スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←エターニアワールド(ウキョウ、シリアス) →悪い子はお仕置き
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
総もくじ  3kaku_s_L.png ネオロマ
総もくじ  3kaku_s_L.png QuinRose
総もくじ  3kaku_s_L.png オトメイト系
総もくじ  3kaku_s_L.png リジェ系
もくじ  3kaku_s_L.png その他
総もくじ  3kaku_s_L.png お題もの
  • 【エターニアワールド(ウキョウ、シリアス)】へ
  • 【悪い子はお仕置き】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「オトメイト系」
AMNESIA

幸福道(ウキョウGoodエンド後)

 ←エターニアワールド(ウキョウ、シリアス) →悪い子はお仕置き
 名前を呼ばれて振り返ると、デジカメを片手にウキョウがにこりと微笑んだ。
 シャッター音は聞こえなかったけれど、確実に今写真を撮られたと気が付いて、少女は呆れたという風に溜息をつく。こんな風に不意打ちで撮られたり、隠し撮りされることに慣れてしまったことが、何だか微妙だ。


「もうっ、急に撮らないでってば。絶対今、変な顔してた・・・・・・」
「そんなことないって。すごくいい写真が撮れそうだったから、ついシャッター押しちゃったんだよ。君はいつも撮りがいのある表情を見せてくれるからさ」


 それに君はいつも可愛いよと臆面もなく告げられ、彼女は慌てて赤くなった顔を俯かせる。こんな風にストレートな好意を不意打ちで口にしてくるものだから、本当に困ってしまう。
 決して嫌なわけじゃない。ただ、ウキョウはいつも真っ直ぐな瞳で、嘘のない笑みを見せながら、そう言ってくるから・・・・・・・なんだかすごく、恥ずかしいのだ。

「わ、私よりもほらっ、この景色!すごく綺麗な紅葉じゃない?今年は異常気象だったけど、こんなに早く真っ赤な紅葉が見られるんだったら、ちょっと得した気分になるね」

 わざとらしく声をはしゃがせて、彼女は頭上に広がる紅と黄色の木々を見上げた。はらりと時折舞って落ちる紅葉が地面に降り積もり、上も下も明るく彩られていく光景は、まさに紅葉のトンネルといった風情だ。
 本来のシーズンよりはかなり早いけれど、今年はもう紅葉が見どころだと聞いた話を信じてよかった。大学生には夏休みでも、世間一般的には「平日」にあたる今日は、シーズン外のことも相まって人はほとんどいない。
 日帰りでウキョウと遠出しようって誘ったのは正解だったな、と彼女は満足して笑う。一見しただけで見惚れてしまうほどの綺麗な風景。写真家のウキョウにとってみれば、絶好の撮影スポットなのではないだろうか。

「・・・・・・・うん、そうだね」
「ウキョウ?」

 予想に反してどこか歯切れの悪い答えに、少女はウキョウの方を振り返る。
 さくさくと紅葉を踏み分けて隣に立った彼は、先ほどの彼女と同じように頭上を見上げる。エメラルド色の瞳は、ひどく遠くを見つめていた。


「そうだね・・・・・綺麗だ・・・・・世界がこんなに綺麗だったなんてこと、久々に思い出せた気がする。不思議だな。ちゃんと世界は綺麗で・・・・・空も街も人も、何もかも綺麗だって思ってたから、俺は写真を撮るのが好きだったはずなのに・・・・・そんなことも忘れてたんだなんて、今更思い知ったよ」


 独り言を呟くウキョウの腕を、とっさに彼女は掴んだ。
 驚いたように振り返ったウキョウの瞳に、ほっと息を吐く。一瞬、ウキョウがどこか消えてしまいそうに見えたなんて言ったら、彼はちょっと悲しそうに微笑んで、そんなことないよなんて首を振るんだろう。

「あ、ごめん!俺、なんかまた変なこと言っちゃって・・・・・君と折角のデートなんだから、しんみりしてちゃ勿体ないよね!うん、楽しもう。もっと奥まで歩いてみようか?」

 心配させないように振舞うウキョウの手に、少女は自分の指をぎゅっと絡める。
 恋人繋ぎに照れたように顔を赤らめてはにかむウキョウは、もうすっかりいつもの調子に見えたけれど、彼女の頭からはさっき見た遠い目をしたウキョウの姿が消えない。

 ・・・・・・たまに、ウキョウはああやって悔いるような顔をすることがある。

 いつから、とかはよくわからない。不思議なことに、彼女の8月頃の記憶はひどく曖昧で、思い出そうとしても断片的にしか記憶が戻ってこないのだ。
 事故の後遺症だろう、とウキョウは言った。これまた彼女は覚えていないことなのだけれど、8月25日にウキョウと一緒に茗荷大学内で起こった爆発事故に巻き込まれてしまったらしい。幸い2人とも軽症ではあったが、その時のショックで彼女の記憶は混乱してしまった・・・・・らしい。
 本人としては、どうしてか腑に落ちない理由なのだが、実際、彼女の記憶は8月26日以降はハッキリしている。8月頃の記憶が曖昧なだけであって、誰かのことを忘れたり生活に支障があったりするわけでもないので、自然に戻るだろうというウキョウの言葉を信じて気にしないようにしていた。


 でもウキョウが寂しそうな表情をする度、どうしてか忘れてしまったことへの罪悪感が疼く。


 多分、曖昧になっている8月の記憶には何かがある。それを思い出せば、もしかしたらウキョウはあんな寂しそうな顔をしなくても済むのかもしれない。
 だけど思い出せない。忘れたくないことだった、はずなのに。

 とてもとても辛くて怖かったことが、いっぱいあった気がする。
 いつも傍にいて励ましてくれた「誰か」が、近くにいた気がする。
 泣きたくなるほど悲しい真実を知ってしまった気がする。


「・・・・・ねえ、ウキョウは、私のこと、好き?」


 聞かなくても当たり前のことを尋ねずにいられないのは、不安だから。
 そんな大切なこと全部、忘れてしまったような気がするのに・・・・・・それでもウキョウは好きだと言ってくれるのだろうか。
 恋人の抱えている大きな「不安」を癒してあげることのできる鍵が、曖昧になった記憶の中にあるかもしれない。それを思い出してあげられないことが、歯がゆくて仕方ない。ウキョウに「大丈夫だよ」と自信をもって言ってあげられない自分が、悔しくなる。


「好きだよ。きっと君が思っている以上に、俺は君のことが好きで・・・・・・自分でも、ちょっと怖くなるくらい」


 少し驚いたように目を見開きながら、それでも迷いない口調で告げられた言葉。
 絡められた指がわずかでも離れないよう、さらに力を込める。彼女に真っ直ぐ向けられるエメラルド色は、周りの紅葉の中で綺麗な宝石のように揺らめく。嘘なんて欠片も見えない、素直に彼の想いを信じられるほどに真摯な・・・・・・。

「私は・・・・・・ウキョウに何もしてあげられないのに?」
「え?」
「ウキョウが好きでいてくれるの、ちゃんとわかってる。私だってウキョウのことが本当に本当に好きで、大事で・・・・・一緒にいたくて。だけど私は、ウキョウの不安を取り除いてあげることできないんだね・・・・・・私といると、いつもウキョウは不安そう」
「っ、そんなこと・・・・・!!そんなこと、ない・・・・・そんなつもり、ないよ」

 ウキョウの言葉が、吹き抜けた風に溶ける。足元で紅葉がカサカサと音を立てて流れていくのを見送って、彼女は首を振った。
 そんなことある。ウキョウは、彼女といるといつも幸せそうで嬉しそうで・・・・・・それと同時に、不安そうだ。

 気が付いていないとでも思っているんだろうか。例えばデートの別れ際、いつも彼は不安を瞳に宿しながら「また明日」と言う。恋人とちょっとの間でも離れがたいとか、そういう感情ではなくて、もっと根深い恐怖心に縛られているような。
 「また明日」が来ないかもしれない、もう二度と会えないかもしれない・・・・・ウキョウ自身が、自分の言葉を信じられていないようにも見えるのだ。
 それだけじゃない。彼は、彼女が怪我をしたり危険に遭うかもしれない場所や出来事を嫌がる。少し過保護なまでに気にする姿に、違和感を感じたことも何度かある。


「私は、ウキョウに何ができるの?どうすれば、ウキョウは安心してくれる?わからないから・・・・・・教えて。ウキョウは、何が怖いの?」
「・・・・・・君は、本当に・・・・・時々困るくらい、真っ直ぐだよね」


 苦笑を浮かべたウキョウが、軽く繋いだままの手を引いて少女と正面から向かいあう。空いたままの手で、彼の手がそっと頬を撫でる。
 わずかに屈んで彼女としっかり視線を合わせ、真剣な表情でウキョウは口を開いた。


「それじゃあ・・・・・傍にいて、ずっと。それだけでいい。それだけで、俺は安心できるから」


 ふわりと唇が軽く触れ合う。
 柔らかい感触を確かめるように、何度か触れては離れるキスが落ちた。おままごとのような可愛らしいキスが少し物足りなくなる直前で、ウキョウの顔が離れる。
 その代わりとばかりにしっかりと抱きしめられ、互いの温度が服越しに伝わる。少女の肩口に顔を埋めたウキョウが、ゆっくりと息を吐いた。

「愛している。こうして君が俺の傍にいて、生きて、俺のこと真っ直ぐに見てくれて、しかも同じ想いを返してくれる・・・・・・すごく嬉しくて幸せなんだ」
「うん」
「だから、俺はどうしても怖くなるんだよ・・・・・夢、みたいだから。また今の時間が壊れてしまったら、俺はきっと今度こそ耐えられない。壊れて、戻れなくなってしまうかもしれない」
「・・・・・うん」
「君の写真を撮っちゃうのも、君が綺麗だからついシャッターを押しちゃうっていうのもあるけど・・・・・本当は、君がここにいるっていう証拠を形に残したいんだ。温もりを感じて、安心していたくて、いつもいろんな理由をつけては君に触れて・・・・気が付いてたかな?」

 顔を上げずに紡がれる言葉に、彼女は片手でウキョウの頭をそっと撫でた。
 自分より年上で背も高い男の人。それなのにたまに、小さな迷子の子供のように見えてしまうのはどうしてだろう。抱きしめられずにいられなくなる。安心させてあげたいと・・・・・強く願ってしまう。


「ごめん。君を不安にさせて。君は何にも悪くないよ。ただ、俺が・・・・・どうしようもなく、弱い、だけだから」


 謝罪の言葉が聞きたいわけじゃない。少女は必死で首を振った。
 ウキョウがどうしてそんなに「今」を信じられないのか、それは彼女にわからないままだ。彼はどうしても、消えてしまったはずの彼女の記憶について、教えてくれない。思い出してほしくないと、むしろそう思っているようにも見える。
 いつか教えてくれるのかもしれない。話してくれるのかもしれない。
 けれどその時がくるまでは、ウキョウの不安に本当の意味で寄り添ってあげることはできない。・・・・・・そんな自分は、とても無力だ。

 だけど。


「私は、ここにいる」


 頭を撫でていた手をそっとウキョウの背に回し、あやすように撫でる。
 弾かれたように顔を上げた彼を真っ直ぐ見つめ、彼女はありったけの想いをこめて告げた。

「夢じゃない。ウキョウが信じられないなら、私が何度でもそう言うから。こうやって手を繋いで、抱きしめて・・・・・・ウキョウが安心できるまで、何度でも言ってあげる。夢じゃないよ、ちゃんと私もウキョウもここにいる・・・・・私を信じて」

 大事な記憶を忘れて、彼の孤独と不安を分かち合ってあげられない恋人だけど。
 それでも彼が、傍にいてほしいと望んでくれるなら。
 それだけで安心できると、言ってくれるのなら。

 ・・・・・・誓うよ。絶対に、この繋いだ手を離さないと。
 大切なものの傍にいるから、と。


「ウキョウは、幸せになっていいんだよ」


 怖がらないで。罪悪感なんて持たないで。
 世界があなたの幸せを許さないと言ったとしても、私だけはあなたの幸せを許そう。幸せになっていいんだよと笑おう。


 ありがとう、と少しの涙声で呟いたウキョウの顔が、再び近づく。

 先ほどより深く重なった唇を、彼女はそっと目を閉じて受け入れた。





End.
関連記事
スポンサーサイト


総もくじ 3kaku_s_L.png ネオロマ
総もくじ 3kaku_s_L.png オトメイト系
総もくじ 3kaku_s_L.png リジェ系
総もくじ 3kaku_s_L.png お題もの
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
総もくじ  3kaku_s_L.png ネオロマ
総もくじ  3kaku_s_L.png QuinRose
総もくじ  3kaku_s_L.png オトメイト系
総もくじ  3kaku_s_L.png リジェ系
もくじ  3kaku_s_L.png その他
総もくじ  3kaku_s_L.png お題もの
  • 【エターニアワールド(ウキョウ、シリアス)】へ
  • 【悪い子はお仕置き】へ
  • Tag List 
  •  * |

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【エターニアワールド(ウキョウ、シリアス)】へ
  • 【悪い子はお仕置き】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。