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さよならまたいつか(いざ恋、政華、悲恋エンド政宗視点)

 ←ツッコミが追い付かない →終わらぬ夢の眠り姫(いざ恋、信華、悲恋エンド)
 口元へ柔らかく触れた温もりに、愛おしさを覚える。
 目を閉じ、微睡みの意識の中にいてもわかる。俺がただ一人、愛した女。間違えるなどあり得ない。すべてを捨ててでも、共にありたいと願った存在なのだから。

 ふとその温もりが離れる。
 どうしようもない不安が胸をよぎり、引き止めようと手を伸ばした。が、気持ちに反して鉛のように重い体は動かず、指のひとつすら持ち上げることはできなかった。

『・・・・・・さようなら、政宗様』

 悲しみに満ちた言葉が、遠くで響く。
 さっと心が冷える。絶望がひたひたと心臓のあたりから湧き出して、すべてを食らい尽くしていくような心持になる。
 待てと叫ぼうとした喉は、張り付いて動かない。何故動かない。どうして俺の手は、こんな時に愛しい温もりを掻き抱けないのだ。やっと得た幸せが、本当の愛情が、離れていこうとしているのに。どうして、すり抜けていくのを止めることさえできないのか。

(行くな!!嫌だ・・・・・嫌だ嫌だっ、俺は・・・・・・やっと見つけたんだ、ずっと欲しかったものを!!頼むから・・・・・・・おいて、いくな・・・・・・・)

 暗闇の向こう、温もりが去っていく。
 この世の誰よりも愛おしい笑顔が、離れていく。伸ばした手は届かない。ずっとずっと求めていた愛をくれた女・・・・・・傍にいれば、それだけでよかった。あいつだけでよかった。
 それなのに・・・・・・・・欲しいものはいつだって、手元からすり抜けて消えていく。



「っ・・・・・・は、な・・・・・・?」

 まず目に入ったのは、すっかり明るくなった空だった。少しだけ冷たい朝の風が、頬をそっと撫でていく。どうして自分がこんなところで寝ているかわからず、やたらと鈍い頭を必死で働かせる。
 そうだ。確か国へ帰ると言う華に別れを告げるために会いに行き・・・・・華の顔を見ていたら、どうしても諦めることができず、華を攫って城から逃げ・・・・・・そして昨夜は・・・・・・
 瞬間、涙を零して悲しく謝る華の姿を思い出す。口移しで与えられた飴。それをかみ砕いた後、急に睡魔が訪れて・・・・・・・

「華!!!!」

 勢いよく体を起こした瞬間、強烈なめまいに襲われる。おそらくは小十郎が華に渡したであろう飴には、かなり強力な眠り薬が仕込まれていたに違いない。
 左手にあらん限りの力を込める。掌に食い込む爪の痛みが、ほんの僅かに意識を覚醒させてくれた。
 少しふらつく足を叱咤しながら立ち上がろうとすると、しゃらりと音を立てて何かが地面へと落ちる。下草についた朝露をわずかに跳ねさせて転がったそれを、俺は恐る恐る拾い上げた。まるで涙のように朝露を落としたそれは、俺が華へと贈ったぺんだんとの対だった。


「ふざ、けるな・・・・・・!!」


 ぺんだんとを握りしめ、俺は急いで愛馬へと駆け寄り、その背へとまたがった。華が国へ帰るつもりであれば、通る道筋は予想がついている。力を込めて馬の腹を蹴ると、俺の思いを理解してくれたのか、馬は勢いよく駆け出した。こいつが逃がされていないのは、幸いだった。今ならまだ、追いつける。
 これを今生の別れになど、させてなるものか。
 さようならなどと、そんな言葉は聞きたくない。こんなところで手放しはしない。やっと・・・・・やっとこれから、幸せになれるはずだったのに。二人だけで遠くで、誰も俺達を知らない場所で二人きり・・・・・生きていけたら、それだけでよかった。俺の願いは、それだけだ。

 やっとこの手に抱いた温もりを、忘れることなんてもうできない。

 無我夢中で馬を走らせていると、前方に崖が見えてきた。ここからでは、対岸に渡るための木橋だけが道として存在しているはずだ。
 その唯一の道となる橋の対岸に、見慣れた二人の姿を捉えた。

「華!!!!」
「こ、来ないで下さい!」

 俺に気が付いた華が声をあげる。見れば木橋は不安定に揺れ、今にも落ちそうになっている。抜き身の刀を持った小次郎が、静かに俺を見据えていた。
 咄嗟に馬を逆立たせ、橋へと急ぐ。あれを落とされれば、もう俺に追いつく手段はない。

「何故だ、華!!」

 華に思いとどまってほしくて、必死で呼びかける。
 遠目ではあるが、華が今にも泣きだしそうに顔をこわばらせているのがハッキリとわかった。


「共に生きようと約束したではないか!お前の為なら何でもしてやれる!他に何も望まない!!」


 そう、いらない。何もいらない。奥州も天下も何も。
 傍にお前がいて、俺の手を握っていてくれるのであれば、俺はきっとそれだけで強く生きていける。もう空虚に戻りたくない。お前を失って、またあのいつもどこか満たされない想いを抱えながら生きていくくらいなら、俺はすべて捨てたって構わない。
 それなのに。

「小次郎、お願いします」
「!!」

 一度目を閉じ、何かを決意した凛とした表情で目を開いた華は、毅然とした声でそう告げた。
 隣で頷いた小次郎が、刀を振り下ろす。一本だけの支えで何とか保っていた木橋は、鋭利な刃に立たれると同時に均衡を崩し、音を立てて落ちていった。
 馬の手綱を引き、崖のぎりぎりで何とか止める。飛び越えるには距離も高さもありすぎる。相手の表情がかろうじて読み取れる程度の遠い距離で、俺達は見つめあった。


「政宗様!天下を!天下をお取りください!」


 なぜと問いかけるより早く、華が叫んだ。
 僅かに震えた声と、今にも零れ落ちそうな涙の溜まった大きな瞳。ぐっと噛みしめられた口元は何かを堪えるように真一文字に結ばれ、それでも強い決意を感じさせる光がその顔に満ち溢れていた。

 掌に握りこんだままだったぺんだんとを、もう一度しっかりと握りしめる。

 天下を取るという俺の夢。俺以上にそれを信じてくれていたのは、この背を押してくれたのは・・・・・・華、だった。
 ・・・・・・・そうか、もうお前は覚悟を決めてしまったのだな。きつく目を瞑って、ひとつ息をした。
 お前は俺を・・・・・・いまだに、信じてくれるというのか。天下を取ると、信じて・・・・・天下をとれと、言ってくれるのか。それならば俺も覚悟を決めねばなるまい。
 俺を信じてくれるお前の為に・・・・・・お前が、心を押し殺してまでそれを望むというならば。



「俺が心から愛する女はお前だけだ!」



 思いのたけを叫んだ言葉に、華の目が揺らぐ。
 何かを言おうと僅かに口を開きかけ、けれどすぐに噤んでしまった彼女が恋しい。
 抱きしめたい。口づけたい。この手に再び閉じ込めることができたなら、どんな手を使ってでも、もう決して離しはしないのに。

 もう、届きはしないから。

「・・・・・・お前の家の繁栄、遠く奥州より祈っている!」

 それだけを言葉に乗せ、背を向ける。
 どうしようもなく押し殺した恋情から逃れるように、一心に馬を走らせた。これでいいと自分に言い聞かせる。
 いまだに薬の残る頭が、ずきずきと痛む。過ぎ去っていく風が隻眼にしみて、ほんの少しだけ視界が滲んだ。

(華、俺は天下を取る。伊達家を守り、天下さえもこの手に治めると誓おう)

 伊達家のために尽くしてきた。尊敬していた父を殺し、実の弟を手にかけ、母からは疎まれ毒を盛られ・・・・・・それでも、この奥州を守りたかった。国を愛していた。
 捨てられるものじゃない。そう簡単に、捨ててはいけないものだ。本当はわかっている。わかっていて・・・・・・それでも、お前を手放すくらいなら捨ててしまってもいいと思っていた。
 だが、お前は違うと言うのだろう。それではいけないと言うのだろう。お前はいつだって、俺に教えてくれる。大事なものを・・・・・・本当に見据えるべきものを。

 天下を取る。奥州の地を盤石なものとするために。
 そして誰にも文句を言われないほどの力を得たら、その時は・・・・・いつか必ず、迎えに行く。どんな立場にお前がいようとも、お前を奪ってみせる。
 俺を捨てた女の笑顔を思い出す。狂おしいほど愛おしい存在。俺はお前を忘れることはないだろう。一生、この心が変わることはないだろう。

 俺が生涯愛した女は、御柳華。その名だけが本物だ。

 だから、待っていてほしい。忘れずにいてくれ。俺と共にあり、心を通わせた時間を。
 どうかどうか・・・・・・愛していてくれ。





 あれから何十年経っただろう。
 病床について、死を間近に感じて、そんな最期の瞬間に思い出すのは若かりし頃の記憶。忘れたことは一度たりともない。どんな時でも心の片隅にあり続けた、俺にとってただ一人の女。
 家のために婿養子を取ったが、夫を早くに亡くし、今は尼寺にて生活していると風の噂で聞いた。あの別れから一度たりとも会っていない。彼女もきっと老いただろうが、きっと変わらず俺の心を惹きつけるだろう。あの凛とした瞳と優しい心は、どれだけ時を経ようとも変わらないに違いない。

 遠い遠い記憶のかなたにある笑顔は、それでも色褪せずに残り続けている。
 結局、約束を果たすことはできなかった。天下を取ることはできず、今生で迎えに行くことも添い遂げることもできず・・・・・・・思い返せば、後悔も多い。けれど、一つだけ悪くないと思うことがあるとすれば、それは。

「・・・・・お前を、愛している・・・・・・」

 掌に引き寄せた銀の対のぺんだんとに口づける。
 数十年の命で、全霊を持って愛せる女と出会えたこと。それはとても、幸せだったと思う。

 不意にぺんだんとを握る手に、そっと白い手が重なる。
 淡く懐かしい温もりの先に、愛おしい笑顔があった。


「来世で・・・・・共にあろうぞ・・・・・・」


 小さく頷いた影に、迎えに行くからと笑った。
 随分と遅い迎えになってしまったが、必ず・・・・・・・迎えに。



 そうして、その瞬間は訪れる。

「さ、手を貸せ。もう二度と離さんぞ」

 繋いだ手は、もう誰にも引き離されることはない。




終わり
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