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「オトメイト系」
AMNESIA

どんなに後悔したって、もう。(悲恋、ケントBAD「綺麗な夜景だろう?」後)

 ←格闘すること3時間 →アイ ワナ(トーマGoodエンド後)
 響き渡る拍手を背中に、壇上を降りた。そのまま舞台袖へと下がる。何人かが賞賛らしき声をかけてきたが、それらを全て振り切って一人の男の元へ歩み寄る。
 涼やかな蒼い瞳が、少し同情するように細められた。

「・・・・・・・なにか連絡は?」
「特になにも。まあ、逆に言えば容体が悪化した、みたいなことにはなっていないってことだろうし・・・・・・大丈夫だと思うよ」

 手元の携帯を軽く振って見せるその仕草に、ホッと息を吐く。それでも胸の中、ざわざわとした感覚は消えうせない。
 本当は今すぐにでも駆け出したい。軽傷だと聞いていても、この目で無事な姿を見るまでは安心することなんてできない。抱きしめて、名前を呼んでもらって・・・・・できることなら、笑ってほしい。彼女の笑顔が自分に向けられる、その幸せを知ってしまった今となっては、あの笑顔が失われることが何より怖い。

 ・・・・・・・それでも。
 それほど大切で、好きだと強く感じられても。
 自分の夢を捨てられなかった私は、今、ここにいる。

 事故に遭ったと聞き、彼女の傍に行くか学会へ出席するかの選択を迫られた時。本当は、何もかも投げ出して彼女の元へ行こうと思った。交際している女性が車に轢かれ、病院に運ばれたなんて・・・・・恋人だったらきっと、すぐに駆けつけるのが正解だったのだろう。
 だけど、彼女はきっと喜ばないと思った。
 私の人生にとって、この学会がどれほど重要か彼女は理解してくれていた。学会を放り出すなんてと怒るだろうし、あとで自分を責めてしまうかもしれない。

 ・・・・・・いや、きっとそれは口実だ。軽傷だから大丈夫だろう、とか、そんなものもきっと全部言い訳にすぎない。
 私はただ、彼女から逃げたかっただけなのかもしれない。
 怖いのだ、と思う。私に笑いかけてくれるようになった彼女が、また私を嫌う瞬間を見たくない。穏やかに話ができる心地よさを、好きだと返してもらえる幸せを・・・・・・知ってしまったから、余計に。
 いつ戻るともしれない彼女の記憶。


 私を憎んでいた・・・・・・嫌っていた頃の記憶。
 彼女がそれを思い出してしまうのが、怖い。そんな瞬間を見たくない。
 こんなに会いたいのに・・・・・・会いたくない、など。我ながら随分矛盾した気持ちだ。


「で、どうする?学会はとりあえずもうすぐお開きだけど、確か強制参加の親睦会があったでしょ。出ないとマズイけど、事情を話せばもしかしたら・・・・・」
「・・・・・・・いや。念のため、親睦会にも少し顔を出しておかなければ。この学会は世界中から著名な学者も観に来ているんだ。学者としての道を選ぶのであれば、ここでの機会を不意にするわけにはいかない」
「そう。ケンがそれで決めたのなら、僕に何も言うことはないよ」
「・・・・・・・・すまない」
「僕に謝ってどうするの。あの子に言ってあげなよ。今日は面会時間間に合いそうもないし、明日一番に病院行ってさ」

 軽く肩を叩くイッキュウに苦笑を返す。
 明日、と言葉を口の中で零した。


 ・・・・・・・明日。明日、会ったら。
 彼女は、許してくれるだろうか。


 こんな薄情な恋人を見て、なんと言うだろう。これまで通り笑ってくれるだろうか。それとも前と同じように、私を嫌うだろうか。
 恐怖感が胸を締め付ける。やっと手に入れたと思った、穏やかな時間。望んで、でも諦めていた・・・・・・不思議な、恋という感情。失いたくない。あの幸せが消えうせるくらいなら、彼女の記憶が一生戻らなければいい。


 記憶を取り戻した彼女に、会いたくない。


 それはほんの微か、頭をよぎった願い。
 いつかの時と同じ・・・・・彼女が私に「大嫌い」と告げた、あの日。ふと願って・・・・・望まない形で叶ってしまった自分の中の醜い気持ち。
 ・・・・・・どうして、そんな願いばかりが叶うのか。悪魔がこの世にいるとでもいうのだろうか。


 私はまた、後悔することとなる。
 その日の深夜、イッキュウからかかってきた電話は、私の心を凍らせた。

 ―――私は一生、あの願いを後悔する。





 白い部屋。窓も何もない、薄暗く寒いだけの無機質な部屋。
 微かに漂う線香と消毒液の匂いが鼻につく。
 中央に置かれた台は白で覆われていた。微かに膨らむそれは、人ひとり分の形を保っていたけれど、白い布に覆われたその下には誰がいるか、など理解したくなかった。

「・・・・・・見ないであげた方がいい」

 誘われるように中央へと足を進めた私に、イッキュウが声をかける。部屋の入り口近くに背を預け、彼は少し疲れたように首を振った。

「飛び降りだろう、って。頭から落ちたみたいで・・・・・顔はかろうじて綺麗だけど、多分彼氏には・・・・・ケンには、あんまり見てほしくないと思うよ」

 女の子って、そういうもんだと思うと悲しそうに告げる男から目をそらし、そっと胸の上に組まれた手に触れた。
 傷だらけの手。小さくて、そして冷たく固い。違う、と脳が頑なに事実を拒否する。


 違う。こんな手は、知らない。
 彼女の手は確かに小さかったけれど、もっと暖かくて優しくて、白くて傷なんてないくらい綺麗で・・・・・・触れただけで心臓が痛くなるほどに緊張して、それなのにもっと触れていたいと思う・・・・・・不思議な手、だった。


 震える指で、顔かかっていた白い布を少しだけ捲る。
 色を失った唇と目を閉じたままの、愛おしい人の顔。
 ぞっとするほどに青白く、生々しい傷跡が残るその顔は・・・・・それでもやはり綺麗だと思えた。彼女は、変わらない。今にも目を開けそうなくらい、変わらない。

 ・・・・・・だが、わかっている。きちんと理解している。
 彼女がもう二度と、目を覚ましはしないこと。
 怒りも笑いもしてくれない、こと。



「・・・・・・死んだものは戻ってこない」
「ケン?」
「失敗したと思うのなら、次に活かせばいい。次に・・・・また・・・・・」



 それは、かつて私が彼女に向けた言葉。
 大切な存在を亡くしたばかりの彼女に、無知な私はそう言葉を投げかけた。ただ元気になってほしかった。前を向いてほしかった。励ましの、つもりだった。


 今、やっとわかった。彼女が泣いた理由。


 なんて私は無知だったのだろう。どれほど傷つけたか。どれほど・・・・辛かったか。
 もしここで、私が言ったことと同じことを他の誰かが言ったのなら。「いつか死ぬ存在とわかっていたのだから、いつまでも悲しむな。次の彼女の時はもっとうまくやればいい」なんて言ったのなら。


 私はきっとそいつを、憎むんだろう。



「・・・・・・ま、ない・・・・・・すまない・・・・・すまない、っ・・・・・!!」



 固くなって動かない手を必死で握りしめる。
 私の体温がなくなって構わない。彼女の手に温もりが戻るなら、また笑ってくれるなら、何もいらない。


 あの時、もっと彼女の気持ちを考えられたらよかった。
 あの時、彼女の傍にすぐに駆けつけたらよかった。
 早く謝ればよかった。好きだともっと伝えればよかった。もっともっと大切に優しくしてあげればよかった。

 後悔しても、もう何も戻ってはこない。

 私の謝罪は、もう彼女に届かない。



 一生の後悔に、声をあげて泣いた日。
 私は、初めての恋心を永遠に失った。





End.
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ケントの心の苦しさが痛いほど伝わってきて、初めて泣きました!!!
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