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「オトメイト系」
CLOCK ZERO

ふとした恋の一瞬~円ver~

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 右側が熱い。
 触れそうなほど近くにある体温を意識して、なんだか胸がひどくドキドキする。小学生の頃はさほど変わらなかった身長差なのに、いつの間にか少し見上げなければ視線を合わせられない。こんなに身長が伸びていたことに、今更ながら気が付く。
 傘を持ってくれる手は、少しばかり骨ばって大きい。細くて色白さも相まって、どこか儚くさえ見えていた時期もあったのに、今こうして隣で傘をさしてくれる人は、間違いなく「男」で。
 急に気が付いてしまった異性の部分に、心臓がパニックを起こしたように大騒ぎする。
 傘で守られた範囲の外は、大ぶりの雨がひっきりなしに音を立てているというのに、それさえよくわからなくなってしまう。耳元で鳴り響く鼓動がうるさくて、うまく周囲に注意を払うことができない。

「撫子さん?」

 急にひょいと覗き込まれた顔に、撫子は大げさなまでに肩を揺らす。
 群青色の瞳がものすごく近くに迫り、温もりの急接近に顔がカアッと熱くなるのを感じた。弱視の彼は、小学生の頃からこうしてすごく近くでじいっと人のことを見つめる癖があったけれど、今はそれが心臓に悪すぎる。

「具合でも、悪いんですか?」
「ご、ごめんなさい、そういうわけじゃなくてっ・・・・・!!」

 心配してくれるような色が混じる瞳から何とか離れようと、とっさに一歩後ろに下がる。
 途端に腕を思いがけなく強い力で引かれ、そのまま引き戻された。抱きとめるようにして引き寄せられた距離に、密着する体温に、撫子の思考は停止しかけた。


「・・・・・・それ以上後ろに下がったりしたら、濡れます」
「っ、え、ええ・・・・・そ、そうよね・・・・・」
「あなたを雨に濡れさせたりしたら、央に怒られます。いきなり離れないでください。あなたが風邪をひいたら、央が悲しみます。・・・・・・ぼくも、落ち着かないと思います」
「う、ん・・・・・気を付けるわ・・・・・・・・」


 やっとの思いでそう答えると、温もりが少し離れる。
 そのことにホッとしつつ、どこか寂しさを感じて軽く首を振る。ちらりと横目で見上げた円は、普段とあまり変わりのない無表情だ。意識ばかりしている自分が恥ずかしくて、撫子は手に持ったカバンをぎゅっと両手で抱え込んだ。





 さかのぼること30分ほど前、撫子は音を立てて降りしきる雨を教室の窓から見上げ、途方に暮れていた。
 朝テレビで見た天気予報では午後から大雨としっかり断言していたにも関わらず、家を出る前に見上げた空は綺麗に晴れていたから大丈夫だと傘を持たずに出てしまった。その結果が、コレである。
 もう少し天気予報を信用するべきだったと後悔してみたところで、後の祭り。絶え間なく大粒の滴を落とす空は、しばらく待ったところで止んでくれそうもなかった。

 高校受験対策の夏季補講がある3年生や部活がある生徒以外、夏休み中の学校に来ている人間なんてほとんどいない。
 外部受験を目指す撫子も夏季補講に参加してきたのだが、帰りに少し先生を捕まえて質問していたおかげで帰りが遅くなってしまった。同じ補講に参加していた生徒達の姿はとうになく、誰かに声をかけて同じ傘に入れてもらうこともできない。
 お手伝いさんしかいない家に傘を持ってきてほしいと連絡を入れるわけにもいかず、誰かの忘れ物の傘でも借りられないかと諦めの気持ちを抱きながら昇降口へと向かった撫子は、そこで思いがけない人物を見つけて目を丸くした。


「・・・・・・円?」
「遅いです」


 開口一番にそう言われ、撫子は私服姿の円をまじまじと見つめる。
 遅いと言われたくらいだから何か約束でもしていただろうかと記憶を辿ってもみたが、ここ最近円と二人で待ち合わせするような約束をした覚えはない。兄の央とも約束をした心当たりもないから、央絡みでくっついてきたとかいうわけでもないだろう。

「今日は午後から大雨だと言っておいたのに、央が傘を忘れたんです。だから、届けにきました」
「ああ・・・・・そういうことなのね」

 じっと問うように見つめたせいか、円があっさりと疑問に答えてくれた。確かに円の手には黒い傘が一本ある。この大雨の中、わざわざ傘を届けにくるのだから円の央第一主義っぷりは相変わらず健在だ。
 そこまで考えて、それが一本だけということに撫子は少し首を傾げた。・・・・・・普通、届けにくるのなら自分で差してくる分と央の分で、二本持っているものじゃないんだろうか。
 それに確か央なら、補講が終わるや否や一番に教室を飛び出ていった気がする。昇降口で待っていたのなら、央ともとっくに会っているはずだ。

「えっと、央なら結構前に先に教室出て行ったと・・・・・・・」
「知っています、会いましたから。央は傘を無事に受け取って、先に帰っていきました」
「え、じゃあどうしてまだ円はここにいるの?央と一緒に帰らないなんて珍しいわね。何か用事でもあった?」
「・・・・・・・・・・央が」

 群青色の瞳がわずかに逸らされる。
 少し言いづらそうに言葉を切り、円は手元の傘をぎゅっと握った。

「あなたが、傘を忘れたみたいだから送っていけと・・・・・言ったので」
「・・・・・・央が?」
「はい。そう話しているのを聞いたと言っていました。本当は央があなたに自分の傘を貸すと言っていたのですが、それではぼくが傘を届けた意味がありませんし、央が風邪をひいてしまいます。央に風邪を引かせるなんて、許されないことです。なので、央には先に帰ってもらい、あなたはぼくが家まで送っていくことにしました」

 淡々とした調子で、やや早口に言い切った彼は、ずいと撫子に傘を差しだす。
 反射的にそれを受け取った撫子の手に、円の手が当たり前のように重なる。思いがけなく温かい掌に驚くより早く、そのまま手を引かれた。

「そういうわけなので、今日はぼくと一緒に帰ってください」
「え、ちょ、ちょっと待って円!?だって傘は一本しか・・・・・」
「そうですね。仕方ないので、一本の傘に二人で入るしかないと思います。非常に効率が悪いですが、やむを得ません。少し濡れるくらいは我慢してください」
「い、いいわよ!そんなの悪いもの。私は一人で何とか帰るから、その傘は円が・・・・・・・」
「・・・・・・・・ぼくと一緒に帰るのはいや、ですか?」

 振り向いた瞳が少し不安そうに揺れるのを見て、撫子は口を閉ざす。断ろうとしていた言葉がしぼんでいく。
 ・・・・・・・ずるい、とこっそり溜息をひとつ零す。そんな風に聞かれて、そんな審判を下されるのを待つような祈る目で見つめられて。断れる人がいるなら、お目にかかってみたいものだ。


「嫌じゃ、ないけど・・・・・・・」
「・・・・・・・・そうですか」


 素っ気なくそれだけ言って、ふいとそっぽを向いてしまった円の背中を見つめる。
 繋がれた手に、少しだけ力が込められた気がした。





 ・・・・・・とは言ったものの。まさかこんなに相合傘が緊張するものだとは思わなかった、と撫子はこっそり息を吐いた。
 あんまり意識ばかりしていると顔が赤くなってしまいそうで、あえて俯きがちに歩を進める。アスファルトに当たって跳ねる雨滴を見下ろしながら歩いていると、じっと隣から視線を向けられるのを感じた。


「・・・・・撫子さん、少し縮んでいませんか?」
「え?」


 心底不思議そうに声をかけられ、思わずパッと顔を上げる。
 相変わらずの至近距離に怯みそうになる撫子を他所に、円はわずかに首を傾げながら撫子を見やる。上から下までまじまじと見つめ、そして何を思ったのか、唐突に撫子の頭に傘を持っていない方の手を置いた。

「!?」
「ほら、やっぱり縮んでいます。前はあなたの頭に手を置くのが、こんなに楽じゃありませんでした」
「そっ、それは私が縮んだんじゃなくて、円の背が伸びただけで・・・・・っ!!」
「・・・・・・ぼく、ですか?ああ・・・・・言われてみれば、確かに最近央とも視線が近くなった気がします。自分ではわからないものですね」

 納得したと頷きながら、円は撫子の頭に置いた手をどかしてくれない。それどころか子供にするように優しく撫でられて、撫子の顔が一気に赤くなった。
 かと言って急に後ろに引いたところで、先ほどのように抱き寄せられる結果になるのも困ってしまう。今でさえ心臓がパニックを起こしそうなほどだというのに、これ以上情けない姿をさらしたくない。
 こんな落ち着かない気持ちのまま帰るくらいなら、濡れて風邪を引くハメになってもいいから、大雨の中を一人で走って帰ってしまいたいくらいだ。

「ま、円・・・・・その・・・・な、何で頭を撫でてるの?」
「・・・・・・さあ」
「さあって・・・・・・」
「よくわかりません。でも、どうしてかこうしていると気分がいいです。それに、少し楽しいです」

 楽しいと言われる意味がわからなくて、少し首を傾げてみる。
 円の口元が静かに上がる。不意打ちの綺麗な微笑に、撫子の心臓がとくんと大きく跳ねた。


「こうして触れると、あなたの面白い顔が見られるので・・・・・飽きません」


 どこか意地悪く、けれど愛しいものを見るような目で見つめて告げられた言葉。ぽかんとした自分の顔を相手の瞳越しに見つめているうちに、円が堪えきれないというように小さく笑った。
 ハッと我に返った撫子は、慌てて円の手を振り払う。ただからかわれていただけと気がついて、恥ずかしいやら腹立たしいやらの気持ちになる。

 もうこの際、雨が降っていることなんてどうでもいいとばかりに先に歩き出そうとした撫子は、それより早く絡められた右手によって傘の中へ引き留められた。
 当たり前のように自分の手を包んだ、一回り大きな手。
 伝わる掌の温かさに何度目かわからないほど心臓が高鳴る。それを見抜かれたくなくて撫子はわざと怒ったように眉をつりあげてみせたけれど、逆に円は面白そうな笑みを深めただけだった。


「・・・・・・離してよ」
「嫌です。さっきも言いましたが、あなたを雨に濡れさせて風邪を引かせたら、ぼくが困るんです。だから大人しく、傍にいてください」


 ぎゅっと握られた手とわがままな言い分。
 二人で差す傘の向こうは、止みそうもない雨の気配。

 しょうがない、と心の中で呟きながら、撫子は掴まれた手をそっと握り返した。
 止むことのない胸のドキドキは、多分気のせいだと言い聞かせて。





End.
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