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「お題もの」
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赤い糸の首輪(ダイヤの国、ボリアリ)

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 目に見えないものなんて、信じない。・・・・・・存在そのものを信じていないわけじゃない。だってこの世界は、大抵のことはなんの不思議もなく当たり前に存在している。目に見えなくても確かに存在するものなんて、この世界には山とある。それこそ、俺達自身がそうであるように。
 存在しているかしていないか、そんなものはどうでもいい。
 そうじゃなくて、例え存在していたとしても、「信頼するに値しない」ってこと。存在していても無意味で無価値なものがあるのと同じだ。

 目に見えないなら、触ることができないのなら。そんなもの、例え存在したって「無意味」だろう?

 たとえば、「絆」。たとえば、「愛情」。たとえば、根拠のない口だけの「約束」。
 ・・・・・・たとえば、「運命」。


「なんでカップルイベントってこういうのばっかりなのかしら・・・・・・」

 若干うんざりとした口調が隣から聞こえ、我に返った。
 人が行き交う駅のバザールをこうして恋人と並んで歩くのは、少し久しぶりだ。お互い仕事が忙しくてなかなかデートなんてする暇がなかったものだから、隣にアリスがいてくれるこの時間は素直に嬉しい。いい加減アリスに会えなくて我慢の限界だと駅長さんにちょーっと脅しをかけてみただけの甲斐はある。
 問題は、当のアリス本人が不満そうな顔をしていることくらいだろうか。・・・・・・まあ、彼女の性格上、不満なのは別に自分とのデートそのものじゃないことくらい、わかってはいるけれど。

「運命の赤い糸・・・・・・実際にそんなもの繋がっていたら、全力でハサミで切るわね」
「怖いこと言うなあ。いいじゃん、折角の限定イベントなんだろ?楽しむだけ楽しんだって、損はしないって」
「・・・・・・私がこういうこと苦手なの知ってて言ってるでしょ」

 深い溜息をつき、アリスは自分の右手をじっと見つめる。アリスと俺の右手薬指には、それぞれ赤いリボンが結び付けられていた。さすがに互いを結ぶようなものではないが、これは今、バザールの限られた区域でやっているカップルイベント、「運命の赤い糸フェア」の参加者がつけるものだ。
 参加者は男女カップル限定、配られるお揃いの番号をつけた赤いリボンを薬指に結んで、バザール内で買い物をするだけ。赤いリボンをつけたカップルには、店ごとにいろいろな特典やサービスを受けられるという、集客目当てのイベントとしてはそんなに珍しくもないイベントだ。
 駅長さんが考えたのか、それともバザール運営連中の企画か。何にしろ、どうせなら限定サービスを受けられるなら楽しまなきゃ損だろうと、「運命の赤い糸」という響きに顔を引きつらせるアリスを若干無理やり引き込んで、こうしてイベントに参加している。
 ・・・・・・おかげで、隣を歩くアリスはずっと不満そうな顔のままだ。

「ねえ、アリス、まだ怒ってるの?」
「・・・・・・」
「ごめんって、無理やり付きあわせたのは悪かったよ。でも折角のカップルイベントって聞いたらさ、どうしてもアリスと一緒に楽しみたかったんだ。俺の恋人はアリスだけだし、こういうのに誘いたいなって思うのもアリスだけだからさ・・・・・・やっぱりまだ、ダメ?許してくれない?」
「・・・・・・」
「アリス?ねえ、ごめんってば。ア~リス?」
「~~~~~~~っ!!ああもう!わかったわかったから!そんな顔しないでちょうだい!・・・・・・私がいじめてるみたいだわ」

 ボリスと出かけるのが嫌なわけないじゃない、とぼそぼそとつぶやいて真っ赤になるアリスが可愛くて、思わず抱きしめたくなるのをなんとか堪える。ここで抱きしめたら、折角機嫌を少し直してくれそうなのに、また元通りだ。
 俺も随分聞き分けのいいお利口な猫になったもんだ。しみじみそう思う。
 抱きしめたいのはぐっと我慢して、離れたままだった手を握る。ちらと横目でこちらをうかがって、恨めしそうに俯くアリスはすごくすごく可愛い。恋人同士になってもう結構経つし、キスやらもろもろ済ませている関係性でもあるのに、手を繋いだだけでいちいちドキッとしてて、それを取り繕って隠そうとしているところが、たまらなく可愛い。

「あ、ちょっと待ってボリス。リボンが解けそうよ」

 キスするくらいなら許されないかな、なんて顔を近づけようとするより早く、アリスが何かに気が付いたように足を止めて俺の手を引く。
 いいところを邪魔されて、少しムッとしながらアリスが見つめる赤いリボンへと目を向ける。俺の右手薬指にあるリボンが、確かに緩んで指からすり抜けそうになっていた。きっと、さっき手を繋いだ拍子に緩んだのだろう。
 ・・・・・・たったそれだけで解けそうになるなんて、随分と頼りない「運命の赤い糸」だ。

「やっぱり俺、運命の赤い糸なんて信じない」
「?ええ、それは私も信じてないけど・・・・・・」
「実際にあって、見えたとしても信じないよ。薬指なんてそんなところすぐすり抜けちゃうし、ましてや糸だろ。簡単に切れたり解けたり・・・・・・大事な相手を繋ぎとめることもできないものなら、見えたところで無意味だよ」

 運命、なんていうくらい大げさで、それでもそう思えるほどに大好きで大切に思える相手。そんな誰かを繋ぎとめるものが、頼りない糸一本だなんて、俺は信じないし信じたくない。・・・・・・いつ切れるか、いつ失ってしまうか。そんな不安定なものに左右されたくない。怖くて怖くて、仕方がない。

 前はこんな風に思ったりしなかった。そもそも他のヤツに執着することなんてなかったし、離れたら離れたでそれは仕方ないことだと気楽に思っていた。
 この世界はそういう世界だ。別れて出会ってが当たり前に存在し、まったく「同じ」相手と再び出会える保証もない。執着することが無意味で、無価値。変わらないものなんてなくて、例えあったとしても、無限に繰り返される「時間」が曖昧にしてしまう。
 特別なんていない。誰もかれもに代わりが存在して、例え大切にしていた「時間」を喪っても、代わりにそれを埋めてくれる「時間」がいずれ手に入る。そうやって何度も何度も繰り返して、前に進んでいく。
 どうして、「執着」なんてできるだろう。どうして、「喪ったら代わりすら見つけられないほどに大切なもの」なんて手に入っただろう。


 ・・・・・・ワンダーランドの異物、余所者、アリス。
 この世界に馴染んで、特別性を失いかけていて。それでも、惹かれた。きっと彼女にも、いずれ「代わり」が生まれるとわかっているのに。いつかこの世界の歯車に組み込まれて、同じものになって、全然特別じゃなくなるんだろうなと。わかっていたのに。

 それでもなぜか。失いたくないな、と。目の前で笑って怒って泣いて恥ずかしがってくれる、ここにいる「アリス」を喪ったらもう、代わりなんて見つけられないんだろうな、と。
 心の底から、そういう風に思ったんだ。


 赤いリボンを結び直したアリスが、視線を上げて俺を見つめる。
 その細く白い首筋に手を伸ばす。指先でつと軽く横になぞれば、薬指に結んだ赤いリボンの端がひらひらと舞うように彼女の喉元をくすぐる。びくりと肩を揺らすアリスに、小さく笑みを返した。

「俺は、首輪の方がいいな。首輪だったら、運命の赤い糸なんてのも、信じてもいい。それなら簡単に外れないし、繋げておける。万が一、離れてしまったって・・・・・・その首輪に繋がる相手は、『俺』ひとりだって、他の奴らにわからせてやれるだろ?」
「・・・・・・そんな重い運命の赤い糸なんて、流行らないわよ」
「だろうね。だから俺は・・・・・・そんな不確かなもの、いらない」

 目に見えないものなんていらない。実際に繋ぎとめておけないものなら、信頼する価値すらない。無意味だ。そんなものに縋って、頼って、「絶対に離れない」なんて安心できるほど、俺は強くないんだと、アリスに出会って初めて知った。
 強くありたかったのに。誰も必要としない、自由に生きる猫でいたかったのに。首輪で繋がれて、どこに行っても「ご主人サマ」に縛り続けられる生き方なんてしたくなかった。
 それなのに。今はどうしようもなく、首輪をつけられて、首輪をつけてしまいたいと思っている。

 簡単に折れてしまいそうなその首に、首輪と鎖を巻きつけて。
 俺以外、誰も知らない、誰も入れない場所に、閉じ込めてしまえばいいんだろうか。
 そうすればもう、誰も。目の前のアリスを、ダイヤの国で出会って俺のことを好きと言って恋人になってくれた、この「アリス」を。喪ってしまう不安から、逃げだすことができるのだろうか。

「・・・・・・私も、自分の目で見たものじゃなきゃ、信じないわ。目に見えないものとか、根拠のないものを無暗に信じるのはどうにも苦手」
「うん」
「まあ、目に見えないものは信じないけど・・・・・・目に見えなくても、感じとれるものもあるでしょ?そのくらいは信じてもいいかもなって、ここ最近は特に思うわよ」
「え?」

 驚いて目を瞬かせると、唐突に伸ばされたアリスの手が俺の頬を掴み、そのまま軽く横に引っ張られた。
 じんとした痛みが伝わったけれど、それ以上にアリスの行動が不思議で為すがままになる。


「例えば私はボリスの心とか考えてることが見えてるわけじゃないけど、表情の違いとか声の調子とか見てれば、なんだか今ちょっと沈み気味かなあとか、なんだか不穏なこと考えてるわねとか、それくらいはわかるようになったわ。それって結局、直接は見えない心を他の見える部分で推測しているだけだから、もしかしたら本当は間違った考えなのかもしれないけど・・・・・・でも少なくとも、ボリスとの付き合っていくうちに、間違ってないんだろうなって確信できちゃうの。根拠なんてない、直観を信じてしまう」


 頬を引っ張っていた指先が離れ、同じ場所をそっと撫でる。
 ほんのわずか触れた温もりが、ひどく優しいものを与えてくれるようで、胸の奥がぎゅっと苦しくなった。

「いつか会えるなんて根拠はない。運命とか、絆とか、そういうのも全部、見えないものだから、信じるなんて正直馬鹿げているのかなとも思う。・・・・・・でも、忘れない。過ごした時間は、一緒にいた思い出は確かに存在していた。繋ぎとめられなくたって、見えなくたって、繋がっている。そういう風に感じる気持ちを信じていられるし、信じたいの。だから私は・・・・・・ここにいる」
「アリス・・・・・・」
「自分でも驚いてる。こんな風に前向きに考えられるようになったこと。このワンダーランドの世界で生きていくと決めてから、そうやって考えなきゃやっていけなかったから、っていうのが大きいんだろうけど」

 引っ越しを経験して、誰かと離れ離れになる寂しさを、俺は感じたことがない。そういうものだと諦めていたし、割り切ってなにも思わないことに疑問を抱いたことすらなかった。
 アリスを、強いなと思った。カッコいい。うらやましいほどにカッコよくて、強くて、綺麗だ。
 俺はきっと、そんな考え持てない。初めて知った「喪う恐怖」に怯えて、いつかきてしまうその瞬間が怖くて、確実で安心できる方法にしか縋れなかった。見えないものを信じて、離れたって繋がっていられると信じていられることなんて、できない。
 ・・・・・・きっとすべての「別れ」を寂しいと思って。理不尽な繰り返しを続けるワンダーランドに翻弄されて。たくさん悩んで、迷って、迷いながらも「ここ」にいる。そんなアリスだからこそ、言えるのだろう。

「・・・・・・珍しい。アリスが、前向きだ」
「そういうボリスは、珍しく後ろ向きよね。いつもと立場が逆ね」
「うん、そうだね・・・・・・最近こんなんばっかりだ。あんたのせいで。あんたを知ってから・・・・・・俺はどんどん、カッコ悪くなる」

 我慢できずに引き寄せ、抱きしめた体は柔らかい。とくとくと伝わる音が、「アリス」がここにいることを教えてくれる。いつもはこんな往来で抱きしめるのを嫌がる彼女は、今回ばかりは何も言わないでいてくれた。
 ごめんね、と心の中だけで呟く。
 きっと俺は、それでも信じられない。アリスのように「見えない繋がり」を信じることはできない。そんなに強くいられないんだろう。俺の中は、結局のところ空っぽだから。この世界の住人が誰もかれも同じように、アリスを繋ぎとめていられると確信できるものが、俺にはないから。

 アリスがいなくなってしまったら、俺はきっと探し続ける。ルールさえ破って、自分の手元に取り戻そうとするんだろう。
 そして取り戻したら、きっと二度と手放さない。迷わせないようにアリスを惑わせるし、閉じ込めだってしてしまう。手段を選ばず、アリスだけが手元にいればいいと願ってしまう。


 抱きしめた体の肩口に顔を埋め、横目で間近に迫った白い項を見つめる。
 今はまだ。本当に首輪をつけたりなんてしない。アリスに、どうしようもない俺の、弱い部分を見せるような真似、まだしたくないから。・・・・・・アリスが信じる「見えない繋がり」を、俺も少しだけ信じてみようかなと、頑張ることができるから。
 少し視線を逸らせば、下に落ちている赤いものが見えた。折角アリスが結びなおしたのに、彼女を引き寄せた拍子に、俺の指から落ちた「運命の糸」を模した赤いリボン。頼りなく揺れ、風に吹かれて転がって・・・・・・視界から外れていく。

(・・・・・・ほら、小指じゃダメだった)

 甘える体で、間近に迫った項に唇を寄せる。
 ・・・・・・さすがに、こんなところでこれ以上をしたら、珍しく大人しく抱きしめさせてくれるアリスも怒るだろうから、やらないけれど。今、ここでは。


(本物は我慢してあげるけど・・・・・・赤い首輪って、悪くない案だと思うんだよね)


 こっそりほくそ笑んだ俺に、アリスはきっと気づいていない。
 不安があればなくせばいい。不安や迷いがわからなくなるほど、迷わせればいい。時間稼ぎは、チェシャ猫の得意技だ。



赤い糸の首輪



 赤い首輪。「俺」のだっていうわかりやすい証明。
 今はまだ、本物じゃなくても。

 ・・・・・・その首筋に赤い首輪をつけるくらい、やり方なんていくらでも。





END.


もものみさまに捧げます。遅くなって申し訳ありません・・・!


お題使用:
88*31
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