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「オトメイト系」
CLOCK ZERO

アライブ・モメント(鷹撫)

 ←恋になるまであと0秒 side Alice(ダイヤの国、転職成功エンド後、グレアリ) →離してよ、意地悪(シドニー×アリス)
 ありえたかもしれない未来。
 君が、選んだかもしれない道。


――2020年、壊れた世界。

 育てたい花があるんだ、と彼は言った。
 冷たさを含んだ風に、小さな色が様々と揺れる。オレンジ、薄ピンク、白、紫、黄色。すべてが壊れ、生きる力を失い、枯れ果てた大地で。青空が消え、太陽の光を失った空の下で。それでも確かに、花は咲いている。
 強く凛と咲く花に水を遣りながら、撫子は傍らに立つ恋人を振り返った。穏やかな紅色の双眸をきらきらと輝かせる鷹斗は、いつもより少し楽しそうに見えた。

「と言っても、普通の花よりずっと大変だし、見るのに何十年もかかっちゃうだろうけどね・・・・・・正直、この世界の状況じゃ厳しいものがあるけど・・・・・・見たいな、って思って」
「何の花を見たいの?」
「桜、だよ」

 何か懐かしいものを見るように、鷹斗は顔をあげて空を見つめた。
 桜、と小さくつぶやき、撫子も同じ方向を見つめる。そう言えば、季節的にはそろそろ春だったことを思い出す。世界が壊れる前は、毎年当たり前に見ていた薄桃色の花。たくさんの木々から、いっせいにはらはらと花弁が散っていく光景がとても美しかったと、今更になって強く思う。この世界が失った光景の、ひとつだ。

「難しいのはわかってる。政府の施設にいた頃ならともかく、今は気づかれないように、目立たないようにしての生活だしね。大規模な実験とか研究とかできないし、うまくは進まないと思う。でも俺は・・・・・・取り戻したいんだ。壊れる前に存在していた色を、風景を・・・・・・少しでも、この世界に」

 悔いの混じった口調に、撫子は視線を隣へと戻す。鷹斗は、変わった。とても人間らしく。
 今の彼には、夢がある。彼が壊してしまった世界に、色を取り戻したいと願っている。花を育てたい、桜を見たい・・・・・・彼が口にするようになった、未来への展望はどれも温かくて、前向きで。自分のことのように、嬉しくなってくる。未来を願ってくれるようになったのが、とても嬉しくて、愛おしくて。

 そんな彼を、隣で、見守っていられるこの時間が、撫子は泣きたくなるくらい幸せだと思うのだ。

「・・・・・・鷹斗なら、できるわ」
「そうかな?そうだと、いいなあ」
「できるわ。話せばレインも手伝ってくれるんじゃないかしら。円だって、そろそろ顔だす頃だと思うし・・・・・・文句言いつつ、きっと手伝ってくれるわよ。私も、手伝う。みんなでやれば、絶対大丈夫」

 目の前にある小さな花壇を作ったのも、鷹斗だ。レインとあれこれ土壌について議論して肥料を作ってみたり。円に頼んで花の種を手に入れてきてもらったり。近所の子供達と一緒に土を耕したり。いろいろと試行錯誤をして、小さくとも美しい花を、咲かせた。
 ぎゅっとその手を握れば、鷹斗が驚いたように撫子を見つめた。
 一人じゃない。何度も言っていることだけれど、鷹斗はすぐに忘れがちになる。ひとりで抱え込みがちな、元王様。優しくて傲慢。そんな彼を支える人だって、ちゃんと傍に、たくさんいるのに。

「鷹斗は、ひとりじゃないわ」
「・・・・・・撫子」
「何年、何十年かかってもいい。もし、桜が咲いたら・・・・・・みんなで、一緒にお花見しましょう?」

 遠い夢かもしれない。叶わないかもしれない。
 それでも、きっと素敵な夢だ。鷹斗やみんなが育てた桜の木の下で、お弁当を広げてお花見をする。なんて、幸せな夢だろう。彼なら叶えられる。きっと、きっと。信じてる。

 壊れた世界で、小さくて大きな夢を願う。
 彼をそっと抱きしめて、ずっとそばにいると誓った。




 ありえたかもしれない世界。
 平凡で、ありきたりで・・・・・・幸せな日常。


――2015年、高校2年の夏。

 うだるような熱い太陽の光を浴びながら、待ち合わせ場所までの道を急ぐ。別に遅刻したわけじゃない。むしろ早いくらいだろう。だけど、少しばかり気になることがあった。
 今日は鷹斗とデートの約束をしている。行き先は・・・・・・水族館。なんとなく、鷹斗と行くことを避けていた場所だった。

(私はそこまで気にしてないんだけど・・・・・・鷹斗、まだ気にしてるのかしら)

 撫子本人からしてみれば、そろそろ記憶が薄れてきている出来事なのだけれど、わりと繊細なところがある鷹斗は違うようだ。トラウマになってしまっている、と言ってもいいのかもしれない。
 数年前、まだ撫子が鷹斗と付き合っていない頃。
 ・・・・・・鷹斗と水族館に行く約束をしていた日、撫子は事故に遭った。

「撫子!!」

 待ち合わせ場所近くまで来た時、自分の名を呼ぶ声に撫子は顔を上げた。約束していた時間よりはだいぶ早いというのに、すでにそこには鷹斗が待っていた。
 ひどくほっとしたような表情を浮かべて駆け寄ってくる姿に、ちくりと胸が痛む。あの事故は鷹斗のせいじゃないのに。むしろ、鷹斗のおかげで大した怪我もなく済んだというのに。

「よかった・・・・・・君が、来てくれて」
「大げさよ。そんなに心配しないで」
「うん、わかっては、いるんだけどね。それでも・・・・・・よかった」

 恐る恐る、それでもしっかりと抱きしめてくる鷹斗に、撫子は小さく首を振った。いつもだったら恥ずかしくて、こんなところでやめて、なんて逃げてしまうところだけれど。
 撫子を抱きしめる手が、小さく震えていたから。それだけ、心配させていたと気づいてしまったから。
 彼女も安心させるように、そっと鷹斗の背中に腕を回して、抱きしめ返した。

「大丈夫。私はここにいるわ。鷹斗のおかげで、私はここにいるの」

 だから、過去に囚われないでほしい。怖がらないでほしい。
 水族館に誘ったのは、撫子の方からだった。未だにどこか事故のことを気にしている様子の鷹斗に、前を向いてもらうために。もう大丈夫なのだと、知ってほしくて。
 そっと体を離した鷹斗が、撫子をじっと見つめる。少し恥ずかしそうな表情から、もう怯えは消えていた。

「ほら、行きましょう。水族館なんて久しぶりだから、結構楽しみにしてたのよ」
「・・・・・・そうだね。行こうか」

 事故のことは口にしない。何が怖いんだとも、もう大丈夫とも口にしない。でも、ちゃんとわかり合えている。
 当たり前のように繋いだ手。夏の暑さにじんわりと溶け出す熱も、どこか幸せだった。




 ありえたかもしれない時間。
 切なくて、悲しくて、けれどそれすら消えていく・・・・・・思い出。


――2011年、小学6年生の秋。

 忘れたくないと、ひたすら願った。忘れるもんかと、意地だった。
 それでも消えていく。あんなに毎日毎時間のように思い続けて、悲しくて泣いたのに。忘れていく。確かに、記憶が零れ落ちていくのを感じる。
 忘れないようにと「神賀旭」の名前を書いて、それを机に貼り付けて、思い出すことを日課にした。けれど、段々と思い出せなくなっていく。忘れないでと悲痛に書いた文字が、誰のことを指しているのかわからなくなって。そして、思い出して、思い出せなかったことに絶望する。そんなことの繰り返し。

 時間が、止まればいいのに。

 撫子は、生まれて初めてそんなことを思った。大人になれなくていいと、思った。あの人を覚えていられるのなら、時間が止まって、子供の姿で永遠に生き続けることになったって構わない、と。
 苦しかった。悲しかった。忘れていく自分が、嫌で嫌で仕方がなかった。

「・・・・・・撫子。大丈夫?保健室に行ったって聞いて・・・・・・体調悪い?」

 不意にかけられた声に、撫子はぴくりと肩を震わせた。自分を守るように覆った掛け布団の向こう、知った声が心配を滲ませて話しかけてくる。
 無意識にぎゅっと布団を握る手に力を込めた。聞きたい、覚えていたいと思っていた人の声より、幼いトーンだということが、こんなにも胸を締め付ける。この向こうにいる鷹斗は、違う。違う人だ。わかっているのに、縋りつきたい衝動が湧き上がった。

「最近、なんだか元気がないよね?何かあった?俺でよければ、聞かせてくれないかな」
「・・・・・・たく、ない」
「撫子?」
「忘れたくない、ことが、あって・・・・・・なのに、忘れてくの。どうして・・・・・・どうして、忘れなくちゃいけないの?私のしあわせだって、そんなの・・・・・・そんなわけ、ないのに!ひとりにしたくなかったのに!どうしてよ・・・・・・鷹斗・・・・・・」

 また熱いものがこみあげてくるのを感じ、撫子は頭から掛布団をかぶってきつく唇を噛む。
 少しの沈黙の後、不意に背中に温かいものを感じた。少しだけ布団の隙間から顔を出すと、鷹斗がこちらに背を向けて、ベッドに腰を下ろしているのが見えた。

「・・・・・・忘れたらいいよ」
「っ!?」
「ひどいこと言ってるかもしれないね。でも、君がそんな風に泣くことなら・・・・・・覚えていることで、そんなにつらそうに、悲しそうに泣くのなら・・・・・・俺は、忘れてほしいと思う。忘れて、いいと思うんだ」
「ど、して・・・・・・どうしてあなたがそんなこと言うのよ!!!?」

 耐え切れず、撫子は飛び起きて鷹斗をにらみつけた。泣きすぎて腫れぼったくなった瞼が、余計に熱を帯びる。壊れてしまったように、涙が止まらない。
 淡々とした口調で告げられた鷹斗の言葉は、今の撫子の胸にひどく突き刺さった。他の誰でもない、鷹斗に言われたことが苦しかった。忘れてもいい、だなんて。鷹斗にだけは、言ってほしくなかったのに。
 ただただ泣きながら、撫子は無言で鷹斗の胸を叩いた。記憶の片隅で、まだ覚えている。優しくて自分勝手なあの人に抗議して、こうやって胸を叩いたこと。嫌だと言って泣いて、離れたくないと縋りついて・・・・・・それでも撫子の精一杯の想いを、抗議を、彼は受け止めてくれなかった。

 幸せになって、なんて。残酷な願いを口にして。
 あの世界の彼は、撫子の手を離したのだ。

 小さく震え、ろくな力の入らない手が、別のぬくもりに包まれる。重なった鷹斗の手が、力強く撫子の手を握りしめた。
 涙でかすんだ視線の先、悲しそうな瞳の鷹斗が、微笑んでいた。

「俺はね、撫子。君に笑っていてほしいんだ」
「た、かと・・・・・・?」
「笑っていて。そんな風に、泣かないで。そのためなら俺、どんなひどいことも言えるよ。君が悲しむのもわかっていて、それでも・・・・・・それでも、願ってしまうんだ」

 ぐっと思いがけず強い力で腕を引かれ、気が付けば撫子は鷹斗の腕の中にいた。
 押し当てられた胸元から、とくとくと音が聞こえる。時を刻む針のように、止まることなく・・・・・・生きていることを教える、温かい命の音。
 不意に、気が付いた。そんな当たり前のことも、忘れていた。

 鷹斗は、ここにいる。ここに・・・・・・撫子のそばに、いてくれる。


「・・・・・・忘れていいんだよ。忘れて、幸せに、なって?」


 心から彼女の幸せを願う優しい言葉が、毒のように胸に落ちていく。
 かなしい。消えていく恋心が、忘れていく「彼」の笑顔が。それでも、予感がするのだ。きっと、撫子は、また恋をするだろう。優しく抱きしめて、幸せを願ってくれる、彼に。

 忘れた先の未来にあるだろう「幸せ」を予感しながら。
 今はただ、薄れていく優しい王様の姿を思って。
 少女はただただ、失った初恋に涙を流した。




 いくつもの可能性に、未来は分岐していく。
 選ばれた先の世界。選ばれなかった先にあった世界。無数に枝分かれを繰り返す世界に、「君」がいて、「俺」がいる。
 そのうちのいくつの「俺」が、「君」に出会ったのだろう。恋をしたのだろう。
 何人の「俺」が、「君」を失ったのだろう。
 絶望して、世界を壊してしまったのだろう。
 そして・・・・・・君に救われたのだろう。

 ――ねえ、撫子。

 こんな願い、傲慢だと思うけど。
 俺はね、祈ってしまうんだ。一度は心から憎んだ【かみさま】という存在に。願ってしまうんだ。

 君が、幸せに、生きてくれますように。

 理不尽な世界に、殺されてしまわないで。ちゃんと笑って、君らしく、まっすぐに凛と。
 どの世界に存在する「君」よりも。他でもない君が。
 俺にもう一度「恋」を教えてくれた、俺のことを好きだと言ってくれた、君が。



 手に入れた未来の先で、幸せに、なりますように。




――2020年、冬。

「撫子、どうしたの?急に立ち止まったりして」
「ちょっと・・・・・・今、誰かに呼ばれたような気がして」

 不思議そうにきょろきょろとあたりを見渡しても、特に撫子の見知った姿は見当たらない。雪のちらつく並木道を歩く人はまばらで、誰もかれもが寒そうに体をすくめて足早に歩いていく。

「誰もいないみたいだけど、気のせいじゃないかな?」
「そう、かしら・・・・・・でも・・・・・・」
「・・・・・・撫子」

 くいと、繋いだままの手が引かれる。撫子が振り向くと同時に、ちゅと温かい感触が頬に触れる。それが隣を歩く恋人の唇だと気が付くと同時に、彼女の顔は一瞬で真っ赤に染まった。
 いたずらっぽく笑った鷹斗は、そんな撫子の反応にただ満足そうにうなずくと、ただ口をぱくぱくさせる彼女をぎゅうと抱きしめる。寒さのせいだけじゃない、恥ずかしさに色づいた耳元へと唇を近づけ、彼はくすくすと笑ってみせた。

「ごめん。君が俺以外のことに気を取られてるのが、なんか・・・・・・悔しくて」
「っ、だ、だからって!」
「うん。だから、ごめんね?」

 まったく悪びれた様子のない口調に、撫子は深々と溜息を吐いた。
 白い息が立ち上り、ゆらりと溶けて消えていく。溜息とは裏腹に、撫子の口元には笑みが浮かぶ。しょうがないなあ、と。どうしようもない愛おしさが湧き出て、怒ることもできなくなる。

「まったく。教師がそんなことでいいのかしらねー、海棠先生?」
「先生になるのは春から、だからね。まだ大丈夫。それに先生だって、プライベートで大事な恋人とイチャつく時間くらい、許されるものじゃない?」

 わざとらしくからかいの言葉を口にして、二人で顔を見合わせて笑いあう。
 なんでもない話をして、笑って、手を繋いで、のんびり歩く。そんなありふれた日常が、なんだかとても幸せで、温かい。

 ふと顔をあげ、撫子は灰色の空を見つめた。太陽の見えない曇天から降り注ぐのは、白い粉雪。とてもとても寒くて冷たいけれど、もうすぐこれは桜へと変わる季節がくるだろう。
 曇天は青空へと変わり、暖かい風が吹くようになって、この道は薄桃色の花に埋め尽くされる。
 舞い散るものが花弁になって、鷹斗が先生という立場になって。それでもきっと、この手は繋いだままなのだろうと、そんな確信がある。

「・・・・・・ねえ、鷹斗。春になったら、お花見をしましょうか」

 繋いだ手をぎゅっと握れば、同じように握り返される。
 ああ、幸せだと漠然と思った。
 こうして一緒にいられること。なんでもない日常を過ごせることが・・・・・・泣きたいくらい、幸せ。

 ずっと一緒にいる。傍にいる。あなたの隣を、離れない。


「しあわせよ、とても」


 無意識のうちにこぼれた言葉に。
 誰かが、よかった、と。

 笑ってくれたような気がした。





End.
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