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オトメイト系

「こはる」(ノルン・駆悲恋エンド後)

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 生まれ変わったよう、というのはきっとこういうことを言うんだろうと思う。
 視界が何もかも違って見える。俺のするべきことはハッキリしていて、何も迷う必要なんてない。怖くもない。疑問もない。不安も、何もない。

 俺は父さんのためにだけ、生きて動いていればいいんだから。

 父さんの邪魔をする存在は、消す。
 父さんが望むなら、どんな手を使っても手に入れる。

 ほら、簡単だ。難しいことはない。とても確実で、これ以上ないくらいに明確な俺の存在意義。
 何も躊躇わないで、俺はこの道を進んでいける。なんて幸せな生き方だろう。なんて、心の軽い生き方だろう。


 ・・・・・・それなのに、なんでだろうね。
 一点の曇りもないはずの心を、たったひとつ、揺らがせるものがあるんだ。


「また、食事をしなかったんだって?」
「・・・・・・」
「駄目だろう?君は父さんの大事な大事な存在なんだから、自分をないがしろにするようなことをしちゃ。父さんも心配していたよ。君は優しい子だから、父さんを傷つけるような真似、しないよね?」


 優しく諭すように話しかけながら、俯いたままソファに座る少女を見つめる。
 彼女の目の前には、手つかずの食事が残されている。もう何度目かの光景。たまに少し手をつけても、ほとんど残す。この場所に連れてこられてからというもの、少女は目に見えて落ち込んだ。食事の量が減り、笑わなくなり、口数も少なくなった。
 「船」で見ていた彼女は、もっと笑っていた。よくしゃべっていた。おかしいな、と思う。父さんにようやく会えたのに、これからもずっと一緒にいられると言うのに、どうして彼女は元気をなくしてしまったんだろうか。それが不思議で不思議でならない。
 そしてもうひとつ不思議なのが・・・・・・、そんな彼女を見るたび、なぜか心の奥底がざわつくような気がすることだ。

「ほら、食べて。あまり意地を張っていると、無理やり口をこじ開けて食べさせるよ?」
「っ・・・・・・!」

 彼女に近づいて、ソファの背もたれに片手をかける。ぎしりと響いた音に、少女が脅えたように肩を震わせた。
 ・・・・・・ああ、イライラする。
 なぜだろう。どうして、この子を見ていると、こんなにも心がざわつくんだろう。彼女は父さんの大事な子。丁重に、大切に、優しく扱ってあげないといけないのに。

 同時に、無性に腹が立つ。
 俺は満たされているはずなのに、何も不満なんてないはずなのに、乱される。本当にこれでいいのか、なんて。考えちゃいけない疑問が浮かんでしまう。迷ってしまいそうに、なる。


「駆、くんは・・・・・・っ、もう、わたしの名前を、呼んでくれないんですね」
「・・・・・・?必要とあれば、呼ぶって言ったじゃないか。変なことを言うね」


 震える声で紡がれた言葉の意味がわからず、首を傾げる。
 ああそう言えば、彼女は前にもそんなことを言っていた。おかしなことを言う子だ。個体名はないと不便なのだから、必要があれば呼ぶに決まっている。名前を呼ぶことの意味なんて、それしかないだろう。なのにどうして、それを俺に求めるんだろう。
 彼女の名前は、父さんがたっぷり呼んでくれるだろう。なにせ父さんが直々につけた名前だ。俺が呼ぶ必要なんてない。必要性を感じない。

 俺の答えはお気に召さなかったのか、彼女は勢いよく頭を振った。
 伏せられていた瞳が、弾かれたように俺を見つめる。桃色の瞳に浮かんだ涙に、一瞬だけ、また心が重くなったような気がした。

「わたしはっ・・・・・・、どうすればいいかもう、わからないんです。わたしの能力は、守りたい人を守ることもできなくて、ただ・・・・・・っ、大事な人達を傷つけてばかりで・・・・・・何が正しいのか、間違っているのか、わからなくなってしまって・・・・・・不安で、こわくて、堪えきれなくなりそうで・・・・・・っ!」
「・・・・・・」
「こんなっ、こんな風に誰かを傷つけてばかりなら、わたしはやっぱり、人と関わってはいけなかったと、そう思うのに・・・・・・っ、ひとりに、なりたくない・・・・・・駆くんのそばに、いたい・・・・・・間違っているって、こんなの悪いことだって、わかってるのにっ・・・・・・!」

 ぽろぽろぽろと。
 いくつもいくつも透明な滴が、彼女の頬を流れ落ちていく。
 こういう時は、どうすればいいんだっけ?女の子が泣いていたら・・・・・・、抱きしめて慰めてあげる、が正解かな?そう弾きだした脳に従って、そっと少女を引き寄せる。
 腕の中におさめた彼女の体は細く、ひどく冷えているようにも思えた。


「お願い、です・・・・・・駆くん、わたしの名前、呼んでください・・・・・・」


 ぎゅっとすがるように、俺の腕に小さな手が縋りつく。その指先は、弱々しく震えて頼りなかった。
 彼女が求めているものを、少し考えてみる。ここで彼女に何を与えれば、この少女は食事をしてくれるようになるだろうか。父さんを困らせるような真似をせず、従順なお人形さんでいてくれるだろうか。

 彼女が俺に名前を呼んでほしいと願う意味。
 それは、自分を肯定してほしいから?自分が選んだ道を、すべて燃やして傷つけて、それでも俺についてきて、父さんの元へとくることを選んだこと。彼女は、納得したいのかもしれない。後悔していないと言いたいのかもしれない。
 悩みも迷いも後悔も無縁となった俺には、想像するしかできないことだけれど、そう考えてみる。
 ・・・・・・この先の未来に、自分を呼んでくれる人が確かにいるのだと、実感したいのか。

 そんなの、俺じゃなくて父さんに頼めばいいと思うけれど。
 どうしても俺をと、望むのであれば仕方ない。

 そっと彼女の顔をあげさせ、距離を近づける。ただ一言、個体名で呼んでやればいい。何も難しいことはない。そうすれば彼女は満足するだろうし、迷いも消えるのだろう。もっと言うことを素直に聞いてくれるようになるかもしれない。父さんの役にも立てる。
 迷うことなんて、ない。躊躇いなんて、ない。


「・・・・・・呼んであげないよ」
「っ!」


 なのに、口から出たのは、拒絶の言葉。
 桃色の瞳が傷ついた色を浮かべる。涙の浮かんだその眼差しに、無表情の俺の顔が映っていた。

 ・・・・・・本当に。イライラする。
 装えていない。最悪だ。いつもの笑顔が、思い出せない。

 そのまま体を離し、何事もなかったかのように部屋を出る。背後で引き止めるように俺の名前を呼ぶ声が、涙混じりに聞こえていたけれど、振り返らなかった。
 苛立ちを噛み殺しながら、ただひたすら歩く。胸の中のわだかまりがどんどん大きくなっていって、不安定に心が揺れる。こんなはずじゃなかった。こんな気持ち、知らない。知りたくもない。知っては、いけない。
 ずきずきと頭痛がする。ひどい吐き気がこみ上げて、俺は足を止めると、力任せに近くの壁を殴りつけた。


 どうして、あの子を見ていると、こんなに胸が痛いんだろう。
 どうして、あの子と話していると、こんなにイライラするんだろう。


 心の中で、そっと彼女の名前を呟く。それだけで、胸のあたりが落ち着かなくなる。痛くて、温かくて、苦しくて、優しくて・・・・・・矛盾した気持ちがこみ上げる。
 呼んでなんてあげない。呼びたくない。
 その名前を口にだしたら最後、俺の何かが変わってしまう気がするから。


 「こはる」。


 すべてが満たされた俺の心に、唯一波紋を投げつける名前。

 憎くて腹立たしくて、どこか愛おしいその名前を。


 声も出さずに、呟いた。





End.
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