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「QuinRose」
Clover's Little Girl Story~パパは心配性~

最強最悪、到来~中編~

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 アクア、と。
 聞き慣れた声で呼ばれ、少女は顔を上げた。

 光と色彩が不思議な明滅を繰り返す空間がどこまでも広がる世界。しんと静まり返ったその場所には、ぽつりとたたずむ幼い少女以外の姿は見えない。けれどアクアは心底ホッとしたように表情を緩ませる。「ナイトメア様!」と叫んだ声が、反響しながら世界に響いた。
 瞬間、溶けだすように空間が揺れる。
 さざめきのような一瞬の揺らめきが収まるのとほぼ同時に、顔色の悪い男がふわりとその場に姿を現した。


「アクア!よかった、無事だったようだな」


 夢を渡ってきたナイトメアはひとつ息を吐くと、アクアを優しく抱き上げた。
 ぎゅっとしがみついてくる少女の黒髪を撫でながら、その心の中のぐちゃぐちゃな声を聞きとろうとじっと灰色の瞳を向ける。混乱と不安で端的にしか見えないアクアの心の声からいくつかの情景を読み取った彼は、難しい表情を浮かべて頭を振った。

「・・・・・・アリスと一緒では、ないのか。そうか。それは心配だな」
「・・・・・・」
「っ、まさかアクア・・・・・・ハートの騎士と一緒なのか?はあ・・・・・・そうか。これは、厄介だな。いろいろな意味で」

 夢の空間を仰ぎ見遣り、ナイトメアは今この場にいない部下とその妻のことを思った。
 引っ越しが起きたのは、ほんの1時間帯前のこと。それ自体は珍しいことでもなければ、驚くことでも騒ぐことでもない。問題だったのは、ちょうどその時間帯、アリスとアクアが二人だけで外に出かけていたことだ。
 二人が弾かれるという心配はしていない。いくらアリスが余所者とは言え、今はもうグレイの家族であり、クローバーの塔の一員だ。彼女の居場所は、確定している。

 ただそれでも、引っ越しはさまざまなものが不安定になる。

 土地が不安定になれば、その上に息づく生き物たちもまた然り。
 ただでさえアリスとアクアは、この世界で力を持たない存在だ。二人きりにしておくにしては、引っ越し直後の不安定さは、あまりにも危険すぎる。

 引っ越しが起きた時のグレイの慌てぶりは、大変なものだったなと彼の上司は小さく溜息を吐く。普段腹の立つほど心の読めないグレイが、あの時は落ち着かない気持ちがダダ漏れだった。あまりにも落ち着かないものだから、見かねて、二人を迎えにいく指示をグレイに出したくらいだ。
 脱兎のごとく飛び出していった長身の背中を思い出す。気持ちはわからないでもない。ナイトメアでさえ、こうして夢の中から二人を探してみるくらいには心配なのだ。グレイからしてみれば、溺愛している妻と娘の姿が傍にいないことは、いてもたってもいられないのだろう。

 けれど、今は、行かせてしまったことに若干不安を覚える。

「あいつがキレないといいんだがな」
「?ナイトメア様・・・・・・」
「いや、なんでもない。アクア、もう少し頑張れるか?」

 不安そうな少女の瞳を真っ直ぐに見つめ、ナイトメアは言い聞かせるように微笑む。
 涙の溜まる幼い子供を放置しておくのは心配だが、今のナイトメアには何もできない。夢の支配者である彼には、アクアがそろそろ夢から目覚める頃合いだとわかる。目覚めを留めることは、よほどのことがない限りはできない。アクアの体が、今現実のどの辺りにいるのかもわからないような状況では、体ごと夢に引き入れてそのまま塔に連れ帰るということもできはしない。
 ナイトメアが今できるのは、アクアが心折れてしまわないように応援してあげることだけだ。

「今、パパが向かっているから。大丈夫だ。ママもきっと、すぐに見つかるよ。だからアクア・・・・・・もう少しだけ、待っていなさい」
「うんっ、ナイトメア様!アクア、大丈夫だよ!」
「・・・・・・いい子だ」

 ぐっと唇を噛みしめ、それでも大きくハッキリと頷いた少女の額に、軽く口づける。
 腕に抱えていた温もりが、ふわりと溶けるように消える。誰もいなくなった空間で、「頑張れよ」と呟く声が、静かに響いた。





 体全体に感じる振動と誰かの体温を感じながら、ゆらゆらと目を開けた。
 いつもより高い視界の先で、薄暗い闇に包まれた木々が右から左へ流れていく。ガサガサと茂みをかき分けて歩く音が響き、視界の端に赤いものが見えた。
 父親に背負ってもらっている時と似た、でもまったく違う背中に、アクアは目をこすりながら体を起こした。煙草の香りがしない代わりに、お日様をいっぱいに浴びた草のような香りがする。爽やかで・・・・・・でもそれだけじゃない、何か鉄の錆びたような不吉な匂いも含んだ、覚えのない・・・・・・。


「お、目が覚めたんだな!」
「!?」


 急にかけられた声に、アクアはびくりと体を震わせる。首を動かして、アクアを背負っている人物が振り返る。
 にっこりと笑ったその顔を見た瞬間、僅かばかり残っていた眠気も吹き飛んだ。目覚める前に起こったことが、一気に脳裏に蘇る。
 警戒の色を隠さないアクアを気にした様子もなく、男は歩みを止めずにずんずんと夜の森を歩いていく。迷いなく前へと進む足取りは、行く先がわかっているようにも思える。・・・・・・歩いている道は、お世辞にも「道」とは呼べないどころか、草だらけの獣道ですらない場所だけれども。

「いやあ、子供って寝るの早いよなあ。さっきまで大騒ぎしていたかと思えば、いきなり静かになって寝ちゃってるし・・・・・・あの状況で寝れちゃうんだから、すごい度胸だよなあ。俺には真似できないぜ、あはは!」

 明るく爽やかに笑う男の背中から、無言でアクアは降りようと試みてみる。アクアの中で、目の前の男は完全に「不審者」と認識されている。あともう少しで家へと帰れるドアがあったというのに、この男のせいで連れ去られた挙句、クマに追いかけられてガケから落ちて・・・・・・これを誘拐犯と言わず、何と言うのか。
 第一、寝たわけではない。命綱なしで絶壁からダイブなんて、まだ5歳になるかならないかのアクアには刺激が強すぎた。あまりの恐怖心に意識が遠のいて、そのまま気絶してしまっただけの話だ。

「あ、こら。暴れないでくれよ。落としちゃうよ?」
「落としたっていいもん、は~な~し~てっ!!知らない人についてっちゃダメって、パパが言ってたもの。アクアはひとりでおうち帰るのっ!」
「そっか、まだ挨拶してなかったよな。ごめんごめん。俺は、ハートの城の騎士、エースだ!よろしくな。ほら、これで知らない人じゃなくなっただろ?」
「そういう問題じゃないもん!!離してってば、ヘンシツシャ!!」
「変質者って・・・・・・ひどいなあ。ほら、暴れないでってば。あんまりうるさいと・・・・・・斬っちゃうぜ?」

 ぴり、っと。
 感じた肌を刺す冷たい気配に、アクアはぴたりと抵抗していた動きを止める。目の前の背中から伝わる雰囲気に背筋がぞわざわと泡だって、思わず息を押し殺した。
 エースと名乗った男の顔は、アクアからはハッキリと見えない。わずかばかり見えた口元の笑みが、ひどく冷たいもののように思えて、逃げ出したくなった。クマと出会って追いかけられた時よりずっと怖い・・・・・・確かな恐怖心が、そこにはあった。

「ははっ、大丈夫だよ!心配しなくても、そのうち降ろしてあげるって。だからもうちょっといい子にしててくれよ、な?迷子同士、仲良く冒険の旅を楽しもうぜ!」

 何事もなかったかのような口調と同時に、緊張した空気が一気に霧散する。
 ばくばくと跳ねる心臓を小さな手で押さえながら、アクアはじっとエースを見つめた。出会った時もそうだった。得体のしれない恐怖心と、唐突に向けられる殺気。そのくせ、次の瞬間には何でもないかのように明るく笑っている。
 ふと、あの時見たエースの瞳を思い出す。
 硝子玉のように紅くて・・・・・・でもどこか底の見えない昏さをはらんだ、あの瞳。とても怖い。怖い、はずなのに。どうしてだろう。目が逸らせないし、放っておけないと、思ったのだ。


「・・・・・・迷子なら、アクアが案内してあげるわ」


 ぼそり、と囁くように。気が付くと、アクアはそう言っていた。
 振動が止まる。流れていた風景が止まる。くるりと背中の少女を覗き込むように、エースが顔を振り向かせた。夜闇を背負った紅い瞳が、子供のようにきょとんと瞬いた。
 不思議なものを見るような視線と、背中の上で居心地悪そうにしている少女の視線が、静かに交差する。ややあって、彼は面白そうに笑った。爽やかに、楽しそうに。

「君が?どうやって?」
「わ、わたし、道案内なら上手にできるもの!ドアを使えばいいの。あのね、アクアはどこにでも、一番行きたいところに迷わず行けるの。だから、ぜったいぜったい迷子にならないのよ。大丈夫だもん!」
「ふうん。ドア、かあ・・・・・・」
「あなたもドアを使えばいいのに。一人で開けるのが怖いなら、アクアが一緒に開けてあげるよ!アクアのママもね、ドアが怖いって言ってたけど、アクアと一緒だったら大丈夫になったんだ!」

 一瞬、ぴくりとエースの肩が揺れた気がした。
 どうかしたのかと顔を覗き込もうとしたアクアは、ふと耳を掠めた囁きに前方を見る。
 夜の帳の降りた森の中では、それをハッキリと確認することはできない。だが、「おいで、こちらへ」と誘う声が、確かにエースが向かう方角から聞こえてきていた。


「それって、アリスのこと?」
「え?」
「アリスも、ドアを開けられる?アリスも・・・・・・もう、迷ったりしないのかな」


 ドアがすぐ近くまであるということに気を取られていたアクアは、エースの問いかけに目を瞬かせる。
 別に何もおかしいことではない。母親のアリスは元「余所者」であり、この世界では誰からも好かれる存在だ。役持ち・役なしを問わず知り合いが多く、その誰もがアリスを慕っていることくらい、アクアにもよくわかっている。役持ちであるらしいエースが、アリスを知っていても不思議ではない、のに。
 エースも同じことを思ったのだろう。微かに横目でアクアを見やり、少し首を傾げてみせた。

「どうしてそんなに不思議そうな顔をするんだ?君、アリスの娘だろ」
「あなたも、ママのこと知ってるの?」
「そりゃあもちろん!アリスとは友達だからね!」

 からりと笑って返された言葉に、アクアは押し黙る。説明のできない違和感が、ぐるぐると胸の中で回っていた。
 どうしてだろう。彼が呼んだ「アリス」の名は、アクアが知っている母親とは違う人物であるように思えた。


 まるで・・・・・・仲間を探しているような響き。


 目の前にいる大きな迷子と同じ。不安定で、いつまでも迷っている・・・・・・そんな誰かを探しているような。
 そんな誰かを、望んでいるような。

 言葉を探しているうちに、ざくざくと草をかき分けていた音が、不意に止まった。
 道とも呼べない草むらを抜け、開けた場所に出たことがかろうじて見える。不意に視界が低くなり、そのままトンと足の裏が地面を踏んだ。
 真っ黒な木陰がぐるりと視界を取り囲み、葉がざわざわと擦れる音に混ざって、四方八方から「ドアを開けて」と誘う声が響き渡る。今が夜の時間帯であることも相まって、それは少しだけ不気味で怖い光景だった。

「どうしたんだ?君の大好きなドアだろう?怖いの?」
「っ、怖くないもん」

 小さく握りしめた手が震えているのを背中に隠し、アクアはむすっとエースを睨む。
 そんなアクアの様子を気にした風もなく、エースは軽く笑う。そしてそのまま、すたすたと手近な木に張り付いているドアへと向かっていった。
 ドアの前で動きを止めた赤いコートに、アクアも恐る恐る近づく。横に立って見上げた彼は、ドアノブを無表情で食い入るように見つめていた。


「そういえば・・・・・・前に、アリスとこうして、ドアの前に立ったことがあったかな」
「え?」
「俺もアリスも、ドアを開けないで、ただずっと立ち尽くしたまま・・・・・・だけどもう、アリスはこのドアを、開けられるんだな」


 エースの口調は、淡々としていた。表情も特に何も浮かばない。
 だけど真実を話すだけといった雰囲気ではない。裏切られて、傷ついているような。なぜだかアクアには、目の前のエースという男が落ち込んでいるように見えた。

「ママは・・・・・・ママは、ドア、まだ、一人じゃ開けられないよ」

 つい、そんなことを口にしたのは、慰めたかったからなのかもしれない。放って置けないと思ったのだ。
 無感情な紅い瞳が、アクアを見下ろす。奥の見えない瞳をまっすぐ見つめて、少女は少し笑ってみせた。

「一人じゃ、怖くて開けられないんだって。でもね、アクアが手を繋いであげるとね、ママも一緒にドアを使えるの」
「君が・・・・・・いるから?」
「うんっ!アクアがいれば、ママは迷わないんだって。一緒に好きなところにも行けるんだよ!だから、ね・・・・・・」

 小さな手を伸ばして、エースの手を握る。
 手袋越しの大きな手が、少しだけ動揺したように震える。だいじょうぶだと言うように、アクアはひとつ頷いた。そのままもう一方の手を、目の前のドアへと伸ばす。ドアはやや高く、アクアの身長では少し背伸びをしなければならなかったが、届かないほどではない。


「一緒に行こう?ママのところ。・・・・・・アクアが、ママを迎えに行ってあげなきゃ。それで、一緒にパパのところに帰るの。迷子は、さびしいもん・・・・・」


 背伸びをして手を伸ばした先に、冷たいドアノブの感触が触れる。それを回すよりも早く、ずっと大きな手がそれを容易く押さえつけた。
 もう一方の手で掴んだはずの温もりが、するりと離れる。
 アクアは後ろを振り向いた。赤いジャケットが、アクアの細い片手を抑える。確かに見上げたはずのエースの顔は、影になって見えない。

「・・・・・・じゃあ、君がいなくなれば・・・・・・アリスは、迷い続けていられるのかな」
「?エー・・・・・・」

 呼びかけようと口を開くのと。
 幼い瞳が、銀色にきらめく刃を視界に映すのと。

 それはおそらく、ほぼ同時だった。

 いつ抜いたかもわからない大振りの剣が、真っ直ぐに少女の喉元に突きつけられる。
 表情の見えない「顔」で、唯一紅く光る瞳だけが、やけに鮮明に焼きつく。

 そこからの光景は、スローモーションのようだった。

 一端離された剣先が、大きく振り上げられる。
 木々の隙間から入り込んだ月光が、大きな剣を冷たく光らせる。
 「ごめんね」と、微かにそんな言葉を聞いたような気がした。


 次に認識したのは、甲高い金属音。


 状況についていけず、目を丸くして固まっていたアクアは、その視界に映るものが「赤」から「黒」に変わっていることに気が付いて、ハッと息を飲む。
 吹き抜ける風に乗って、微かに漂うのは煙草の香り。
 見知った匂いとすぐ傍にある背中に、アクアの目が泣きそうに揺らいだ。


「っ、ぱぱあ・・・・・・!!」
「アクア、無事か!?」


 短剣一本を構えた片手で、振り下ろされた刃を間一髪で受け止めたグレイは、背中にかばった愛娘に視線を投げかける。
 見たところ大きな怪我はしていない様子に安堵を浮かべ、再び対峙する男へと金色の瞳を向ける。一気にその表情が、剣呑なものを宿した冷たいものへと変わった。

「・・・・・・どういうつもりだ、騎士。返答次第では容赦しないぞ」
「やあ、久しぶりだね、トカゲさんっ!大事な娘のピンチに駆けつけるなんて、なんかカッコいいなあ~憧れちゃうぜ、あははは!!」
「ふざけるな。俺は、どういうつもりなんだと聞いているんだ」
「どういうつもりって何が?俺はただ、その子と一緒に壮大な冒険をしていただけだよ」

 何でもないような口調で答えながら、エースは剣を横に振り払う。流れるように一瞬逸れた短剣とグレイの体勢に追い打ちをかけるよう、そのまま返す手で剣を構えなおし、エースがグレイに迫る。が、その剣が黒いコートを捕えるより早く、今度は左手に持った短剣がその猛攻を防ぎ、受け流す。
 夜の森に、金属音が連続した。

 ずるずるとドアのある木にもたれかかるようにして座り込み、アクアは早鐘を打つ心臓を抑えた。先ほど殺されかけたという実感が、頭の片隅をじわじわと浸食していく。父親の姿に安心して緩んだ涙腺が、今にも崩落しそうに揺れる。
 それだけ怖かった。今だって怖い。
 怖い、が。少女はどうしたって、目の前で繰り広げられる戦いから目を逸らすことができなかった。

 赤と黒が、闇を纏って踊る。
 ひどく物騒で、それでも思わず見惚れてしまうほどに流麗な動き。こんなにも目の離せない戦いというものを、アクアは知らない。

 父親であるグレイが戦っている姿は、何度か目にしたこともある。だけどこんなにも苛立ちをあらわに、乱暴な剣筋で相手に向かっていく姿は見たことがない。
 そして、そんな父親の凶暴なまでの剣を爽やかに受け流しているエースにも驚いた。父親と互角に戦っている相手など、一度だって見たことがない。

「人の娘を誘拐しておいて、いい度胸だな××××が」
「ははっ、人聞きの悪いこと言わないでくれるかなあ。俺はあの子に道を教えてもらっていただけだぜ?案内してくれるって言ったのは、あの子だ」
「黙れ、×××騎士。今日という今日こそは、××って×××××××やる、××××」
「品がないよ、トカゲさん。子供の教育に悪いんじゃないかな、あはは!!」

 交わす銀光のあまりの速さに、目が追いつかない。
 アクアは母親譲りの鼓動を紡ぐ心臓を持つ、余所者と同じ存在だ。飛びぬけた身体能力も時間を遅くしたり速める能力もない。あるのは、役割なくして動ける存在意義と顔、そして誰からも好かれやすいという特徴だけ。
 だから目の前の戦いは何が起こっているかわからないし、二人が何を話しているのかも聞き取れない。


「・・・・・・あの子、面白いよね」


 不意にエースがこちらに視線をよこした。
 底の見えない赤が、幼い少女を真っ直ぐに映す。殺されかけた時に闇に浮かんだ光を思い出し、アクアは体を硬直させた。

「余所者と同じはずなのに、初めて会った時、一瞬顔なしの子供かと思ったんだよ。余所者ほどの存在感はない。でもこの世界の住人のようでもない。力も弱くて、すぐ死んじゃいそうだ。あの子の意味なんて、『アリスの子供』っていう、ただそれだけ。すごく、中途半端だ」
「・・・・・・何が言いたい」
「だけど、アリスを縛り付けておくには一番効果的な”役割”を持っている子でもある」

 その言葉に、グレイの視線がより一層鋭いものになる。
 アクアですら感じる怒気と殺気を正面から向けられているだろうに、エースは楽しげだ。浮かんでいるのは爽やかな笑み。でもそれが、ひどく冷たく・・・・・・嘲笑っているかのように見えた。


「トカゲさんがその子を大事にする理由ってさ、結局はアリスを自分の手元に置いておきたいからってことなんじゃないの?」
「・・・・・・っ」
「ねえ、トカゲさん。俺が、あの子をちょうだいって言ったら・・・・・・どうする?」


 挑発するように、試すように投げかけられた言葉の意味が、アクアは理解できなかった。
 優しい父親の笑顔を思い出す。抱き上げてくれる手、頭を撫でてくれる感触、優しい瞳・・・・・・それが頭に浮かぶ。大事に大事にしてくれる父親。大好きな父親。
 それは・・・・・・それは、結局のところ。

「別に一人くらいいいんじゃないかなあ。アリスを繋ぎとめておきたいなら、他に子供作ればいいだろうし。あの子、さすがアリスの子供なだけあって、結構面白いから消しちゃうのも勿体ないかもって、さっきちょっと迷ったんだよね。なかなか将来有望そうな感じでもあるし、今から俺好みに育てておくのも悪くない」
「・・・・・・」
「ああ、それとも代わりにアリスをくれる?もしもあの子のことが大事なんだって言い張るならさ、アリスを俺に分けてよ。トカゲさんばっかり独り占めしてずるい・・・・・・っと!!うわっ!?」
「言いたいことはそれだけか」

 グレイの殺気が比べ物にならないほど鋭さを増したのと同時に、エースの頬に一筋の赤い線が走る。
 ざわりと木々がざわめく。
 引っ越し直後の不安定な風が、森の中を吹き抜けていく。

 ドアの声は、もう止んでいた。
 しんとした緊張感の中、聞こえるのは冷たいグレイの言葉と、明るいエースの言葉だけ。


「クソガキが調子こいてんじゃねえよ。頭かっさばいて、そのどうしようもねえ脳髄ぶち巻かれなきゃ、わかんねえのか?」
「怖い怖い・・・・・・でも、そうこなくっちゃね」


 ざっと互いに距離をとり、にらみ合う。
 殺気が一気に膨れ上がり、緊張が走る。

 次で決まる、とアクアが直感した瞬間。

 赤と黒が、駆け出した。





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