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「オトメイト系」
CLOCK ZERO

ふとした恋の一瞬~寅之助ver~

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 遠くで聞こえるチャイムの音。
 ああまずいと頭の片隅で思いながら、それでも体を動かすことができない。瞼は重く、体はまだこの心地よい微睡みから離れたくないとずるずる覚醒を拒み、起きなきゃいけないという気持ちの反対側でもう少しだけと本能がダダをこねる。

「・・・・・い、・・・・・きろ」

 誰かの呼ぶ声に目を開けようと試みてみるが、僅かにまつ毛が震える程度で終わる。
 眠りに片足を半分以上突っ込んだままの意識は、どうにも思い通りにならなかった。どこか聞き覚えのある声に心の奥で謝りながら、ゆらゆらと夢うつつを漂う。
 もう少しあと5分、と唇を何となく動かした途端に、ムギュッと鼻のあたりが何かで摘ままれる。
 呼吸の手段をひとつ奪われ、少しばかりの息苦しさに自然と眉根が寄る。上の方で、押し殺した笑い声が「だっせー顔」と呟いた。


 さすがに意識が急浮上をしはじめた瞬間。
 鼻をつまんでいた手が離れ、次に柔らかい温もりが口元にそっと落ちた。

 一瞬だったかもしれない。長い時間だったかもしれない。
 寝ぼけた頭の中で、ただ思ったのは、「あったかい」という感想。
 ちゅ、と小さな音を立てて離れたそれを寂しく思うほどに。
 とてもとても、しあわせな温もりだった。


 唇に確かに触れたそれ、は。





「・・・・・・・・・・!!?」

 キス、という単語が脳裏に浮かんだ瞬間、撫子は勢いよく飛び起きた。
 あまりにも急な覚醒についていかなかった視界が、少しぐらりと揺れる。軽い眩暈を起こした頭を軽く振りながら、撫子は青々と広がる空を呆然と見つめていた。

「よお、やっと起きたか」
「と、トラ・・・・・・」

 すぐ隣から、実にいつも通りに話しかけてきた寅之助をまじまじと見つめる。
 先ほど半分夢の中の意識で聞こえた声は、確かに彼の声だった。とすると、最後に感じたあの・・・・・キス、らしきものの正体も・・・・・・・

「あ?なんだよ、妙な顔して。先に言っとくが、起こしたからな、オレは」

 その言葉に慌てて自分の手元に視線を向ける。腕時計の示す時間は、とっくに午後の授業開始を過ぎている。思わず絶望の声が漏れたが、もうあとのまつりだ。
 何でこんな屋上で思いっきり爆睡してしまったのか。生まれて初めての「サボリ」体験に、基本的に中身が優等生な撫子は本気で落ち込んだ。
 平然な顔をしている寅之助を恨めしげに見やる。起こした、とは言っていたけれど、もともとの原因が寅之助にあるので、やっぱりちょっと八つ当たりめいた気持ちを覚えてしまう。

「いいじゃねーか、このままサボっちまおうぜ。お前も共犯」
「うう・・・・・・今日こそはトラをちゃんと教室に連れ戻そうと思ってたのに」
「そいつは残念だな。ま、今さらだろ。潔く諦めろよ」

 中学に進学してからも、寅之助のサボり癖は相変わらずだった。隙あらば屋上で昼寝ばかりし、遅刻早退もいつものこと。そんな彼を、撫子は放っておけなかった。お節介とはわかっていても追いかけて、教室へ戻るように説得する・・・・・それが彼女の日課になりつつあった。
 寅之助は相変わらず気分の上下が激しく、素直に言うことを聞くこともあれば、あの鋭い目でにらみつけられて辛辣な言葉を向けられることもある。そして今日は・・・・・・彼のペースに巻き込まれた。

 いつも通り屋上でサボりを決め込んでいる寅之助を追って、お昼休みに屋上へ上ったまではよかった。そこで絶好の天気日和の下、お弁当を広げ、寅之助に勧められるがまま、行儀が悪いと思いながら寝転がってみて・・・・・そのまま、あまりの心地よさについウトウトしてしまったのが運のツキ。
 今は憂鬱になるくらい見事で気持ちのいい日差しに、恨み言を言ってやりたい気分だ。


「・・・・・・お昼休みはうっかり寝ちゃわないように気を付けてたのに。前も遅刻寸前に理一郎にたたき起こされて、すっごく呆れられたことがあったから」
「加納に?」


 何気なく呟いた言葉に、寅之助の声のトーンが突然下がる。不機嫌そうな顰め面と敵意と言ってもいいほどに剣呑に輝く瞳を向けられ、撫子は少し目を瞬かせた。
 寅之助の機嫌が悪くなるポイントは、よくわからない。中学生にしてはやたらと迫力のある凄みに多少慣れたとは言え、やっぱり直接こんな怒りの感情を向けられると怯んでしまう。
 困惑した様子の撫子から視線を外して舌打ちを零し、寅之助はぶっきらぼうな口調で言い捨てた。

「撫子、お前今度から昼寝禁止」
「え?」
「勝手にそこらで寝るな。どんなに眠くても起きとけ、わかったな?」
「ちょ、ちょっと!私そんなにいつも昼寝したりしていないわ!」

 いかにも毎回どこかで昼寝しているような言い方をしないでほしい、と撫子は少しむくれた。なによりも、気が付けば毎回のように屋上で昼寝かサボりをしている寅之助に言われるのは、すごく不本意だ。
 けれど寅之助はまったく信じていなさそうな顔をして、「ほー」と曖昧な相槌をうってみせる。不機嫌そうな色の消えない金の瞳が、じとりと細められた。

「いいから黙って言うこと聞いとけ。どうしても眠くなったら、オレの目の届く範囲で寝ろ。それならいくら寝てても許してやる」
「そんな偉そうに言われて、納得できるわけないでしょ!それに私だって、したくて昼寝しちゃうわけじゃないわ。あれはついうっかり・・・・・・」
「あ”ー、くそっ、ごちゃごちゃうるせえな!」

 焦れたように吐き捨てた寅之助が、突然ぐいと顔を近づける。
 吐息がかかるほどに近づいた距離に、口をついて出ようとしていた文句が立ち消える。
 薄く開いた唇が視界に入り、急に先ほどの夢見心地で感じたキスのような感触を思い出して顔が熱くなる。いたたまれない気持ちになって、視線を彷徨わせた撫子に、さらに顔が近づけられた。


「・・・・・・オレがいないところで無防備に寝てみろ。次は、あんな優しく起こしてやらねーぞ」


 唇同士が触れ合いそうな距離で囁かれた言葉に、一瞬頭が真っ白になる。
 何を言われたのかを理解する前に寅之助はスッと離れ、すぐ目の前にあった熱も去っていく。何事もなかったかのような顔で撫子の隣に寝そべって目を瞑る彼は、もういつも通りのように見えた。

「・・・・・・・って、え・・・・・ええ!?ちょ、ちょっとトラ、それどういう・・・・・え、まさかアレって夢じゃ・・・・・・」
「知るか。自分で考えろよ、そんくらい・・・・・・ったく、お嬢はこれだから・・・・・鈍いっつーの

 昼下がりの屋上。
 午後の授業が始まったばかりの静かな時間の片隅で、2人の声だけがよく響く。


 ・・・・・・それは、ほんの少しだけ幼い恋が進展した瞬間。





End.
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