スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←夏の楽しみなんてどうせ1つだけ →綺麗に汚れていくばかり(ボリス×アリス)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
総もくじ  3kaku_s_L.png ネオロマ
総もくじ  3kaku_s_L.png QuinRose
総もくじ  3kaku_s_L.png オトメイト系
総もくじ  3kaku_s_L.png リジェ系
もくじ  3kaku_s_L.png その他
総もくじ  3kaku_s_L.png お題もの
  • 【夏の楽しみなんてどうせ1つだけ】へ
  • 【綺麗に汚れていくばかり(ボリス×アリス)】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「QuinRose」
Last Kiss(吸血鬼パラレル、ユリアリ)

閑話 What's your favorite?

 ←夏の楽しみなんてどうせ1つだけ →綺麗に汚れていくばかり(ボリス×アリス)
 ファーストキスは女の子にとって大事なものなのよ、なんて。
 そんなことを言っていたのは姉だったか母だったか。もしかしたらたまたま読んだ本の言葉だったかもしれない。
 とにもかくにも世間一般的にファーストキスというのは、結構インパクトに残るものらしい。大切で素敵な、たった一度のキスに夢を見ている女の子はきっと山ほどいる。
 子供ながらに冷めた性格をしたアリスも、それは例外ではなかった。さすがに「私だけの王子様が優しくキスをしてくれるの」なんていうものを期待してはいなかったが、それなりに好きな人と思いが通じ合ってキスをすることをちょっとは思い描いていたりもしたのだけれど。


 アリス=リデル、6歳。ファーストキスは思いがけずあっさりと、種族さえも違う年上相手に奪われた。


「・・・・・・レモンの味って嘘だったのね」
「なにを言い出すんだ、突然」
「ん~、ユリウスにキスされた時、レモンの味しなかったなーって。ファーストキスだったのに」
「っ、・・・・・・げほっ!」

 予想外の言葉だったのか、ユリウスが咽る。飲んでいたコーヒーが気管に入ったらしい彼の背中を、アリスは小さな手を伸ばして撫でた。
 アリスよりずっと年上で、体も大きくて、ヴァンパイアなんて呼ばれる「魔」の頂点に君臨するとまで言われるほどの強い種族。そのはずなのに、アリスはあまりユリウスを怖いと思ったことがない。初めの頃こそ、そのそっけない態度と冷たい口調に威圧感を覚えてはいたけれど、こうしてアフタヌーンをソファに二人並んで過ごすほどの関係となった今では、ユリウスの何が人間と違うのか不思議で仕方がない。

 例えば、ヴァンパイアが日光に当たると消えてしまうとかいうのは嘘だし、聖水や十字架やニンニクが弱点というのも全部違うらしい。
 確かに日光は少し苦手らしく、ユリウスもあまり昼間から外へ出掛けたがらないが、彼はそもそも基本的に引きこもり体質だからその辺りは微妙だろう。現に、同じヴァンパイアであるらしいエースなんかは、太陽の光がさんさんと降り注ぐ中を爽やかな笑顔で突っ切っているくらいだ。そのことを指摘したら、「あの規定外と一緒にするな」とげんなりした表情で言われた。

 なにはともあれ、ユリウスと出会っておよそ半年。
 アリスが知った人間とヴァンパイアの違いなんて、せいぜいが「人の血を吸うか吸わないか」のそれくらいだということだ。

 ユリウスは無愛想だけれどなんだかんだと面倒見がいいし、アリスの誘いにだって文句を言いつつも付き合ってくれる。叱るときでさえ、理不尽な理由では決してない。彼の言うことなら、きちんと聞こうと自然に思わせてくれるし、反省しようと思えるのだ。子供ながらに、それがどれだけすごいことかわかる。
 人に好かれるタイプではない。根暗で素っ気なくて冷たいところがあるのも否定しない。
 それでもユリウスは、アリスの周りにいる大人よりもずっとずっと優しいと思う。

「あ、あれはキスじゃない、契約だっ!あんなものをキスに数えるな!」
「え~女の子のファーストキスを奪っといて、その言い逃れはひどいわよ?大人ってサイテー」
「うばっ・・・・・・!?人聞きの悪いことを言うな、違うと言っているだろう!」
「む・・・・・・なによ、子供とのキスなんて数に入らないとでも言いたいの?ユリウスにとってはそうでも、私にとってはファーストキスよ」

 あまりにも否定されて、なんだか少し腹が立つ。拗ねた気持ちのまま、両手で持ったマグカップに口をつけた。ほのかにハチミツが混ざったホットミルクは、ふんわりと甘い味がする。そのままのミルクの味が少し苦手だったアリスのため、いつもユリウスはホットミルクにハチミツを少しだけ混ぜてくれる。
 ユリウスがこのホットミルクを作ってくれるようになったのは、いつからだろう。
 今アリスが持っているマグカップだって、子供用にと小さめに作られたサイズのものだ。初めの頃はユリウスの使っていたカップを四苦八苦しながら借りていたけれど、いつの間にか「割られても困る」とかそんな口実でアリス専用のマグカップが用意されていた。

 小さく息を吸うと、ミルクの香りに混じって独特の香ばしい匂いが鼻をくすぐった。ユリウスの手元にある、大きめのマグカップをじっと見つめる。愛用のマグカップの中身は、きっといつも通りコーヒーが入っているんだろう。アリスにはまだコーヒーの良さがわからないけれど、ユリウスがコーヒーを淹れている姿は好きだった。茶色いコーヒー豆が粉になり、サイフォンでこぽこぽと音を立てながら抽出され、最後には濃い液体となるのは、まるで一種の魔法を見ているようだ。
 興味を惹かれて少しできたてを飲ませてもらったこともあったけれど、あの苦さのどこがいいのか残念ながらまったく理解ができなかった。舌に残るような苦味を思い出して、アリスは少し眉を寄せる。あの苦さがわかるようになれば、大人なんだろうか。甘いホットミルクを堪能しながら、そんな取り留めもないことを考える。


 ・・・・・・もうちょっと大人だったら、キスだと思ってくれたんだろうか。
 同じものを好きになれるくらいになったら、もしかして。


「ねえ!ユリウスってコーヒー以外に好きなものあるの?」

 唐突な問いかけに、ユリウスが少し目を瞬かせる。不審そうな顔で見下ろされ、少し居心地が悪くなったアリスはカップを置きながら周囲を見渡し・・・・・・とっさに、テーブルの上にあったスコーンを指差す。
 いちごジャムとクロテッドクリームを添えた白い皿の上には、スコーンがまだ残っている。お茶請けにと用意したそれは、姉のロリーナと一緒にアリスが作って持ってきたものだ。形がやや歪なものはあるが、味は不味くないと思う・・・・・・のだけれども。

「ほら、スコーンあんまり食べてないじゃない?甘いもの嫌いなのかなって・・・・・・今度はちゃんとユリウスの好きなもの用意するから、えっと・・・・・・その、だから・・・・・・」
「・・・・・・そんなものを知って、どうするつもりだ」
「え?えっと、ユリウスの好きなものを私も好きになったら、もしかして一緒に楽しめるかもしれないでしょう?そうしたらきっと・・・・・・」
「必要ない」

 思いがけずぴしゃりと返されて、アリスは言葉を飲み込んだ。
 ユリウスは一口コーヒーを飲んだ後、カップをテーブルに置いた。すぐ隣からまっすぐに見つめてくる紫藍の瞳に、アリスは小さく体を震わせる。その瞳はとても静かで、感情を読むことを許してはくれない。


「余計な気を回すな。私のことなど、お前が知る必要はない」


 そっけない言葉にハッキリと線引きをされてしまったようで、どこか悔しい気持ちになる。
 ぎゅっと唇を噛んで、アリスは俯いた。半年。長いようで、短いようで。それでも確かに近づけたと思った。知りたいと思った、あの契約を交わした日から、少しくらいは。
 ただの勘違いだったのだろうか。ユリウスもアリスのことを、少しずつ受け入れてくれるようになったと思ったのは・・・・・・気のせいだったのか。


「・・・・・・どうして?私がユリウスのこと知りたいって思うの、余計なことなの?」


 泣きそうに揺らぐ声を、必死で振り絞る。俯いた視線の先、ぎゅっとスカートの裾を強く握りしめる自分の両手が見えた。
 そもそもユリウスが何かをまともに食べている姿など、この半年で見たことがほとんどないくらいだ。ヴァンパイアは物を食べないでも生きていられるのか、それとも普通のものが食べられないのかどうなのか。いつも飲んでいるコーヒー以外、特に彼が「好物」だと思われるものが何も思い浮かばない。
 彼の好きなことを知らない。何を考えているのか知らない。過去も今もなにも、なにも。

 そんなの、悔しい。
 アリスばかりが、ユリウスのことを知らない。アリスのことをユリウスに知ってもらうことはできても、逆ができないなんて、そんなのは嫌だ。
 契約の「キス」のことだって同じだ。どんな形であっても、どんな意味があったとしても、あれは確かにアリスにとってファーストキスだった。ユリウスの唇が触れて、心の奥底に冷たい何かを刻まれて。最初は何もかもが突然すぎて呆然としていたけれど、思い出すと今でもドキドキする。

 それがアリスだけ、なんて。ユリウスは何の意識もしてくれないなんて。
 ・・・・・・うまく言えないけれど、すごくイヤだ。もやもやして、苦しくて、悲しい。

「お、おい。まさか泣いているんじゃないだろうな?やめろ、ここで泣くな。泣いている女も面倒だが、子供はもっと面倒なんだ。泣くな、泣くんじゃないぞ」
「・・・・・・泣いてないもの」

 泣きそうなだけだ、とアリスは小さく鼻をすすった。言葉は大分ひどいとは思うけれど、ユリウスが目の前でおろおろしている気配が伝わってくる。
 やがてぎこちなく頭にぽんと大きな手が乗せられる。どう触れていいのかを戸惑うようにぎこちなく髪を撫でる手の優しさに、なんだかますますアリスは泣きたい気持ちになった。

「ヴァンパイアの好物くらい、お前も知っているだろう」
「え?」
「・・・・・・お前が楽しめるわけもない。知る必要もない。深入りをしなければいいだけの話だ。お前は何も、見なくていい」

 相変わらず突き放したような言い方だけれども、その裏に潜んでいる感情にアリスは顔を上げる。彼女を見下ろす紫藍は、どこか悲しそうにも寂しそうにも見えた。
 ヴァンパイアの好物が人間の生き血だということくらい、子供だって知っている話だ。
 人を襲い、命を喰らう、人間にとっての脅威。「ヴァンパイア」を知るということは、多分そうした彼らの陰惨な部分も理解しなければならないということなのだろう。

 アリスと同じ「人間」をエサとする、彼らの暗い一面を、ユリウスの本性を、知る覚悟があるのかと。
 そう問われているような気がして、アリスは呼びかけようとした言葉を飲み込んだ。


「そのままでいろ、アリス」


 それは、突き放された言葉だったのか。
 それとも彼の思いやりの言葉だったのか。

 コーヒーのおかわりを取りに行くためか、マグカップを持ってソファから立ち去る背の高い後姿をアリスは黙って見送る。手元に引き寄せた薄ピンクのマグカップに、そっと口をつける。少し冷めたホットミルクは、さっきよりもずっとずっと甘ったるく感じた。
 アリスが好きだと伝えた味。好きだと伝えた色のマグカップ。
 好きだと伝えるのはこんなにも簡単なのに、何も言えなかった。

 知りたいと口にしながら、恐ろしい事実まで知らなければいけないのかと思った途端、躊躇ってしまった。ユリウスに近づくのを、少し怖いと思ってしまった。
 きっとこれでアリスがユリウスを避けるようになったとしても、ユリウスはきっと責めない。まだ幼いアリスにだって、わかってしまう。半年だけの付き合いでも、それくらいのことはわかるくらいに、ユリウスという相手のことを知っている。


「・・・・・・はやくおとなになりたい」


 ぽつりと零れた言葉は、甘いミルクの中に落ちる。
 大人になったら、わかるだろうか。言えるだろうか。知りたいと伝えられるだろうか。

 大人になって、あの契約のとおり、ユリウスのものになったのなら。
 彼の隣にいて、知ることを、許されるのだろうか。

 離れたところから香るコーヒーの苦い香り。
 今はまだわからない苦味に心惹かれながら、アリスはもう一口とミルクを飲みこんだ。






「あーあ、今日は随分と飲んじゃって。そんなに口直しが必要なら、食べなきゃいいのに。ユリウスってば自虐趣味~あははっ!」
「・・・・・・うるさい、放っておけ」

 床に置かれた空のワインボトルを足で小突きながら、エースが腹立たしい笑みを浮かべた。すっかり暗闇に染まった部屋の中、紅色の瞳が楽しそうに輝きながら細められる。
 なみなみと注がれたグラスの液体を呷る。人間からするとワインにしか見えないだろうが、これはヴァンパイアにとっての「非常食」のようなものだ。人の血を、ワインに混ぜ込んで特殊に保存したもの。やむを得ない事情で長らく「狩り」ができない場合に使うもので、人里近いこんな場所に住んでいながらがぶ飲みするようなものではないことくらい、理解している。

「俺達に人間の食べるものは合わない。食べたって意味がないし、むしろ気分が悪くなる。ユリウスはよく理解しているはずじゃないか。あの子に無理矢理食べさせられてるって言うなら、俺から言ってあげてもいいけど?」
「別に死ぬわけでもない。飲み物であれば問題はないから、ついでに付け合せの菓子も口にしているだけだ。日頃から人間らしい振る舞いをしておかなければ、いざという時に振る舞えないからな」
「あの子はユリウスが人間じゃないって知ってるじゃないか」
「・・・・・・今日はあいつが作ってきたスコーンだったんだ。一口も口にしないのはその、仮にも伯爵の立場としてどうかと思っただけだ!」

 いつもは伯爵とか全然気にしないくせに、という呟きが落とされたが、聞かなかったふりをして残ったグラスの中身を呷る。
 窓から照らす月明かりに紅色の液体が鈍色に光り、自分の中に入っていく光景を視界の片隅に見やる。口の中で溶けていく鉄錆の味は、昼間に口にした甘ったるいスコーンの味を流し込んでいく。それを心地よく感じると同時に、少し惜しい気持ちにもなった。口に残っている甘さが不快なのに、どうしてかアリスが作ったスコーンはそれほど悪くなかったかもしれないと思えた。

 どうにも調子が狂う。ただの人間の子供だというのに、アリスにはいつもペースを乱される。
 気まぐれで助けた命だ。将来、その血が華やかに極上に醸成するその時まで生かすことを約束した、予約済みの獲物。ほんの10年待てば、喰らい時だろう。ヴァンパイアにとって10年なんて、一眠りすれば過ぎ去る僅かな時間だ。アリスのことを放っておくこともできた。
 なのにどうして、そのわずかな一時を獲物と過ごそうと思ったのだろう。短い命を持つ弱い生き物を近くに置いているのだろう。遠ざけても冷たく接しても、アリスが懲りずに近寄ってくるから根負けしただけか?

「ねえ、ユリウス。本当にその時がきたら、アリスのこと食べるんだよね?」
「・・・・・・何を聞くかと思えば、くだらない」
「殺せるの?」

 にやりとエースが口元を歪める。問いかける声はいつも通りだったが、紅い瞳は残酷に闇に輝いていた。
 飢えを常に隠そうともしない、半ヴァンパイア。元は人間だったはずなのに、エースは純血の私よりもヴァンパイアらしいヴァンパイアだ。残酷な本性を隠さずに生きている。


「綺麗に血の一滴残さず貪り食って殺してあげなよ。契約してでも手に入れた獲物なんだから、それくらいの愛情表現は見せてあげなきゃ。中途半端に生かすなんてこと、しないでよ?」
「・・・・・・ああ」


 愛したのなら命まで。それがヴァンパイアという生き物だ。エースが狂っているのではない。その考え方は間違っていない。元々ヴァンパイアというのは、何かを奪ってしか生きられない。
 ・・・・・・だから。本当に、調子が狂う。

 何も残っていないワイングラスをテーブルに置いて、窓越しに輝く月を見上げる。
 窓ガラスに映った自分の瞳は、エースと同じ血の色をしていた。

(アリスは、もう寝ているな)

 口の中、馴染んだ味に消えたはずの甘ったるさが、少しだけ残っている気がした。





End or・・・?
関連記事
スポンサーサイト


総もくじ 3kaku_s_L.png ネオロマ
総もくじ 3kaku_s_L.png オトメイト系
総もくじ 3kaku_s_L.png リジェ系
総もくじ 3kaku_s_L.png お題もの
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
総もくじ  3kaku_s_L.png ネオロマ
総もくじ  3kaku_s_L.png QuinRose
総もくじ  3kaku_s_L.png オトメイト系
総もくじ  3kaku_s_L.png リジェ系
もくじ  3kaku_s_L.png その他
総もくじ  3kaku_s_L.png お題もの
  • 【夏の楽しみなんてどうせ1つだけ】へ
  • 【綺麗に汚れていくばかり(ボリス×アリス)】へ
  • Tag List 
  •  * |

~ Comment ~

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます
管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【夏の楽しみなんてどうせ1つだけ】へ
  • 【綺麗に汚れていくばかり(ボリス×アリス)】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。