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 ←3日間おつかれさまでした! →「こはる」(ノルン・駆悲恋エンド後)
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オトメイト系

I(ノルン・駆ハッピーエンド後)

 ←3日間おつかれさまでした! →「こはる」(ノルン・駆悲恋エンド後)
 連れて行かなきゃ。早く早く、あの子を。
 父さんが待ってる。あの子を連れていかなきゃいけない、父さんのところに。

(・・・・・・違う)

 父さんの言うことは絶対なんだ。父さんの言うことはすべて正しい。
 命令には従わなきゃ。あの子を手に入れることが、俺の役目。だから、あの子の気持ちを俺に向けないといけない。俺しか見えないようにして、俺の言うことを大人しく聞くように・・・・・・俺のことを、好きにさせなきゃ。

(違う、違う違う違うっ!!!)

 誰かを好きにさせる方法なんて、簡単だ。同じ気持ちを向けてあげればいい。好意を向けられれば、大体の人間は心を許していくようになる。特に他人と長らく接触していない、他人とのつながりを求める、純粋すぎる女の子。・・・・・・オトすのなんて、簡単だろう?
 だから優しくしてあげる。とびっきりの甘い言葉をささやいて、君が特別なんだと言ってあげる。君を、好きになってあげる。
 すべては、父さんの命令だから。



「っ、違う!!!俺はっ・・・・・・!」
「!?か、駆くん?」


 怒鳴りつけた自分の言葉で、駆は我に返る。いきなり飛び起きた体に、心臓がばくばくと音を立て、じんわりと体中に汗が滲んだ。
 寝起きの視界が、こじんまりとした部屋の中をぐるりと見渡す。明るい陽射しが窓から差し込み、キッチンの方からはおいしそうな匂いがする。ときおり聞こえてくる鳥の声以外、何も聞こえない静けさも穏やかで、それが少しだけ駆の心を落ち着かせてくれた。
 動揺と共に息を吐きだし、すぐ隣で心配そうな顔をするこはるに笑顔を向けてみせる。誰かを安心させるために作り慣れた笑顔は、大した苦労もなく駆の顔に貼りついた。

「ごめんごめん、驚かせちゃったね。おはよう、こはる」
「おはよう、ございます・・・・・・。あの、駆くん、大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ。心配しないで。少し寝ぼけただけ、だから」
「・・・・・・怖い夢でも、見ましたか?」

 じっと晴れない表情のまま駆を見つめるこはるに、彼は小さく苦笑を零した。自慢できることではないけれど、この笑顔には長いこと自信を持っていた。大体が駆の笑顔に騙されるし、本当に考えていることや感情を見抜かれることもない。不安感だとか、自分の弱味をさらすような感情は、尚更のこと。
 今こうして駆の見せかけの笑顔に騙されないこはるだって、はじめの頃は、それはもう生まれて初めての罪悪感なんてものを覚えるほどには簡単に騙されてくれていたものだけれど。

 ・・・・・・いつからだろう。こはるが、駆の気持ちを見抜くようになったのは。
 いつからだろう。こはるになら、弱味をさらしても大丈夫だと思うようになったのは。

「怖い夢、というか・・・・・・そうだな。なんて言ったらいいものか、複雑だけど」

 うまく伝えられる言葉が思いつかず、彼は言いよどんだ。最近になって、たまにこういうことにも悩まされる。自分の気持ちを表現しようとすると、なんて言っていいのかわからなくなり、言葉に詰まるのだ。
 それも当然なのかもしれない。
 駆が「駆」として考えるようになったのは、恐らく、こはるのことを好きになった後のことだろうから。

「ねえ、こはる。本当の俺って、何かな?」
「本当の、駆くん?」
「うん。わからなくなってきて、さ。俺の本当に考えていたこと。本当の俺って、今まであったのかな。今までの俺が全部・・・・・・偽物だとして。じゃあ、今の俺と何が違うんだろう」

 考えがまとまらないまま話す駆の手を、ぎゅっとこはるの小さな手が包みこむように握りしめる。その温かさと柔らかさに、彼はほっと息を吐いた。
 真っ直ぐに向けられる桃色の瞳に、そっと笑いかける。真っ直ぐに相手の目を見ることは、こはるのくせだ。疑うことを知らない純粋すぎる綺麗な光。人と関わることのなかった彼女の瞳は、駆からすると、いつだって眩しい。
 素直で優しいこはるは、嬉しい時や楽しい時は素直にその感情を口にする。けれど、怒っている時や悲しい時、励ましたいけれど言葉が見つからない時・・・・・・そんな時は、必ずその澄んだ瞳でじっと訴えてくる。だから彼は、こはるに無言で見つめられてしまうと弱い。あの綺麗な瞳に自分がどう映るのかを考えると、怖くなってしまうのだ。


「今・・・・・・こはるの目に、俺はどう見える?」


 駆はそっと手を伸ばし、彼女の頬を撫でた。
 不安げに揺れる彼の視線から逸らされない、少女の瞳。その中に、虚ろに笑う自分の顔を見つけ、駆は一瞬だけ困ったように瞳を伏せた。
 糸の切れた操り人形のようだと、そんな言葉が頭に浮かぶ。操る人間がいなくては、もう何も動けない。どうしたらいいのかもわからなくて・・・・・・こんな役立たず、いつかこはるも見捨ててしまうんじゃないかと。そんな考えが、彼の脳裏をよぎる。

 そんな駆の姿に、こはるは小さく唇を噛むと、そのまま勢いよく駆に抱きついた。しっかりと彼の首の後ろに手を伸ばし、引き寄せる。
 抱きしめられた当の本人は、きょとりと瞬きをして、戸惑った視線を恋人へと向けた。


「駆くんは、駆くんです。わたしの大好きな、人です」


 耳元近くで紡がれる言葉に、駆は小さく息を飲んだ。
 とくとくと伝わる少女の鼓動、陽だまりにも似た優しい匂い、触れ合う温かさに、彼の心に絡まっていた重い不安の糸が、ゆっくりと解けていく。微かに目元を赤らめた駆に気づいた様子もなく、こはるは必死に言葉を紡いだ。

「本当の駆くん・・・・・・、わたしにもよく、わからないです。だけど、今までの駆くんが偽物だなんてことは、ないと思います。それだけは、絶対に違うと思うんです。だってそうしたら・・・・・・、わたしが出会って、仲良くなって、大好きになった駆くんは、いなかったということになってしまいます。そんなの、嫌です」
「こはる・・・・・・」
「それに、平士くんが言っていました。駆くんの心の声は、確かにざらついて聞こえることが多かったけれど・・・・・・、私と話している時は、綺麗に聞こえていた、と」
「平士が・・・・・・?」
「はい!だから私、勇気を出すことができたんです。駆くんの気持ちは、誰かに強制されたものじゃない。駆くん自身の気持ちは、ちゃんとあるって・・・・・・信じることができましたから」

 わずかに腕の力を緩め、こはるが彼の顔を覗き込む。
 両手で優しく駆の頬を包み、少女は笑顔を浮かべた。明るく咲いた、春の花のような笑顔で。


「だから駆くんも、信じてください。駆くんは、私の大好きな、駆くんのままです」


 ――泣きたくなるほどの愛おしさ、というのを初めて駆は知った気がした。

 なにが欲しいかと、考えたこともなかった。欲しいものと言われて無難に候補を挙げることはできたけれど、本当に心の底から欲しいと思ったことなんて、なかった。当たり前だ。考えることをそもそもしていなかったのだから。
 だけど、今はわかる。
 心の底から欲しかったもの。欲しかった、言葉。

「そう、か。平士が言うなら・・・・・・本当のことなんだろうね。そっか」
「はい!それでもまだ、本当の駆くんというものが気になると言うのであれば、わからないと思うのであれば。これから、見つけていけばいいと思うんです」

 眩しいものを見るように、駆は目の前で笑うこはるを見つめる。
 そっと頬に置かれた手に自身の手を重ねた。少しだけ、怖かった。こはるの綺麗さを壊してしまいそうで。駆自身の罪で汚してしまうことが、傷つけてしまうことが。触れることすら躊躇うほどに。
 それでもこうして、手を伸ばせば温もりに触れられる。彼女は、触れることを赦してくれる。
 意思を持たないまま過ごし、彼女を傷つけ、未だにこうして不安に囚われて動けずにいる自分を。

 ・・・・・・好きだと、言ってくれる。


「これからは駆くん自身の気持ちで、たくさん考えることができます。もしかしたら、今までと違うように思うこともあるかもしれません。そうしたら、それがきっと、本当の駆くんなのだと思います。そうやってひとつひとつ、いろいろなものを見るのもきっと楽しいです!」


 彼女の語る未来は、とても綺麗だ。駆が打算でいつも見据えていた現実とは違って、甘い夢物語のよう。
 それを否定することも論破することも簡単だろう。だけど、こはるは「信じて」と言うから。
 駆が思い描きもしなかった未来や希望的観測を見せて、大丈夫だと笑うから。

 ・・・・・・だから駆も、信じようと思える。
 彼女の示してくれた新しい「目的」と「未来」のために、生きようと思える。

 迷いも不安も悩みも消えない。何も考えず、ただ洗脳された思考回路で生きてきた駆には、正直つらいものがたくさんある。
 それでもきっと、こはるのためだと思えば。きっと乗り越えられる。


「私も、お手伝いします。ずっと駆くんの傍にいます。だから・・・・・・んっ!」
「・・・・・・ふっ、まったく・・・・・・こはるには勝てる気がしないよ」


 添えていた手をこはるへと伸ばし、そのまま引き寄せて口づけを落とす。
 困った顔で笑う駆に、こはるは一瞬きょとんとした後、慌てて口を押えてかああっと真っ赤な顔で俯いた。
 そんな愛らしい恋人の態度に、くすくすと駆の顔に笑みが浮かぶ。ノルンに乗っていた頃ではお馴染だった、一見すると優しく穏やかなようでいて・・・・・・、実はひどく意地悪で楽しそうな笑顔が。

「あんまり可愛いことばかり言ってると、襲っちゃうよ?」
「お、おそ・・・・・・っ!?」
「たまには朝から、っていうのもアリだよね。明るいところでたっぷり愛を確かめ合うっていうのも、悪くない。この前は外で迫っちゃったから却下されたけど・・・・・・、今は家だし、邪魔は入らないし?」
「よよよよよくないです!ダメですよ、駆くん!」
「ん~?何がよくないって?別にいいだろ。ご希望どおり、ベッドだし・・・・・・愛し合うのに時間は関係ないよ」
「そういう問題じゃないです!」

 いつの間にかベッドに押し倒されそうな体勢になり、こはるは顔を真っ赤にして慌てる。
 おろおろと視線を彷徨わせてどうしようかと悩んでいる少女に優しい視線を向け、駆はその頬にちゅと軽く唇を寄せた。


「・・・・・・こはる、ありがとう。君がいてくれて、本当に良かった」


 自然と零れ落ちた言葉は、ひどく穏やかに響いた。
 驚いたようにこはるが目を見開き、すぐに嬉しそうな笑顔に変わる。
 再び優しく近づいた唇を、彼女もそっと受け止めた。


 キスと共に囁かれた「あいしてる」。
 それは、紛れもない「駆」の本心。





End.
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