だからこそ、私はまだ殺されてあげるわけにはいかない。


「・・・・・・・・・そっか。それなら、いいんだ」


 添えられていた手がぐっと首の後ろに回り、そのまま引き寄せられる。
 噛み付くキスと同時に、空いた方の手が体に沿わされて乱される。上がる体温と呼吸に酔わされて、無我夢中で私からもエースを抱きしめた。



 私はまだ、「恋人」と認められていないけれど。誰よりもその位置にいると、自惚れてもいいでしょう?
 彼が「愛した女」として殺すのは、私だけ。
 他の誰にも叶わなかったその位置に、私だけが許される。

 今はただ、そんな甘い狂気の夢に、酔いしれる。





END.
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