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「QuinRose」
アリスシリーズ(パラレル設定)

Witch and Cat(April祭、ボリアリ)

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 魔女にとって、使い魔というのは大事な相棒だ。
 魔術を使うサポートから伝言役、さらには日々の雑用まで、ありとあらゆる面で魔女を支える役割を持つもの。主人を守り、支え、傍に寄り添う獣。それは大概の場合、黒猫の姿をしていることが多い。
 賢く、人の機微に鋭く、危機察知能力も高い。さらには魔術と相性が良い黒猫は、魔女のパートナーとしては最適だ。気まぐれで束縛を嫌う気質の猫を、それでも相棒にと望むのはそういう理由だろう。


「・・・・・・ま、また・・・・・・逃げられた・・・・・・」

 優雅に尻尾を揺らしながら遠ざかる黒猫の姿を見送り、アリスはがくりと項垂れた。
 これでもう何十回目かの玉砕。黒猫を見つけてはアタックし、あっさり袖に振られて終わり。そんなことの繰り返しで、いつまで経っても使い魔に相応しい黒猫を捕まえられない。ここまで来ると、そこまで自分は猫ウケしない魔女なのかと自己嫌悪さえ覚える。

 黒い三角のとんがり帽子に、同じ色のケープ。そんなハロウィン仮装のような彼女の姿に、横をすり抜けていく人々は不思議そうな目を向けることもしない。見えてはいても認識されない。街の何気ない日常風景の一部として、見逃される。
 人に知られないよう、違和感を持たれないよう。気配を消しながら、魔法という不思議な力を持って長い年月を魔女は生きる。それはたとえ、一人前でなくとも。まだまだ見習い魔女のアリスも、同じことだ。


「やっ、アリス。今日も苦戦してるじゃん」


 ぽんと肩を叩かれ、アリスは恨めしそうに振り返る。普通の人間には意識されないアリスに、平然と声をかけてくる相手は限られる。
 猫のような金色の瞳に、目が覚めるようなショッキングピンクの髪。一見すると派手めな美青年のように見えるが、その頭には髪と同じ色の猫耳がぴくぴくと動いている。ご機嫌に揺れるピンクの尻尾が視界に入り、苛立ちまぎれに思いっきり引っ張ってやりたいという衝動をアリスはなんとか押し込んだ。

「・・・・・・ボリス。見てたの」
「うん、バッチリ。まったく、アリスも頑固だよなあ。いつまでも捕まえられない黒猫に拘らないで、いい加減に俺を使い魔にすればいいのに。俺がそんじょそこらの猫なんかに負けないくらい役に立つこと、知ってるだろ?」

 面白そうなその笑みに何となく腹が立って、アリスは差し出された手を無視して立ち上がる。ワンピースの裾を軽く払っていると、これ見よがしな溜息と「本当に意地っ張りだよなあ」などとぼやく声が耳に入ったが、それは聞こえないフリをした。
 彼、ボリスはアリスの使い魔だ。ただし、正式なものではなく、あくまでもその「使い魔」という肩書の後ろにはカッコで「仮」の文字が入る。ボリスは正式な使い魔となることを望んでいるのだが、アリスがそれを許さないのだ。
 別にボリスに不満があるわけじゃない。彼が自信満々に言うとおり、彼は他の「使い魔」として選ばれる猫に比べてありえないほど優秀だ。普通、魔女の使い魔として選ばれた猫は人型を与えられ、魔女の手伝いをする。人間と同じように話し、考え、魔法を使う・・・・・・それだけの能力を持った優秀な猫は、黒猫の中でも限られる。

 魔女なら誰でも、こんなに優秀な使い魔を持てたことを手放しで喜ぶほどに、ボリスは飛びぬけた才能を持った「猫」だ。それはアリスも認めている。
 ・・・・・・それが、普通の「猫」なら、アリスだって彼を迷わず使い魔にしていた。


「なんで、俺じゃダメなんだよ」
「あなたじゃ、正式な使い魔とは言えないからよ。普通の猫じゃない、黒猫じゃない・・・・・・そんなの、魔女の使い魔として認められないわ」


 拗ねたように唇を尖らせるボリスから視線を外し、アリスは首を振る。
 そう、彼は普通の猫じゃない。ボリスの正体はピンク色の猫・・・・・・アリスが幼い頃にクレヨンで描いた「絵の猫」が、暴走した魔法によって具現化してしまったものだ。
 魔力によって生まれ、魔力によって生かされている、いわば「精霊」に近いもの。普通に生きている獣とは、訳が違う。

「使い魔っていうのは、命ある獣に自分の魔力を与えて従わせることで初めて認められるの。正式なやり片がちゃんと決まっているっていうのに、魔女の私がそれを曲げるわけにはいかないでしょう」
「正式なやり方だかなんだか知らないけど、そんなの気にすることないと思うけど・・・・・・アリスって、本当にまじめだよね。俺がなるって言ってるんだから、俺にしとけばいいのに・・・・・・」

 納得がいかないと言うように、ピンク色の尻尾が不機嫌そうにパタパタと動く。纏う服は黒でも、その毛並は隠せない。普通の猫ではありえない、ショッキングピンクの毛並。
 蛍光塗料のペンキで塗られたわけじゃない。彼のそれは、現実ではありえない色だ。ボリスは、現実には存在しない生き物。「生きている」と呼んでいいものかわからないほど・・・・・・。

(生きてる、でしょ・・・・・・?ボリスは、ちゃんと生きているわ)

 痛む胸に、そっと手を当てる。
 人の感情に敏いボリスに気付かれないよう、アリスはそのまま歩き出した。すぐに後を追いかけてくるもう一つの足音に、ホッとしながら。



 幼いアリスが絵に描いた猫を本物にしようと思ったのは、飼っていた子猫がいなくなってしまったからだ。ずっと傍にいてくれた小さな友達がいなくなってしまったことが、寂しくて悲しくて。父親の書庫で見つけた古びた本に記されていた「描いたものを具現化する魔法」を、見よう見まねで実践しようと、今思えば実に馬鹿なことを思いついてしまった。
 黒のクレヨンだけがどうしても見つからず、仕方がないから一番好きなピンク色で、猫を描いた。会えると信じていた。ただ純粋に、「友達」に会いたい、それだけだった。

 結局、アリスの未熟な魔法は、数々の不安定要素を巻き込んで暴走し、失敗した。
 偶然が重なって生まれたのは、猫でも人間でもない存在。アリスの不完全な魔法によって生まれ、他人の魔力を喰らって生きる、自然の法則から外れてしまった生き物。

 「ボリス」と彼が名づけられ、アリスと共に過ごすのを許されるまで、紆余曲折はあった。魔女や魔法使いの誰もが彼を「生まれてはならなかったモノ」と呼び、早々に消すべきだと主張した。数多くの反対意見を押し切った今でも、ボリスのことを知る人は相変わらず侮蔑の眼差しを向けてくる。
 だけどアリスには、とてもボリスが「生きていない」とは思えない。

 アリスの前に初めてボリスが現れた時、彼は子供の姿だった。アリスと同い年くらいの、しかし中途半端に猫の耳と尻尾がついた、人間に似て人間ではない子供。初めて出会った時の彼は、何もわかっていない顔をしていた。自分の存在も立場も状況も、何もわからないようにきょとんと目を瞬かせて。
 大人の蔑む声も、聞くに堪えない暴言も、顔色ひとつ変えずに不思議そうな目をしていた彼を見た瞬間、アリスは彼を守ろうと決めた。自分の勝手な願いで、未熟な力で、仮初の命を与えられて、そしてまた身勝手な大人の言い分に殺されそうになっていた彼の、傍にいること。それこそが、アリスのできるボリスへの償いだと思った。
 それから、もうボリスとは10年ほどの付き合いになる。アリスが成長するのと同じよに、ボリスも成長した。アリスより小さかった掌は、今はもうアリスの手を包み込めるほどに大きい。背だってすっかり伸びて、力も強くなって・・・・・・。


 何も、変わらない。
 ボリスは、普通に「生きている」アリスと何も変わらず、ちゃんと生きているのに。


「・・・・・・はあ」

 ひとつ溜息をついて、アリスはベッドの上にごろりと横たわった。
 当たり前のようにアリスの部屋にまでついてきたボリスが、ベッドに腰かける。ぎしりと小さく音を立てたスプリングに、視線をそのままボリスの方へと向ける。
 上から覗き込むようにして、金の瞳がじっとアリスを見つめ返した。

「ねえ、アリス。何か悩んでる?」
「悩んでるわよ。黒猫はなかなか捕まらないし・・・・・・」
「そうじゃなくて。悩んでるっていうか・・・・・・何か、怖いことでもあった?」

 するりと伸ばされた手が、アリスの頬をなぞる。その温もりに不思議と安心し、同時にものすごく心臓がうるさく高鳴る。
 ボリスの存在は、アリスにとって当たり前だった。10年間。考えてみればそれだけ長い時間を一緒に過ごしてきた。ずっと、傍にいた。今更、いない方が不自然なほど、ずっとずっと。

 考えもしなかった。いなくなる可能性、なんて。

「・・・・・・何でもないわ」
「俺には言えないこと?」

 咎めるように、頬にあてられていた手が軽く爪を立てる。
 そういうわけじゃない、と軽く頭を振り、アリスはそっとその手に自分の手を重ねた。
 ボリスは、アリスを慕ってくれる。構って欲しい時には甘えて、でもたまにフラフラといなくなったりと猫そのものの性格の彼だけれど、アリスを置いていくことは絶対にしない。アリスが寂しい時には、隣に寄り添ってくれた。泣き言を言いたいときは、いつも黙って聞いて、その後に大丈夫だよと笑って慰めてくれた。

 本当は、ボリス以上の「パートナー」なんて、考えられない。
 アリスにとっての使い魔は、ボリスであって欲しい。

 ・・・・・・だけどきっと、いつかあなたは消えてしまうでしょう?

 言えない言葉をぐっと飲み込む。考えなかったわけじゃない。でも、見ないフリをしていた。
 今更、こんなにも怖くなってしまったのは、きっと・・・・・・。


「アリス」
「・・・・・・ボリス?」
「腹、減った。喰わせて」


 唐突に近づいた顔が、そっと囁く。
 肉食獣にも似た金色の瞳が、アリスの姿を映しだす。そっとその瞳から逃げるように目を閉じて、アリスは近づいた唇を受け入れた。

 恋人同士のように甘く触れあわせても、そこに含まれる意味合いはそんなものではない。二人にとっての日常行為であり、ボリスにとっては生きるために必要なことだ。
 彼はこうして、アリスに口移しで魔力を「食べ」させてもらってしか、生きられない。
 魔力が集まってできた「幻」と言ってもいい存在のボリスは、こうして食事をするように誰かから魔力を奪わなければ、存在していられない。不完全な魔法で生み出されたボリスの体は、魔力が集まってイメージを実体化させているに過ぎない。
 体を形成する魔力が消えれば、ボリスは消える。

 アリスは、それが怖い。
 ボリスを使い魔にすれば、彼はアリスのために魔力を使う。ボリスにとってそれは、自分の命を削るのと同じ意味だ。彼が、消えてしまうということだ。


「・・・・・・アリス、大好き」


 唇をあわせながら、囁かれる好意の言葉。
 ボリスだってわかっているはずだ。自分が使い魔になれば、どうなるかくらい。それなのに彼はアリスの使い魔になりたいと言う。使い魔になって、アリスのために役立って、傍にいたいのだと願う。
 アリスのために役だって、それで死ねるなら幸せだなんて、なんでもない顔で笑う。


「私は・・・・・・っ、嫌いよ」
「うん。でも、突き放さないよね、俺のこと。アリスがいないと俺は死ぬから、アリスは傍にいることを赦してくれる。それでいいよ。傍にいてくれるなら、嫌いでもいい」


 嫌い。嫌いだ。傍にいたいと言いながら、死んでもいいなんて笑顔で言う。置いていかれる側の気持ちなんて何も考えていない。好きだと口にするくせに、いつかその時がきたら躊躇いもなく姿を消してしまうのだろう。
 そんな身勝手な猫を、いっそ嫌いになれたらよかったのに。
 泣き出したい気持ちを堪えながら、アリスはぎゅっとボリスの背中に腕を回した。




 これは、優しい魔女と独占欲の強い魔物のお話。

 魔女は知らない。自分にかけられた呪いのことを。
 どんなに頑張っても、彼女は猫を「使い魔」にすることはできないだろう。彼以外の「使い魔」を持たないよう、魔物が呪いをかけたことなんて、思いもしないのだろう。

 魔物が欲しいものは、彼女の傍に永遠にあり続けるための理由と安心。
 心優しい魔女は、「彼」の命を見捨てられない。彼女がいなければ生きていけないからこそ、彼女は魔物から離れられないから。
 それでいい。永遠に傍にいるためなら、彼は自身の命も彼女の優しさも利用することを躊躇わない。

 「使い魔」になれば、ますます彼は彼女なしで生きることが難しくなる。
 それでいい。それでこそ、彼の望みなのだから。


 一緒にいたい、傍にいたい、離れたくない。

 同じ願いを抱きながら、真逆の方向を向く二人。

 彼らが「答え」を見つけ出すのは、まだまだ先の話。





End.
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