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「オトメイト系」
CLOCK ZERO

I want to know about you(央→撫子)

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※ドラマCD「Nobody knows the world~誰も知らない世界~」ネタバレを含みます。



<誰も知らない世界>

 九楼撫子という少女のことを、僕はよく知らない。
 同い年で、昔同じ小学校に通っていて、弟の円の友達で・・・・・・9年前、突然の事故に遭って意識不明になった後、行方不明になってしまった。彼女のことで僕が知っていることなんて、せいぜいこのくらいだ。
 まあそのあと、政府やキングのことを追っているうちに、いろいろと知ることにはなったけれど、それは全部文字の上だけの情報に過ぎなくて。彼女がどんなことを考え、どんな風に時間を過ごしていたのか。僕には想像もつかなかった。

「ねえ、円。九楼撫子ちゃんって、どんな子だった?」

 僕がそう口にすると、円は「は?」と口を開けた。
 ずっと離れ離れだった弟と再会して、言葉を交わすのも何度目だろう。政府の要職、ビショップとして厳重な監視下に置かれている円が面会を許してくれるようになってから、僕はちょくちょく彼に会いに行くようにしている。相変わらず、与えられる面会時間は30分。おまけに、僕があまりにも頻繁に顔を出すものだから、有心会側の人間にもいい顔はされない。
だけど、数年ぶりに会った家族と話せるのが本当に嬉しくて、僕は今日も円と他愛のない話をしたり、最近の外の様子を話して聞かせていた。
彼女の、撫子ちゃんの話題を口にしたことに、大きな意味があったわけじゃない。
ただキングの話を円に伝えていて・・・・・・その時ふと、彼女のことが思いついたから。キングが世界を壊して求めるほどに愛情を向けていた女の子。純粋に、どんな子なのか、聞いてみたいと思った。

「・・・・・・変な人です」
「え?」
「変人と呼べる人間は、ぼくの知る限りでも数人はいますけど、撫子さん・・・・・・クイーンは、また違った意味でおかしな人でした。妙に意地っ張りで頑固で気が強くて可愛げがなくて・・・・・・見ていて腹が立ちました」
「え、えっと・・・・・・?」

 すらすらと淀みなく紡がれた言葉に、何と言ったものかと反応に困る。正直少し意外だった。円がこんな風に他人を評価することもそうだし、僕の思う「九楼撫子」というイメージと違うような気がしたから。
 写真や円と一緒にいた子供の頃の彼女を思い出す限り、いかにもなお嬢様で、おとなしそうな可愛い女の子に見えたし、あのキングが過保護なまでに気にかけていた存在だったから、儚くて天使みたいな性格の子だと思っていたけれど。・・・・・・そんな、意地っ張りだの気が強いだのという言葉で評されるとは、予想外だ。

「不安そうな顔をするくせに、泣こうとしないで。強がってるくせして、誰にも頼ろうとしないんですよ、あの人。・・・・・・いつもイライラしました。キングの優しさに縋ろうとせず、真正面からやり方を否定して、そのくせキングを見捨てられない。ぼくのことも・・・・・・円じゃない、なんて否定しておきながら、ぼくのしたことを責めもしなかった」
「円?」
「・・・・・・帰って、正解だったんですよ。あの人は。こんなところにいるべきじゃなかった。元々、違う時間軸の人間だったんですから・・・・・・この時間軸のぼくのことまで、気にするべきじゃない」

 どこか自分に言い聞かせるような円の言葉に、僕じゃない誰かを探すように虚空へ向けられた視線に、何も言えなくなる。
 僕の知らない円が、そこにいた。
 ・・・・・・悲しい。愛おしい。そんな感情を、僕は最近目の当たりにしたことがある。もう会えない彼女のことを語ったキングと、同じ感情。

「・・・・・・円は、撫子ちゃんのこと、好きだった?」
「っ・・・・・・」

 驚いたように円の瞳が僅かに揺らぐ。表情は変わらないくせに、そういうところは子供の頃と変わらない。円の瞳は、結構、正直だ。


「・・・・・・好きじゃないですよ。あんな面倒な人」


 そう告げた円の言葉は、どこまでも優しくて甘い響きに聞こえた。



 九楼撫子という少女を、僕はよく知らない。
 無機質な機械音だけが響く青白い部屋の中、カプセルのガラスにそっと触れてみた。高い技術力が詰め込まれた生命維持のための装置で、ずっとずっと眠り続けているという人。まるで御伽噺の眠り姫みたいだな、と思う。本当に御伽噺のとおりなら、世界はこんな風にならなかっただろうか。運命の王子様のキスだけで目覚めて、ハッピーエンド。そんな風に進めば、きっと。
 ・・・・・・今更言ったって仕方ないとは、わかっているけれど。

「はじめまして、九楼撫子さん。こうやってちゃんと二人きりで話すのは、初めてだよね。僕、英央って言います。円のお兄ちゃんなんだけど、わかるかな?」

 ガラスの向こうで静かに眠り続ける彼女から返る言葉はない。
 ほんの数ヶ月前まで、ここにいた彼女は動いていたのだという。キングによって連れてこられた、別の時間軸にいた12歳の「九楼撫子」の精神が入って、この世界で生きていた。でもその「彼女」は、今ここにいない。政府が解体した、その日。ここにいた精神は世界を離れ、彼女は再び眠りに落ちた。・・・・・・時間軸を越えて精神を運ぶための装置は壊され、ここにいる九楼撫子が再び目覚めることはないだろうと言われている。
 キングが必要となった時のための交渉材料としてか、それとも今後の医療用サンプルとしてか。誰かが生命維持カプセルを止めることはなく、彼女はただ一人、有心会の監視下にある寂しい施設で眠り続けている。
 撫子ちゃんと会う許可は、わりとあっさり取れた。ただ眠っている、というよりは「もう死んでいる」というふうに考えられているのかもしれない。
 だけど僕は、そう思えない。こうして話していれば、きっと答えはなくとも彼女は聞いてくれている。そんな気がした。

「海棠鷹斗くんや円から君のことを聞いて、会ってみたくなったんだ。本当は君の考えも聞いてみたかったんだけど・・・・・・ちょっと、会うのが遅かったかな」

 答えの返らない部屋で、僕は彼女に話し続ける。
 キングは。海棠鷹斗は。ずっと、ずっと、こんな風に彼女に話しかけていたんだろうか。いつか彼女が何か返事をしてくれると、目を開けてくれると、そう信じて。

「ねえ、撫子ちゃん。君の目に、この世界はどう映ったのかな?キングは・・・・・・円は・・・・・・この世界に生きる人達は、君からどんなふうに見えていた?」

 知りたかった。聞いてみたかった。
 ただ一人の少年に、世界を壊させてしまうほど愛された彼女に。
 家族以外に執着しなかった弟に、あんな風に切なそうな表情をさせた彼女に。

「・・・・・・この世界はね、今、一生懸命新しい道に進もうとしている。良くなろうと皆があがいて頑張って、前に向かっていこうとしているんだ。キングや円もね、そのために協力してくれようと、少しずつ変わってきてくれているんだよ。君にも、伝わっているかな?」

 九楼撫子という少女のことを、もっと知りたかった。
 彼女の見る世界を、考えを、僕も感じてみたかった。今更もう遅いと、そんなこともわかっているけれど。・・・・・・奇跡は起こるかもしれないって、僕は信じてみたい。


「いつか、この世界が希望を取り戻したら。ここに生きる人達の多くが、笑顔を取り戻したら。・・・・・・君にも、見てほしいな」


 君が起きるのを待っている人がいる。信じている人がいる。君が目覚めた時に恥ずかしくないようにって、世界をよくしようと頑張っている人がいるんだ。
 だから、どうか。

「待ってるよ、撫子ちゃん。今度はちゃんと一緒に話をして、君を知ってみたい。だから・・・・・・また、会おうね」

 ありえないことだけど、それでも。
ガラスの向こうで眠る彼女が、ほんの少し、笑ったように見えた。





<誰かが繋げた世界>

 九楼撫子という女性を、もっとよく知りたい。
 そう思うようになって、そろそろ何年くらいだろう。彼女は小学生からの付き合いがある仲間の紅一点で、大事な大事な存在。さすがに幼馴染のりったん以上に知っているなんてことは言わないけれど、付き合いが長い分、彼女のことはそれなりによく知っているつもりだ。
 ・・・・・・でも、もうちょっと知ってみたい、なんて思うのは、どうしてだろう。

「央、洗い物手伝うわ」
「え!?いいよいいよ、撫子ちゃんは座ってて」
「でもこんな遅くに手料理をご馳走になって・・・・・・央だって疲れてるのに。洗い物くらい手伝わせてちょうだい」

 そう言ってテキパキと腕まくりをし、撫子ちゃんが僕の隣に立つ。こうなると彼女に何を言っても聞かないだろうことは、もう想像がつく。
 外見は大人しくて清楚なお嬢様にも見えるのに、結構頑固なところがあるのはよく知っている。僕は早々に諦めて、それじゃあお願いするねと彼女にシンクを譲った。

「それにしても今日は楽しかったよね、遊園地。最後に随分といろいろなことがあったけど」
「そうね。まさかあんなにお約束な出来事が3つも続けて起こるとは思わなかったわ」
「でもよかった。ストラップも見つかったし、迷子もすぐに親が見つかったみたいだし、軟派の方も穏便に話をつけられたみたいだし・・・・・・全部一件落着だったよね」
「穏便・・・・・・っていうのかしら、あれ」
「あ、あははは・・・・・・いや、円にしては穏便な方だったと思うよ、うん!」

 呆れた溜息をつきながら、撫子ちゃんがちらりとリビングの方へと目をやる。
 カウンター越しの光景は、実に騒がしく楽しそうだ。最初は普通に夕飯を食べていただけのはずが、殿がどこぞから発掘してきたワインのせいで、いつぞやの飲み会ばりにカオスな状況になりつつある。
 こういう時、真っ先に洗い物を手伝いにきそうな円がキッチンにやってこないのは、隣の鷹斗くんあたりにでも絡まれているのだろう。・・・・・・若干うんざり、というか青ざめた顔色なのが、兄としては心配だけれども。

「撫子ちゃんは飲まなかったの?」
「前回のでもう懲りたわ。カクテル系でもすぐに酔うのに、ワインなんて無理」
「なんだ、ちょっと残念。酔ってる撫子ちゃん、結構可愛かったのに」
「かわっ・・・・・・!?」

 途端に撫子ちゃんが真っ赤になってこちらを振り向く。ぱくぱくと何か言いたげに口を動かして、せわしなく瞳をうろうろさせている様子が面白くて、思わず噴き出した。普段は冷静でみんなのまとめ役をしてくれる立場なのに、こうやって不意に隙を見せるところが堪らなく可愛いと思う。
 あまりにも僕が笑うから、冗談だと思ったのだろう。撫子ちゃんは瞳を少しつりあがらせて、拗ねた表情で僕を睨んだ。

「~~~っ、ちょっと央!からかわないで!」
「ごめんごめん、撫子ちゃんがあまりにもビックリした顔するから、おかしくて。でもからかったつもりはないんだけどな」
「嘘ばっかり!観覧車の時だって・・・・・・あ、あんなこと突然言って・・・・・・」

 ごにょごにょと言葉を濁し、彼女はそのままそっぽを向くように洗い物の方へと視線を戻した。
 観覧車のことを思い出し、僕も何となく落ち着かない気持ちになる。内心、しまったなあと思った。あんなこと、言うつもりじゃなかったのに。なんでか、口に出してしまって。

『キスとか。僕とでよければ、してみる?』

 冗談だよってすぐに誤魔化せたからいいものの、二人きりの観覧車で、さすがにあれはまずかったかと後で反省した。恥ずかしそうにしている彼女を見て、僕まで恥ずかしい・・・・・・というか、ドキドキしてしまって。
 でもなぜだろう。あの時の言葉を忘れてほしい、とは思わなかった。

「・・・・・・ねえ、撫子ちゃん。嘘じゃない、って言ったら、どうする?」
「え?」
「観覧車でのこと。冗談じゃない、って言ったら?」

 ちらりと横目で彼女を見遣る。
 僕を見上げる撫子ちゃんの目が、大きく見開かれている。そこに見える、困ったような雰囲気を感じ取って、僕は苦笑した。観覧車の時と、同じだ。

「だから冗談だってば!まったく、撫子ちゃんはすぐに間に受けちゃうから、僕はいろいろと心配だよ」
「な、央!!」

明るく冗談だよと言ってみせれば、彼女はどこか安心したみたいな表情で怒り始める。わかってる。多分、僕から告白されたところで、撫子ちゃんを困らせるだけなんだろうって。
だって、僕よりあからさまに好意を示している鷹斗くんとりったんの気持ちに、撫子ちゃんは答えを出していない。さすがに、薄々とぐらいは彼女だって気付いていると思うのに・・・・・・撫子ちゃんは、気づかないフリをしているように見える。
その理由を、僕は何となくわかるような気がする。ずっとずっと仲良くやってきた関係。小学校からの付き合いで、大人になってもこうして定期的に会えるほどの友達。このメンバーでいる関係性はとても心地よくて、特別で・・・・・・崩したくない。壊れてしまうのが怖い。

「いないと思ったら、抜け駆けしてお嬢と二人きりとは。なかなかやるな、英」

 不意にかけられた声に驚いて振り向くと、カウンターに肘をついてにやにやとトラくんが僕達を見ていた。その後ろには、一見無表情なままの円や酔っておかしくなっているらしい他の3人の姿も見える。

「うむ。これが所謂、漁夫の利というものであるな。我らが骨肉の争いを繰り広げている隙をついて、ちゃっかりおいしいところを持っていくという」
「・・・・・・まさか君が俺の敵になるなんてね、央」
「・・・・・・」
「ぼくは央が決めたことなら略奪愛だろうがなんだろうが応援しますけど」
「待って待って待って!鷹斗くんとりったん怖い、なんか黒いもの見えるよ怖いよ!?あと円も殿もトラくんも誤解だから!」

 わらわらとキッチンへと入ってくる仲間達と他愛ない話をして、笑い合ってふざけて。この時間がとても幸せで、楽しい。
 ふと撫子ちゃんへと目をやる。仕方ないなと呆れながら、でもとても楽しそうな表情で、笑う彼女を見て、心からホッとする。困らせるより、ずっとずっといい。撫子ちゃんには、いつだって、あんな風に笑っていてほしい。

 ・・・・・・この気持ちが、もしかしたら恋と呼ぶものなのかもしれないと、本当は気づいているけれど。
 彼女がああやって幸せそうに笑って、今の時間を過ごしていられるなら、黙ったままでもいいんじゃないかなと、思えてしまうんだ。

(まあでも、いつかは・・・・・・いつかはちゃんと、誤魔化さないで伝えたいな)

 だから、待っていてほしい。この関係性を壊す勇気を手に入れたら。例え壊したとしても、このメンバーの絆は絶対に壊れないと、もうちょっとだけ確信することができたなら。
 その時こそ、きっと。




End.
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