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「ネオロマ」
手折り華(遙か3、将望前提ヒノ望)

三章 花菱草

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「オレを代わりにしなよ」

 絹糸を思わせる柔らかい髪を掌に感じつつ、まるで幼子をあやすように頭をなでる。
 オレの隣で膝を抱え込んで蹲る望美は、顔を膝に押し付けるようにして俯いたまま、体を堅くしている。けれどその細い肩は小さく震え、彼女が今必死に感情を抑えようとしているのがわかった。

「大丈夫。オレはここにいる。大丈夫だから、な?」

 呪文のようにそう言いながら、望美の頭をなでつづける。
 そうするうちに、次第に望美の体から緊張が抜け、ゆっくりとオレの肩に重みがかけられた。愛らしい顔はあげてくれなかったけれど、肩の震えは先ほどよりも大きくなり、小さな嗚咽が零れるのが聞こえた。


「・・・・・・・・めん・・・・・・・ごめん、ね・・・・・・・・・」
「気にしなくていいよ。いくらでも、オレを利用すればいい。頼ればいい」


 途切れ途切れに聞こえた謝罪の言葉に、オレは優しく髪をなでていた手を華奢な肩に回し、そっと望美を引き寄せた。
 抵抗もなくオレの腕へと収まった、震える小さな少女。
 オレだけを頼り、泣きつづける愛しい姿に歪んだ笑みが浮かんだ。
 あの気の強い、毅然とした神子姫様がオレにここまで心を許してくれたこと。将臣にしか見せようとしなかった涙を見せてくれたこと。
 望美の気持ちは、今やオレのすぐ傍にあった。
 状況も感情も、全てがオレに味方していてくれる。

 ―――だから、ほんの刹那に感じた、痛みなどとるに足りないものだ。





 一ノ谷で望美と将臣は再会した。・・・・・・敵同士として、剣を向け合って。
 仲間達の動揺を余所に、当の本人同士は互いに全てを決意しきったような目をしていた。将臣と戦う以外の道もあっただろうと問いかけた時に、仕方ないと呟いていた望美の言葉は間違っていなかった。

 源氏を守りたい望美と平家を守りたい将臣と。
 どちらの思いも同じくらい強いのならば、どんなに苦しくても敵対する以外にない。
 本当に仕方ない、のだ。

 頼朝に源氏軍の指揮権が渡り、屋島に行くことが決まった時も、平家との戦いが再び近づいているという時も、望美は特にいつもと変わった様子を見せなかった。いつもと同じように一生懸命に剣の鍛錬をし、明るい笑顔を見せていた。
 一つだけ違うと言えば、夜空を見るたびに悲しそうな表情を一瞬浮かべるようになったと言うことくらいだろうか。いや、正確には・・・・・・次第に満ちていく月を見るたびに、と言ったところか。
 そしてその表情が・・・・・・物憂げで、何か愛しいものを追い求めるような望美の瞳が、あまりにもよく見知ったものだからすぐにわかった。

 望美は、あの月に将臣を見ているんだと。

 愛しい姫君の表情は、笑顔も泣き顔も怒ったり拗ねた顔も全て好きだけど、他の男・・・・・・将臣を想っている時の表情は、嫌いだった。
 あまりに一途であまりに悲しいから。
 それは将臣にだけ向けられた、彼女の特別なカオだから。



「ま、平たく言えば・・・・・・処刑されるんだよ」

 鎌倉に送られる平家の人間が辿るであろう末路。
 告げるのを戸惑う敦盛の代わりに答えれば、望美は一瞬呆けたような顔をした後はじかれたように駆けだした。陣幕から飛び出していった背中をオレはただ見送る。この屋島の戦いが始まる前、どことなく集中しきれていなかった彼女を思い出せば、望美が懸念していることは容易く予想がつく。
 何も言わず、ただ強い瞳をして戦に望んでいたけれど。
 気付かれないとでも思っているんだろうか。
 還内府の名前が出るたび、小さな肩を揺らして剣を持つ手を握り締めていたのに。

(・・・・・・・あんなにも心配でたまらないって顔してるくせに)

 きっと必死で将臣のことを考えないようにしていたに違いない。
 戦の最中、時々望美が辛そうに顔をしかめて、何かを振り払うかのようにギュッと目をつぶっているのにオレは気がついていた。大勢の兵がすぐ近くにいて、戦場にいるのでなければ、オレはあの場で間違いなく望美に詰め寄っていただろう。
 心配なら心配って言えばいい。不安なら少しくらい泣いたっていい。
 それすらできないほど、オレ達は・・・・・・・オレは、頼りない存在なのかと。


「あいつは結局、将臣を忘れられないんだろうな」


 自分で呟いた言葉だったのに、予想以上にそれはオレの心を痛ませた。
 思わずこぼれた自嘲をそのままに、陣の向こうに立ち尽くして通り過ぎていく平家の将達を見つめる望美の後姿に目を向けた。それはひどく頼りなげで、悲しい。
 今の望美には付け入る隙がいくらでもある。
 もうすっかり慣れたあのドロドロとした気持ちが湧き上がり、オレの中の狡猾な部分がまた囁く。望美の心が弱っている今こそ、気持ちをオレに向ける好機だ、と。一ノ谷で望美と将臣が敵同士になって以来、頭の中の声はオレを動かそうと言葉をかけ続けている。
 けれど、動くことなんてできなかった。
 その場に立ち尽くし、いつもより華奢で小さく見える望美の背中を見つめることしか、オレにはできなかった。いや、それしかしたくなかった。

 それが何故だかわからないまま。
 望美が振り向いてくれればいいのにと・・・・・・・そっと思った。





 その夜、屋島での勝利に酔いしれる源氏の陣に望美の姿はなかった。
 将臣とのことを思えば、素直に味方の勝利を祝えないのも仕方がない。きっと望美は今頃、自分の天幕の中で物思いに耽っていることだろう。
 望美のことも確かに気になったが、今はもっと重要なことを考えなければならない。オレは頭を切り替えるため、今は大分静かになった源氏の陣から外へ出た。
 戦の時の緊迫感が嘘のように、雪の積もった森はひどく静かだった。オレが歩くたびに音をたてる雪と遠くに聞こえる瀬戸内の波音だけが、その場を支配していた。

 オレが今一番に考えなければならないこと。
 それは熊野をこの戦に参戦させるか否か、だ。

 屋島における源氏の勝利は大きい。平家の主たる将がこの戦で散り、あるいは捕えられた。このまま行けば、あと一戦か二戦で勝敗は決まる。八割がた、源氏の勝利は確定したと言っていいはずだ。
 最後まで中立を保つというのも確かに一つの手だが、戦の勝敗が決した後を考えると、熊野水軍の名を十分に挙げておく必要性を感じる。何を考えているか読めないタヌキや戦後は絶大な力を振るうようになるだろう頼朝の手から、熊野の独立を守り抜くためにも。
 熊野を守るものとして、あの聖地に宿る誇りを失うわけにはいかない。

(源氏に味方する時期がきた、ってとこかな。いろいろ不安な部分はあるけど、今を逃したら熊野にとって不利になる可能性だってあるからね。仕方ないか)

 考えを吐き出すように息をつけば、ふわりと白く舞い上がって消えていく。それを追いかけるように見上げた空は、夜明けが近いことを教えてくれる。しんとした空気からもそれが感じられ、そろそろ戻った方がいいかと判断して踵を返しかけた。
 その時、夜明け前の静けさに慣れていた耳にわずかながら聞こえてきた話し声に、オレは足を止めて振り向いた。
 小さいけれど、それは確かに人の声だ。オレのいる場所からそんなに離れてはいない。こんな時間、源氏の陣の近くにいる人間。見張りの兵か、そうでなければ平家の間者か。いずれにせよ、確認しておくに越したことはない。
 オレは気配と足音を殺し、そっと声のする方に近づいた。

 次の瞬間、自分のとった行動を呪うことになるとも知らずに。



 馬が雪を踏む音が近づいてくる。
 閉じていた瞳をゆっくりと開き、オレは前方へと視線を向ける。その先からやってきた騎乗の男も、雪原に1人で立ち尽くすオレに気がついたらしい。馬の駆け足が徐々にゆっくりとなり、互いの顔が確認できるような距離まで近づいた男が警戒の表情を浮かべて馬から降りた。


「・・・・・・・・よお、将臣。待ってたぜ」
「ヒノエ・・・・・・・?お前、一体なにしてる?」


 右手を武器の部分にかけたまま、油断なく将臣がオレを睨む。
 同じ八葉だとしても、今は敵同士。そうやってすぐに割り切り、決断する度胸があるのは嫌いじゃないけどね。
 オレは静かに笑みを浮かべながら、何気なく将臣に一歩近づいた。

「そういうお前こそ。こんな時間・・・・・・源氏の陣の近くまで、平家の御大将様が何をしていたのかな?」
「・・・・・・・・・」
「我らが神子姫との逢瀬は楽しかったかい?」

 そう言ってもう一歩踏み出す。今のオレの顔には、ひどく冷たい笑顔が浮かんでいることだろう。
 姫君のことが出た途端、将臣の体が緊張し、オレを見る視線がさらに強まる。

「お前・・・・・・見てたのか?」
「まあね。随分と情熱的なことじゃないか。雪の中、宿敵同士が密やかに抱き合っているなんて。おかげで声をかけそびれたよ」

 炎はその熱が強くなればなるほど、青い色に変わる。望美が以前、そんなことを言っていたのを思い出す。
 今のオレの心の中には、あのドロドロとした感情はない。
 あるのはただ、氷のように鋭く冷たい・・・・・・けれど触れるものを一瞬で消してしまいそうな、青い炎のような感情だけ。

 逢瀬の別れを惜しむかのように抱き合う、男女の姿。
 雪景色の中、切なげな表情でたたずむそれは、ひどく幻想的で悲しい。

 互いを離そうとする運命に、少しだけでも抗うように。
 今だけでも離れまいとするように抱きしめあう。
 ―――将臣と望美の姿が、そこにはあった。



 あの、光景が目に入った時から。
 オレの心から、青い炎が消えてくれない。



「で、お前に用事があったのを思い出してね。わざわざ先回りして、待ってたんだよ」
「用事だと?」
「そう。お前とちゃんと再会したら、済まそうと思っていた用事、だよ」
「じゃあ早く済ませろ。オレはもう、お前たちと同じじゃないんだ」
「その前に一つ、確認したいことがあるんだけど」

 もう一歩、踏み出す。
 互いに手を伸ばしても、まだ届かない距離。警戒はしていても、剣を抜くまでには至らない距離。それは敵同士の限界線。

「前にオレはお前に聞いたよな。望美と恋仲なのかと。お前は違うと言った。だけど本気じゃないオレに望美は渡さない、と」
「・・・・・・・・・・・ああ」
「残念ながらオレは本気だよ。今もね。それでもお前はオレに言うか?望美は渡さないと。幼馴染として、望美を泣かせるようなマネをするかもしれないオレの邪魔をするか?」
「・・・・・・・・・・今さら、そんなことを俺に聞いてどうする?」

 オレを睨みつける瞳に、怒りが宿っているのがわかる。
 やり場のない怒りが、どうしようもできないことへの苛立ちが。

「逆に聞くよ、有川将臣。お前は望美をオレに奪われても平気と言えるか?本気で想う女を泣かせて、辛い選択をさせて・・・・・・・それでお前はいいのか?」
「・・・・っ・・・・・・・たら・・・・・・だったら、どうすりゃよかったんだよっ!!!」

 吠えるような叫びが、静かな銀世界に響いた。


「平気なわけねえだろ!?3年間も離れて、ただ無事を祈ることしかできなかった!!やっと会えて、今度こそこの手で守れると思った!!なのにっ・・・・・・傷つけることしかできなくて・・・・・・・・好きだってやっと気がついて、アイツと一緒にいたくて・・・・・・・伝えたいのに、もう無理なんだよっ!!今さら何が言える、何も言えないだろ!!!??」


 大きく肩で息をつく将臣に、一瞬何かを感じた。
 背負うものの大きさ、そのために捨てなければならないもの。
 それはオレも知っている。割り切っていても苦しいものだ。少しだけ・・・・・・オレ達は似ているのかもしれない。

「お前の気持ちはよくわかったよ。さて、オレも用事済ませてさっさと帰るかな」

 もう一歩だけ距離を縮める。さっきより少しだけ近づいた距離。それでもまだ、間合いにはいたらない。
 性質の悪い笑みが、浮かんだのを感じた。
 ・・・・・・・・・この距離で、じゅうぶん。


「・・・・・・・じゃあな、還内府!!」


 言葉が終わるか終わらないかのうちに、オレは右手を素早く振り投げた。
 ヒュッと風を切る短い音の後、鮮血が夜明け前の宙に飛び散る。

「っ・・・・・・・・!!」
「残念。今のをかわすなんて、さすがって言ったところかな?」

 隠しもっていた小刀を寸前で避けた将臣は、かすった頬から流れ出る血をそのままに剣を構える。
 愛用のカタールに手をかけつつ、オレは余裕の笑みを浮かべてみせた。
 まだ青い炎は収まらない。

「平家の要である還内府が、こんなところで1人うろついてるんだ。ここで討ち取っておけば、後の戦が楽になるっていうのに見逃すわけないだろ」
「・・・・・・・・俺の首が、お前の用事ってわけか」
「そういうこと。まったく、戦でも敵同士なんて、こんなにありがたいこともないね」

 言うが早いか、カタールを抜いて将臣との距離を一気に詰める。
 相手の太刀がオレの攻撃を受け止め、鈍い金属音を響かせる。力でも体格でも将臣の方が勝っているのはわかっているから、鍔迫り合いになる前に素早く身を引く。足元の雪がザッと音を立てて少し舞いあがった。
 一定の距離を保ったまま、武器を構えてオレ達は睨みあう。
 強いがゆえに冷たい怒りの炎が命じるまま、オレは静かに言葉を紡ぐ。


「・・・・・・・・お前が平家にいる限り望美は泣く。1人で、だ。お前は望美を泣かせただけじゃなく、その泣き場所も奪った」


 望美の泣き場所は、将臣だけだったのに。

「泣かせるのを許さないといったお前自身が、一番望美を苦しめることをしたんだよ」
「・・・・・・・・っ・・・・・・・・」
「オレが今ここでお前を殺しても、望美は泣くだろうけどね。だけど、望美がお前を自分の手で殺してしまったりするよりはずっとマシだろう?そんなことになったら、間違いなく望美は自分を責めるよ。お前が望美を殺す可能性だってあるわけだ。お前が平家で戦う限り、望美が源氏で戦う限り。望美はいくらでも傷つく」

 そんなこと、オレは許さない。
 望美の気持ちを誰よりも理解しているくせに。その気になれば、彼女が一番喜ぶ道を選んでやることができるくせに。全てがうまくいったら、彼女が恋しがる世界に共に帰ってやることだってできるくせに。


 そのお前が、望美を傷つけるというのか。
 望美に想われているお前が、その気持ちに答えてやれないのか。


 強い緊張感がその場を完全に支配した時、遠くから聞こえた音にオレは小さく舌打ちした。平家の陣がある方角から、こちらへ向かってくる馬の駆ける足音。東の空にちらりと視線を向ければ、大分明るくなり始めている。
 おそらく帰りの遅い将臣を探しに来た平家の連中だろう。雑魚ばかりなら多数でも勝てる自信はあるが、将臣相手ではそれも無理だ。悔しいが、こいつの強さは八葉として共に行動してきた頃からわかっていたからな。

「どうやら邪魔が入ったみたいだね」

 そう言ってカタールの切っ先を軽く下ろし、構えをとく。将臣は未だに太刀を構えたままだったが、オレを見つめる瞳に先ほどまでの覇気があまり感じられなかった。
 消化不良の怒りがまだ心の奥底でくすぶっていたが、オレは将臣を一瞥しただけで、そのまますぐに来た道を駆け足で引き返した。平家のやつらに見つかる前に、さっさと逃げた方がいい。また後で面倒なことになるだろうから。

「・・・・・・・・本気なら、お前が代わりに傍にいてやれよ・・・・・・・・」

 ひどく力ない声が背中にかけられ、オレは少しだけ足を止めて視線だけ振り向いた。
 構えをといてこちらを見つめる将臣は、今まで見たこともないほど悲しげな表情で笑っていた。それは望美が時折見せる孤独を感じさせる曖昧な笑顔と、どことなく似ていて、オレは小さく息を飲んだ。


「オレはもう・・・・・・・・そんな資格もない」


 走り出したオレの耳に、その言葉が静かに木霊した。



 望美に与えられた幕舎に足を運んだのは、ただ彼女の顔が見たかったからだ。
 もう寝ているだろうか。それともまだ、将臣との別れを嘆いているだろうか。

 ―――今、1人で泣いているだろうか。

 あの抱擁は、きっと2人なりの別離だったのだろう。
 少し離れた場所から見ただけだったけれど、あの時の望美は泣いていなかったとわかる。辛そうな表情をするだけで、決して涙を見せていなかった。それは彼女なりの決別の証のように思えた。
 望美は将臣の前ですら、泣けなくなったと気がついた時。
 将臣に対する激しい怒りと同時に、望美に対する強い苛立ちを覚えた。
 そこまで強くあろうとする彼女が、苦しいほどに憎かった。

「望美、入るよ」

 声をかけ、返事も聞かないうちに体を滑り込ませる。
 薄暗い幕舎の隅で、探し人はうずくまっていた。抱えた膝の間に顔を押し付け、勝手に入ってきたオレに何を言うでもなく、ただそこに座り込んでいた。
 オレも無言のまま近づき、望美の隣に腰掛ける。それでも望美は動かないし、何も言わない。眠っているというわけではないだろう。オレが腰をおろした瞬間、小さな肩がわずかながらに揺れたから。

「・・・・・・・結構自分勝手な言い分だとは思うけど、今オレ怒ってるから言わせてもらうよ。お前のその誰にも頼らない強さが、どれだけ周りに心配かけてるかわかってる?」

 口調が鋭くなるのを止められない。
 今の望美を思えば本当は言うべきではないのかもしれないけれど、この苛立ちは抑えきれない。

「屋島の戦の前、将臣を気にしているのに何でもないように振舞うお前にオレ達がどれだけ心配したか。決して弱音も吐かないお前の姿が、仲間から見てどれだけ張り詰めて見えていたか・・・・・・お前はわかる?」
「・・・・・・・・・・だって・・・・・・」
「だって、なに?不安をもらせば、オレ達の士気が下がるとでも思った?弱いところをみせたら、オレ達が源氏の神子にふさわしくないと呆れるとでも思った?だとしたら、お前はオレ達を見くびりすぎだよ」

 腕を伸ばし、望美の肩にそっと手を回す。
 顔をうつむかせたまま、怯えたように身を引きかけた望美を引き寄せる。そしてその柔らかな髪にその手を回し、なだめるように、宝物を労るように動かした。

「泣くほど辛い選択をして、それでも選んでくれたオレ達をどうして信じてくれない。頼ってくれないんだ。・・・・・・・・・本当にひどい女だね、お前は」

 責める言葉とは逆に、望美の頭を優しくなでる。
 まったく・・・・・・・ずるいよ、本当。こんなに腹が立つのに、こんなにも愛おしい。



「オレ達を・・・・・・・オレを信じてよ」



 泣いたって憎んだって、オレを見てくれればそれでいいと思っていた。
 いっそ壊してしまいたいとまで考えるほど、凶暴な愛おしさを抱えた。
 ・・・・・・・・・それなのにどうして、こんな気持ちになるのか。
 守ってやりたいと・・・・・・・一人で泣かないでほしいと、思ってしまうのか。

 ―――いや、違う。

 きっと違う。オレはただ・・・・・将臣を想って泣く望美を見たくないから、こんなことを言っているだけなんだ。
 これがオレのためだけの涙なら、オレはきっと喜びさえ覚えているんだろう。
 躊躇すれば、望美はすぐにオレの元から消えてしまう。
 将臣のところに。あるいは遠い天上の世界に。
 望美を繋ぎとめるためには、躊躇いは許されない。
 たとえ、彼女が悲しんでも。それを見てオレの心が罪悪感に痛んでも。
 どんな結果になろうと、最後にオレの腕の中に彼女がいればそれでいい。


「お前が望むなら、オレは喜んで将臣の代わりになるよ。お前の傍にいて、泣き場所になっていてやるから・・・・・・・・オレを代わりにしなよ」


 こんなずるい言葉、いくらだって囁こう。いくらでも計算高くなってやるさ。
 本気で手に入れたいと思った女は、こいつただ一人だ。

 小さな嗚咽と共に紡がれた謝罪が、誰に対してのものかはわからない。

 黒い満足感に支配された心の奥底で、鋭い痛みを与えた感情をオレは知らない。


 ・・・・・・・・代わりなんて、嫌なんだ。


 一瞬だけよぎった考えとその痛みなど、オレには・・・・・・・大したこと、ない。





続く





花菱草・・・「私を拒絶しないで」
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