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リジェ系

白い、白い、白い、花(BWS・BN、ラスGood)

 ←わりとボロボロ →GW終わりとか信じない
 そこで立ち止まったことに、特に意味はなかった。
 ただ、夜闇に包まれた木々の隙間からふと見上げた空に、不気味なほどに紅いものを見つけたから、なんだろうと思っただけだ。森の奥深く、よほどのことがなければ誰もよりつかないだろうその場所で、オレは駆けていた足を止めた。

 見上げた先、真っ赤に染まった月が見える。

 不吉な色。嫌な色、だ。血にも似た色。
 どこかざわりと湧き立つ本能を振り払うように、ひとつ息を吐いた。血、血、血。鮮やかなあの色彩を脳裏に描いただけで、まだ自分の中の本性がざわつくような気がする。ゾディバからの回復と共に大分薄れたとは言え、この「獣」の本性からは逃れられないということだろうか。
 嫌悪感と同時に抱き続けてきた、命の色を欲する浅ましいまでの欲望。
 あの狂おしいまでの熱くて甘いモノを、口にしたいと。確かに思ってしまうオレがいるのは、紛れもない事実だ。


(・・・・・・でも、もう、そんなのは嫌だ)


 片手に抱えた布を抱えなおす。布や野菜、パン、塩漬け肉、それに薬草を少し。生きるために・・・・・・オレとアイツが生き残るために、必要なものだ。近くの村でこっそりと盗んできたそれを見ると、少しだけやるせない気持ちにもなる。
 フィオナと二人、命からがら逃げだした先でも、まだ安息は得られない。残党狩りの目から逃れ、人間種が寄り付かないほどの森奥深くでひっそりと暮らす生活。狼種であるオレはまだいい。だが、人間であるフィオナには相当な無理を強いてしまっていると、わかってはいた。
 それでも、どうすることもできない。オレには、どうしたらいいか、わからない。
 もしかしたら、もっとうまい方法があるのかもしれない。こうしてちょっとずつ必要なものを盗んで、動物を狩ったりする生活をしなくてもいい生活があったのかもしれない。
 アルルやギランみたいに、オレがもっと強い狼だったなら。アイツに、今みたいな生活をさせないで、済んだかもしれないのに。

 それでもどこかで安堵するのだ。ずっとマシだ、と。
 殺して奪ってきたわけじゃない。他の誰かを犠牲にして奪い取っただけじゃない。それだけで、どこか救われたような気分にもなる。あのむせ返るような血の匂いに包まれたものじゃない、という事実が心を少しだけ軽くしてくれる。
 ・・・・・・オレはやっぱり、弱い狼だ。

「・・・・・・ん?」

 感傷に浸りながら進みかけ、ふと視界の端に何かが映った。
 夜空を切り取る紅の月とは正反対の、真白く光る小さな花。禍々しくも見えるはずの赤い月光に逆らうよう、凛と青白い光を纏って咲く花から、目が逸らせなくなった。
 そっと近づき、手を伸ばす。柔らかな白い花弁が指先をくすぐる。この血色の月が支配する夜にあっても、変わらず純粋に咲き続ける白い花。眩しいくらいの美しさが、ふとアイツの姿と重なった。

 躊躇いは、一瞬。
 ぷつり、と。オレはその気高い花を、摘み取った。




 足を奥へ奥へと進めた先、切り立った崖が立ちふさがる。トンと軽く近場の岩を蹴り、小さな出っ張りを足がかりにして数メートルほど上る。絶壁とも呼べる崖の途中にぽっかりと空いた穴に滑り込み、ようやく一つ息を吐くことができた。
 この岩穴が、今のオレ達の住処だ。光のほとんど差し込まない岩壁を伝って歩いていくと、前方の方にぼんやりとした灯りが見えてくる。そこにいるであろう相手の顔を思い浮かべたら、少しだけ歩くスピードが速くなった。


「戻った、フィオナ」
「ラス!おかえりなさい」
「ああ。その、ただい、ま・・・・・・」


 何やら書き物をしていたらしいフィオナが、ぱっと立ち上がって笑う。
 その笑顔を真っ直ぐ見ていられなくて、つい視線を逸らした。返す言葉が小さくなる。本当はもっと、ちゃんと、言えたらいいと思っているのだけれど。どうしてか、うまく言えなくなる。

 まだ、慣れない。
 おかえり、と言ってもらうこと。
 ただいま、と返すこと。

 胸がじんわりと温かい。
 フィオナにそう言ってもらうたび、そう返すたび、よくわからない気持ちになる。
 いつだって泣きたいような気持ちになって、「おかえり」と言ってくれるフィオナの目を真っ直ぐ見られない。「ただいま」だけじゃない言葉を返して、このうまく言えない感情を伝えたいと思うのに、どう言っていいかわからなくなる。
 自分の口下手さにもどかしさを感じながら、オレは手にした袋から布を取り出した。

「・・・・・・これ。繕いものに必要だって言ってたから。布、持ってきた」
「ありがとう、ラス。いつもごめんね」
「気にしなくていい。これは、オレの役割だ。それと・・・・・・これ」

 そっとフィオナの手を取り、細い指先に先ほど摘んだばかりの白い花を握らせる。
 オリーブ色の瞳がぱちくりと瞬き、オレと白い花を交互に見つめる。その仕草がなんだか可愛く思えて、つい小さく噴き出した。

「ええと・・・・・・ラス、これどうしたの?」
「帰り道で、見つけて・・・・・・オマエに似合いそうだと思って、摘んできた。その・・・・・・土産、に」

 少し居心地が悪くなって、目を逸らす。今更ながら、一輪だけしか摘んでこなかったことを後悔する。土産なのだと言うなら、もっと他の花を摘んで花束にすればよかった。その方がずっと綺麗だろうし、彼女も喜んだかもしれないのに。
 だけどあの花を、他の花に紛らわせたくなかった。
 もう一度、彼女に渡した白い花を見つめる。手折られてなお、凛とした白い美しさを保つ花。紅い月にも汚されず、ただ黒い闇の中で揺れていた。希望に光る、一輪の、綺麗な・・・・・・。


「ありがとう・・・・・・とても、きれい、だわ」
「ッ、そう、か・・・・・・」


 ふわりと花が綻ぶような笑みを向けられ、ひとつ心臓が音を立てる。
 フィオナといると、たまにこういうことになる。胸がぎゅっと苦しくなったり、温かくなったり、急に鼓動が速くなったり。今まで、家族と一緒に過ごせることになった時でさえ、感じなかった気持ちを、フィオナはいつもオレに与える。
 いつもいつも、どうしていいかわからなくなって、うまくフィオナを見ることも、会話をすることもできなくなって・・・・・・そのくせ、「一緒にいたい」という気持ちだけは、不思議なほどに膨らんでいく。

「礼は、いらない。家族に・・・・・・自分の妻、に・・・・・・土産を持ち帰ることくらい、当たり前だろう」
「え?」

 再び驚いたように丸くなる彼女の視線から、今度は体ごとそっぽを向いて逃れる。
 ちゃんと口にしたことはなかった。あの話が出た時は、オレもフィオナと出会ったばかりで・・・・・・急に妻とか言われても、実感が湧かなかったから、あえてそういう風に扱ったことはなかったけれど。

 フィオナは、彼女が狼種の眷属になると決め、夫としてオレを選んだその時から。
 もうとっくに、オレの「家族」なんだ。


「え、え?ラス、私のこと、妻って・・・・・・思ってくれてたの?」
「・・・・・・嫌なら、別にいい」
「嫌じゃない!嫌じゃないんだけど、その・・・・・・ちょっと驚いちゃって。ラスって、私のことを家族って言ってくれても、妻だとかそういう風に言ってくれたことないじゃない?」
「それは、ッ・・・・・・オレは、妻とかそういうの、よく、わからなかった、から・・・・・・オマエのことも、どう言っていいのか、わからなかった」
「そう・・・・・・ふふっ、なんだか、嬉しいわ」


 小さく笑う声がして、温もりがそっとオレの左手に触れる。
 思わず肩がびくりと震え、反射的に振り払いそうになる。こんな風に誰かに触れられるのは、慣れていない。咄嗟に優しさから逃げるようにしてしまうのは、もはや一種の条件反射だ。
 だけど、そっと包み込むように触れる小さな手が、温かいから。
 安心させるようなその温もりに、オレは大人しく、その手をゆっくりと握り返した。

「じゃあ、もう、ラスは私のことを妻だって思ってくれてるってことよね?」
「・・・・・・本当のことを言うと、まだよくわからない」

 穏やかに問いかける声に、本音を返す。嘘は嫌いだし、誤魔化したところでしょうがないことだ。
 繋いだままの手を軽く引きよせる。さっきより近づいた距離に手を伸ばして、恐る恐るフィオナを抱きしめた。肩口に顔を埋めるようにして、その優しい香りを吸い込む。ドクドクと聞こえる音は、オレのだろうか、それとも彼女のものだろうか。


「でも、オマエが大事だって思うのは、本当、だから。この気持ちをなんて呼ぶのか、わからないけど・・・・・・オマエは、とっくに、オレの家族。もっと、ずっと、一緒にいたいと思う。一緒に・・・・・・生きたい」

 
 ひとりでずっと、生きてきた。アルルやギラン、ようやく迎え入れてもらえた群れの「家族」ですら、失った。
 オレ以外の狼種がどうなったかは、わからない。生きていると信じたいけれど、そのわずかな希望にすがりついた後の絶望が、怖いと思う。
 もしかしたら・・・・・・オレは、最後の狼種なのかもしれない。


 だけどもう、ひとりじゃないと、信じられる。


 フィオナは、狼種じゃないけれど、狼種の真実を語り継ぐことを託された仲間だ。
 闇の中に凛と咲く、白い花のように。
 呪われ、黒く塗りつぶされた伝承の中で、ただ一人。白く純粋であり続けた彼女を、紅い月光から守りたい。その希望に包まれた白い光を、手放したりしたくない。

 他の誰かが摘み取ろうとしたら、オレがその腕を喰いちぎってやる。
 それでも摘み取られてしまうなら、そうなる前に、オレの手で、手折ろう。


「うん・・・・・・私も、ラスと一緒に生きたい。狼種の一員でいられて、ラスの隣にいられて・・・・・・本当に嬉しいの」
「ッ、フィオナ・・・・・・!」


 ぎゅっと、抱きしめる腕に力を込める。柔らかく、細く、儚い体。触れるのが、少し怖かった。壊してしまいそうで。オレじゃ、守れなそうで。
 だけど、彼女は見た目ほど儚くはない。オレは、それを知っている。弱いのは・・・・・・オレの方だ。

 すがるように、フィオナを抱きしめる。
 優しくオレを抱きしめ返す腕の優しさに、改めて気づかされる。
 もう、オレはフィオナを失えない。

 ひとりは、嫌だ。
 置いていかないで。
 一人にしないで。
 いつまでも・・・・・・傍にいて。


 そのためなら、オレは強くなれそうな気がするんだ。きっと、どんな残酷なことも、できてしまうくらいに。


 先の見えない未来。世界はまだまだ暗くて、夜明けの兆しすら現れない。
 呪われた黒の伝承を明らかにしていく道筋は、まだ見つからない。隠れて生きることしか、できない。

 それでも、いつかは報われると、ただひたすらに信じて。
 オレ達はたった二人、寄り添い、生き続ける。

 彼女の白い手に揺れた、白い白い花。
 揺らめく蝋燭の光に、ほんのわずか、その白を薄紅色に染めて。

 綺麗に、鮮やかに、咲き誇る。





End.
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めっちゃいい作品!またBWSの作品いっぱい書いてください★
期待してます。
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