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オトメイト系

甘い、甘い(ノルン・暁人ハッピーエンド後)

 ←I want to know about you(央→撫子) →求婚してみた~ver.エリオット~(ハートの国、エリアリ)
 家族の温かみ、絆。そういうものが、私にはわからない。私にとって家族、特に「父親」は従うべきものであり、その他の家族とは関わりすら薄いものだったから。
 それが温かいものだと、教えてくれたのはあの兄弟。
 記憶を奪うことへの疑問と罪深さと同時に、あの二人から、私は家族というものが温かくて優しい関係だと教わった。

 ・・・・・・教わりながらも、奪った。その罪は、きっと消えないのだと思う。

 少し自分のことを許せるようになったのだとしても。自分のことを、好きになれたのだとしても。あの二人が、再び「兄弟」として過ごせるようになったのだとしても。
 私がしたことは、消えてくれないから。



 船の台所に並んだ3つの後ろ姿を、少し離れてぼんやりと見守る。暁人がここの台所に立っているのは珍しいことではないけれど、あとの二人がここに並んでいるのは少し見慣れない光景だと思う。
 こはるさんと、市ノ瀬さん。元々のペアであった結賀さんといることの多かったこはるさんは、最近、市ノ瀬さんと行動を共にすることが多くなった。全員が一度バラバラになった時、二人の間に何があったのかまでは詳しく知らないけれど・・・・・・、なんとなく、今までとは違う雰囲気になっている気がする。
 市ノ瀬さんは、こはるさんといると幸せそうに見えるし・・・・・・、こはるさんも市ノ瀬さんといる時たまにすごく可愛い笑顔を見せる。もしかして、ああいう姿が本当の「恋人」同士というものなのかもしれない。

「おい、不知火。なにそんなとこでボーッとしてんだ」

 訝しげな声で振り向いた暁人に、「なんでもない」と首を振る。
 内心は、ちょっと不満だ。また名字で呼ばれた。私達も一応は恋人と言ってもいいはずだと思うのに、暁人は必要な時は呼ぶと言って、全然呼んでくれない。特に、他の人がいる時は、そう。

「じゃあ、こっち来い。お前も作り方見とけよ」
「・・・・・・私がいると、邪魔になる」
「なに遠慮してんだよ。普段はやるなっつても料理作ろうとするくせに・・・・・・お前の場合は、変なモン入れようとしなきゃ問題ねえだろ。料理っつーのは見てるだけでも随分覚えるからな。俺の隣で見とけ」
「そうですよ、七海ちゃん!暁人くんの手際、すごくいいんです。見ていてとても勉強になります」

 笑顔で私にそう声をかけるこはるさんの手には、何かの生地が入った器が抱きかかえられている。
 こうして珍しい面々で台所に立っているのは、暁人に焼き菓子の作り方を教わるためだ。なんでも以前、こはるさんが作った焼き菓子が、元々は暁人に教わったものだったと知った市ノ瀬さんが、一緒に作りたいと希望したらしい。弟からのたっての願いを受けて、最初暁人は戸惑ったような表情を浮かべていたけれど・・・・・・、今はとても、嬉しそうだ。
 こはるさんの隣で生地の入った器をせっせと混ぜている市ノ瀬さんを、ちらりと見やる。
 ・・・・・・兄さんの作る焼き菓子はおいしいんだよ、と。私に無邪気に話してくれた、彼の幼い笑顔がふと思い浮かんだ。

(・・・・・・記憶を消してしまえば、二度と戻らない。でも、消えないものもあるのかもしれない)

 兄がいたという温もりを、焼き菓子の味の懐かしさを、市ノ瀬さんが覚えていたように。
 本当に大事なものは消えないのかもしれない。そう思うと、少しだけ救われた気分にはなる。並んでいる市ノ瀬さんと暁人を見ていると、本当に良かったと思う。私もどこか赦されたような気がする。
 忘れていても消えないほどの絆で繋がった兄弟。
 ・・・・・・幸せそうだからこそ、後ろめたくもある。本当に私は、あの輪の中に近づいてもいいのか、と。

 再び三人で料理に集中しはじめる三人の背中から、そっと視線を落とす。おいでと言われても、私はあの中には入れない。入ってはいけないと思う。
 やっと兄として接することを赦された暁人。自分は独りじゃなかったと知り、能力からも解放された市ノ瀬さん。そんな市ノ瀬さんの隣で嬉しそうに笑って、彼を支えるこはるさん。
 私じゃ、きっと笑えない。どんなに私の罪が許されても、救われても。私が入れば、あの優しく幸せな空気を壊してしまいそうで。


「・・・・・・おい。だから何してんだよ、お前は」


 手をぐいと引かれて、俯いていた顔を上げる。
 いつの間にか目の前まできていたのか、暁人の呆れた顔がすぐ傍にあった。

「暁人・・・・・・」
「どうしたんだよ、さっきからボーッとして。・・・・・・どっか、具合でも悪いのか?」

 不審そうな表情が、心配そうなものに変わる。気遣うような口調に、ただ首を振った。暁人は、優しい。ぶっきらぼうに見えるけれど、その実、周りに結構気を遣って、なんだかんだと世話を焼いてしまう人だ。
 失敗した、と少し思う。暁人に余計な心配をかけるなら、私はいつまでもここに留まっているべきじゃなかった。理由をつけて、早くこの場から離れてしまえばよかった。

「なんでもない。すこぶる、元気」
「嘘つけ。なんでもないって感じじゃねえぞ」
「本当に、なんでもないから。暁人には関係ないこと」
「!お前な・・・・・・っ、はあ」

 一瞬声を荒げかけ、すぐに暁人は深々と溜息をついた。その様子に少し胸がざわつく。呆れられたのだろうかと思うと、当然だという気持ちと怖いという気持ちがないまぜになった。
 やっぱり、私は向いていない。
 こはるさんのように可愛くもないし、あんな風に見ている人まで幸せになれるような笑顔、できない。自分が無表情で無口な部類なのは理解しているし、性格も可愛らしくない。考えてみれば、「恋人」なんていうもの、私には一番向いていないものだったのかもしれない。
 ふいと視線を逸らした暁人を見て、無性に胸が重くなった。かなしい、と。押し殺すことになれていたはずの感情が、息苦しさを増して襲いかかる。ああやっぱり。私はここに、いるべきじゃない。暁人の隣にいていい人間なんかじゃ、ない。

 唇を噛んで視線を落としかけた時、不意に頬に触れるものがあった。
 それが暁人の手だと気が付くのと同時に、促されるように顔を自然と上げる。暁人の顔が随分と近い、と。そう思ったのと、引き結んだ唇に一瞬だけ柔らかいぬくもりが触れたのはどちらが先だったのだろう。
 目を瞬かせる私から、暁人はすぐに顔を背けてしまう。髪から覗いた彼の耳は、真っ赤に染まっていた。
 何が起きたのかうまく把握できないまま、暁人の姿をじっと見つめる。こちらに背を向けて楽しげに話している市ノ瀬さんとこはるさんは、作業に夢中で私達のことには気が付いていないようだった。

「・・・・・・関係なく、ねえよ」

 ぽつりと。ようやく暁人がそれだけ呟いて、私をじろりと睨む。
 それは今まで向けられてきた敵意を込めた視線じゃない。暁人がそういう風に私を睨まなくなったのは、いつからだっただろう。まだ微かに頬を赤くしながら睨むその視線は、どこか拗ねているように見える。

「恋人のことで関係ねえことなんて、あるわけないだろ。・・・・・・少しは頼れ、七海」
「!」

 小さな声。ぶっきらぼうな言葉。でもその一言で、私の心臓は大きく音を立てる。
 言葉の端々から滲んだ気遣いと優しさが、じんわりと重くなった胸を満たしていく。七海と。彼がそう呼んでくれる、それだけで、温かい気持ちになれる。
 さっき一瞬だけ触れたぬくもりが急に熱を帯びた気がして、そっと唇を押さえた。甘い、とそう思った。味なんてしないはずなのに、僅かに残った熱がとてもとても甘い。トクトクと規則正しく、早めのリズムを刻む自分の心臓が、静かに胸を打つ。

「ごめん、なさい・・・・・・」
「ん・・・・・・」
「でも、本当に、なんでもない。ただ、私があそこに入っていいのか、わからなかっただけ」

 市ノ瀬さん達の方へ視線を向けて訥々と告げる私に、暁人は何かを気が付いたように眉をしかめる。
 もう一度大きなため息を吐き、暁人の手が私に伸ばされる。そのまま有無を言わさず引っ張られて、あっという間に生地を混ぜている市ノ瀬さんの隣へ押し込まれた。唐突に隣へやってきた私に驚いた市ノ瀬さんが、手を止めて目を瞬いている表情が近くにあった。

「あ、暁人?」
「ほら、そいつのやり方よく見ておけ。ちっと力が足りない気もするが、結構うまくできてるからな。お前も、別に不知火が横で見ててもいいだろ?」
「え!?えっと、僕は・・・・・・その、別に・・・・・・変なものを入れようとしなければ、構いません、けど・・・・・・見てるくらいなら・・・・・・」
「確かに千里くん、混ぜるのがとてもお上手ですね!七海ちゃんも、見ているだけじゃなくて一緒にやってはいかがでしょう?よければわたしの生地を混ぜてみますか?」

 はい、と明るくボールを手渡そうとしてくるこはるさん。大人しく隣で生地を混ぜ続ける市ノ瀬さん。
 二人とも当たり前のように受け入れてくれようとしているのが、少しだけ居心地の悪さを覚える。心の奥底に消えない罪悪感が、ここから逃げてしまいたいと訴えたけれど、それは掴んだままの暁人の手が遮った。
 差し出されたボールから、甘い匂いが漂う。生地の段階でこんなにもいい香りなのだから、焼きあがったらどれほど甘い匂いがするのだろう。

「・・・・・・甘い、いい匂いがする」
「ええ。・・・・・・できあがりは、もっとおいしいです。僕はこの焼き菓子、好きです」

 ぽつりとつぶやいた言葉に、手元のボールを見つめたままの市ノ瀬さんが答える。とても穏やかな微笑が、彼の口元に浮かんでいた。それは、兄さんの作る焼き菓子はおいしいと得意げに話していた笑顔とは違う。それでも、とても、とても今の市ノ瀬さんらしい、確かな笑顔だった。
 ああ、そうか。私のしてしまった過去は消えない。消してしまった記憶は、市ノ瀬さんが過去に見せていた感情や笑顔は、完全に元通りというわけにはいかない。それでも・・・・・・それでも市ノ瀬さんは、市ノ瀬さんなんだろう。今の彼なりに、笑って、お菓子をおいしいと思って、誰かを大事に思って。「今」の市ノ瀬さんが、確かにそこにいる。

 私のしたことは、赦されない。消せない。なかったことにはできない。
 でも、消えてしまった先の未来を、その人が幸せに、その人なりに生きてくれているのだとしたら。ほんの少しだけ、私も、救われる気がする。
 身勝手なことかもしれないけれど、そういう救いを得ていいと赦してくれる人がいるのなら。すべて知っていて、憎んで、それでも私のことを傍に置いて好きだと言ってくれる暁人が、そんな救いを夢見せてくれるのなら。私は自分がここにいてもいいんだと、思える気がする。
 僅かに振り返れば、私を見つめる暁人と目があった。優しい色の瞳が、愛おしいものを見るように甘く細められたものだから、私は小さく息をのんで俯いた。

 家族の絆の詰まった、思い出の焼き菓子。 きっと、どんなものよりもおいしいのだろう。
 昔の味と似ていて、でも少し違う、とびきりの甘い、甘い。

 もう大丈夫そうだと離れていこうとする暁人の手を、今度は自分からそっと握り返す。
 ぴくりと暁人の肩が震えて、横目で見上げた彼の顔が途端に赤くなる。だけど振り払えるはずの手を、彼はそのままにしていてくれて。
 シンクの下、他の二人に見えないように。私達はしばらく、手を繋いだまま並んでいた。



End.
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