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「ネオロマ」
遙かシリーズ

一年の始まり(遙か3、ヒノ望)

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 家族全員がそろった家のリビングで、何をするでもなくテレビを眺めながら年越しそばを食べる。
 温かい部屋で他愛のないおしゃべりをして、お母さんと一緒になってカウントダウンして「明けましておめでとう!!」なんてお互いに言い合う。
 その後で二階の自室に戻って、お隣の家に面した窓から顔を出す。
 同じく二階の窓から将臣くんと譲くんが顔を出す。明けましておめでとう、あとで初詣に行こうよ、将臣くんはいつもめんどくさいって行かないよね、譲くんのおせち料理は今年どんな感じ・・・・・・・・そんな会話がやりとりされる。
 朝がくればおせち料理を食べてお年玉をもらい、振袖を着せてもらって幼馴染達と初詣に行く。

 それが毎年の年越しと年明けの光景。
 両親がいて幼馴染がいる。
 誰かが必ず傍にいる。

 ずっと当たり前で、これからも変わらないと思っていたことだった。



「・・・・・・・・・まあ、そんなこと言っても仕方ないんだけどね」

 誰もいない部屋の中で、呟いた声が思ったよりも大きく聞こえて口をつぐむ。独り言なんて言わなければよかった。余計一人なんだという実感しか湧いてこない。
 今日は師走の三十一日・・・・・・・いわゆる大晦日。もうすぐ1年が、終わる。
 全ての戦いに決着をつけ、ヒノエくんの手をとって熊野へとやってきてからむかえる、初めてのお正月。


 初めて、傍に誰もいない年越し。


 ついつい溜息が零れた。少し思い出に浸りすぎていたのか、急に寂しさが襲ってきてやりきれない。
 本当に、考えたってどうしようもないことだとは思っているし、ぐちぐち言うようなことじゃないとも思っている。
 最後の最後で私が選んだのは、ずっと一緒に過ごしてきた両親でも幼馴染でもない。生まれ育った故郷と傍にいてくれた大切な人達を捨てる決断をしてまで、私はたった一人の傍にいたかった。そして私が愛した人は、神々の住む聖地を何よりも愛し守る役目を背負った人。
 全国から参詣者が絶えないほど信仰の厚い熊野を守る別当であり神職も兼ねる彼が、まさかお正月という大事な行事に無関係でいられるはずがない。いろいろな準備や対応、当日の予定に追われているのは、ここ最近の忙しそうな様子を見ればすぐにわかる。
 だから今朝出かける仕度をすませたヒノエくんが、今日は帰れないとすまなそうに告げた時も、私は気にしないでと笑って見送ることができた。少し残念な気持ちがあったのは認めるけれど、彼の立場を思えば、年が明ける瞬間に一緒にいることができないのは当然だ。

 そう理解しているはずなのに、寂しさが消えてくれない。

 一人でいることが、彼が隣にいないことが・・・・・今日に限ってこんなにも悲しい。
 パチッと火のはぜる音に視線を向けた。這い上がるような冬の夜の寒さから私を守るように置かれた火鉢から、ふわりと少しだけ火花が舞う。彼を連想させるようなそれが、「一人じゃないよ」と言ってくれたような気がした。
 火鉢の中に残っている炭の量が、もう随分時間が経っていることを教えてくれる。時計がないこの世界、正確な時間はわからないけれど・・・・・もうそろそろ12時をむかえる頃だろう。
 ちゃんとしたカウントダウンは無理だけど、気分だけでもカウントダウンしてみようかな。そんなことを思っていたら、傍に置いてある紙燭が風に揺れて小さく音を立てた。
 真っ暗な部屋を灯すぼんやりとした、それでもしっかりと闇を切り裂いて心細さを和らげる炎の光に、ヒノエくんの笑顔がふと頭をよぎった。


「ヒノエくんに会いたいなあ・・・・・・・」


 思わず零れた言葉は本音。
 故郷や家族を捨ててヒノエくんを選んだことを今さら後悔しているわけじゃない。
 いつも傍に人がいたあの頃を思い出して、一人でいることに寂しさを覚えるのは本当だけど・・・・・・それでもこの寂しさは全然別のもの。
 言ってしまえば、呆れるくらい単純な理由。
 ただ、1年の最後と最初に、一番大好きな人の傍にいたいだけ。
 1年の最後と最初に彼の目に映って言葉を交わすのが、私であればいい・・・・・・なんてそんな子供じみた独占欲なんだ。

 ヒノエくんと一緒にいたい、それだけのこと。


「一番におめでとう・・・・・・・って言いたかったのにな」


 一度零れてしまったら、言葉はなかなか止まらない。
 聞く人もいない呟きが空気の中に消えていく。





「本当はすごく・・・・・・・寂しいよ。ヒノエくんがいなくて」





「・・・・・・・・・・普段そのくらい素直に言ってくれたら嬉しいんだけどね」





 返ってくるはずのなかった声がすぐ横で聞こえ、私は思わず勢いよく振り返った。
 そこにいたのは部屋の入り口付近に立って、壁に軽く体を預けながらこちらを見ている・・・・・・・・ここにはいるはずのない人の姿。

「ひ、ヒノエくん!!??」
「ただいま、姫君。随分と可愛いことを呟いているから、思わず声をかけるのが遅れてしまったよ」
「ななななんで!?今日は帰れないって・・・・・・・・・お仕事まだ残ってるでしょ!?」
「心配しなくても仕度は完璧に整えてきたよ。明日はまた忙しくなりそうだったから、その前に望美の顔を見ておこうかと思ってね。休憩を兼ねて戻ってきたんだよ。驚いたかい?」

 妙に嬉しそうな、悪戯が成功した子供みたいな笑顔を浮かべてヒノエくんは私の方に近寄って軽くキスを落とす。出かける時と帰ってきた時の習慣となっているそれを呆然と受け止めながら、私はさっきまで会いたいと願っていた相手を見つめ返した。
 休憩なんて彼は軽く言うけれど、神職を務める彼にはそんな暇なんてほとんど残っていないはずだ。そのための時間を取るためにヒノエくんが無理をしたことなんて、容易に想像がつく。
 そういうことをしないで欲しいと思うのに、どうしてだろう。嬉しいと思う自分がいる。
 帰ってきてくれて、会えて嬉しいって。


「・・・・・・・・・・そりゃ、驚くよ。急に帰って来るんだもん」


 寂しい気持ちが急激に消えていく。
 でも独り言を聞かれてしまった恥ずかしさと忙しいのに無理してきただろう彼への抗議の気持ちと会えたことの嬉しさ、いろいろな気持ちがないまぜになって、つい拗ねたような口調になってしまう。
 けれどヒノエくんはそれすらも嬉しそうに笑って、そっと私を抱きしめた。

「ふふ、ゴメンね。でもどうしてもお前に言いたいことがあったんだ」

 言いたいこと?と顔をあげたら、彼はもうそろそろかな・・・と呟いて再び顔を近づけた。
 触れるだけだったさっきのキスより、少しだけ長い・・・・・・優しくて甘いキス。



「・・・・・・・・・あけましておめでとう」



「ヒノエくん・・・・・・・・」
「お前の世界では、子の刻になったら新しい日になるんだろう?そしてそれを皆で祝うんだったね。望美が言ってたのを思い出してさ、1年の終わりと始まりの両方を望美と共に過ごしたくて戻ってきたってわけ」
「覚えてて・・・・・・・・くれたんだ」

 確かに前、私の世界のことを話した時にお正月のことも言った気がする。だけど覚えていてくれたうえに、わざわざ「おめでとう」を言いに帰ってきてくれるとは思わなかった。
 そんな私の気持ちが伝わったのか、ヒノエくんは当然だろと笑顔を見せた。

「愛しい姫君の言葉をオレが忘れるわけないだろ。それにさ、わがままかもしれないけど・・・・・・・・」


 1年の最初にお前の目に映るのも声を聞くのも、全部オレでありたいと思ったんだよ。


 少し照れくさそうな表情で彼が伝えた言葉は、私が考えていた気持ちと同じで。


 すごく嬉しくて。


 思わず自分からヒノエくんの唇に口付けていた。


 とっさにしてしまったその行動に自分でも驚いたけれど、もっと驚いていたのはヒノエくんで。
 滅多に見れない彼の驚いた表情が可愛くて、私は自然に笑顔になった。



「あけましておめでとう。今年もよろしくね」



 両親にも幼馴染にも今年は言えない言葉。
 それでも私は一人じゃない。
 大好きな人がいて、その人には伝えられる。傍にいることができる。来年も、きっと再来年も。
 新しいお正月の光景が、これからの私の当たり前になっていくんだろう。


 彼の傍で、できるだけ長くこの幸せなお正月がむかえられますように。


 新年最初の私の願い、届いて欲しいな。





終わり
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