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「オトメイト系」
CLOCK ZERO

ふとした恋の一瞬~理一郎ver~

 ←同じチェシャ猫でも →君の名は誰かが呼ぶ為に(CZ、レイン→撫子)
 携帯を手に持って、メールを打とうとすること早10分。何も押さない白い指先に焦れたように、携帯の画面がパッと真っ暗になった。
 慌ててボタンをひとつ押せば、再び何事もなかったかのように小さな画面が明るさを取り戻す。そこに現れるのは、真っ白なままのメール。何度も文字を打っては消し、を繰り返していたおかげで、未だになんの言葉も現れない情けない結果の産物がそこにはあった。

 ちらりと撫子は、同じく何度目かわからない視線を部屋の時計へと向けた。
 時刻はすでに真夜中過ぎといって差し支えのない時間だ。夜の11時過ぎにメールをするのは、相手にとって迷惑・・・・・という一般常識を忠実なまでに守る性格の彼女からしてみれば、メールを送るのはかなりの抵抗がある時間だった。

(・・・・・・・・でも、やっぱり一言くらいは・・・・・・)

 進まないメール作成画面を一度閉じ、数十分ほど前に届いた恋人からのメールに再び目を通す。
 仕事の関係で数日出張していた理一郎から、ついさっきこちらに帰ってきたという連絡があった。彼らしい愛想の欠片もないそっけない文面に、まったくと呆れながらも口元が緩むのを止められない。
 普段は電話の方が手っ取り早いと言って、滅多にメールなんて送ってこないのだが、今回は夜遅かったこともあって気を遣ってくれたのかもしれない。文字だけのせいで冷たく事務的なものであるはずなのに、最後に付け足したように書かれた「おやすみ」の言葉に、理一郎の思いやりが込められているようだった。

 意を決して、撫子はもう一度メールの作成画面を呼び出す。
 何もおかしいことはない。ただ一言、返せばいいのだ。「おやすみなさい」、と。

 けれどやはり、指先はどうにも思い通りに動いてくれない。
 文字を打とうとすると、言いたいことが山ほど頭に浮かんできて、それを伝えたくなってしまう。理一郎がいなかった数日間の話、次のデートの話・・・・・・たった数日、あまり話せなかっただけ、それだけなのに、言いたいことが多すぎて困ってしまう。
 だけど、そんなくだらない話を仕事で疲れて帰ってきた理一郎にしてもいいのかという思いが指を止める。
 結局、先ほどと堂々巡り。メールは真っ白なまま、「おやすみ」の一言さえ打てはしない。


『おかえりなさい。仕事、お疲れ様。ゆっくり休んでね。おやすみなさい』


 散々悩みに悩んで、ようやく動き出した指先が作り上げた文面は、理一郎のことを言えない素っ気なさで、撫子は若干肩を落とした。今更理一郎相手に愛想どうこうというのも恥ずかしいものがあるが、読み返すとなんだか冷たすぎやしないかと心配が湧き上がってくる。
 似た者同士と言ってしまえばそれまでだし、これだけでも恐らく理一郎は気にもしないだろうとわかっている。
 それでもやっぱりどこか納得がいかない。いつもならこんなことで悩みはしないのに。

 もういっそ、電話した方が早いかもしれないとちらりと思い、けれど時計を見て諦める。
 最初のメールが届いてから、かなり時間が経っている。もう理一郎も寝ているかもしれない。

「・・・・・・・・最初から、電話しておけばよかった」

 後悔の呟きがこぼれても、時間は止まってくれない。そうだ、最初から電話にしておけばよかった。そうすれば、顔は見れなくても声は聞けたのに。
 ・・・・・・突き詰めてみれば、結局さびしいだけなのだから。こんなにメールで悩むのだって、こんなに電話する機会を逃したことに落ち込むのだって。

 数日ぶりにちゃんと理一郎を感じていたい、と。
 ただそれだけなのだから。

 深いため息をついて、撫子は出来上がっていた素っ気ないメールに、最後の一言を付け加えた。ほとんど無意識に、けれど何のためらいもなくそれは付け加えることができた。
 送信中と表示された画面が、数秒の時間を置いて消える。
 携帯を半ば放り出すようにして、撫子はそのままベッドへと倒れこんだ。メールを打つだけだったのに、やたらと神経を使った気がする。どっと一気に疲れがきた。
 もう普段ならとっくに寝ている時間に、そのまま眠ってしまおうかと目を閉じる。
 が、その直後、足元に放って置いた携帯の着信を告げる音に、慌てて飛び起きた。


「も、もしもし?」
『・・・・・・・・・・悪い、寝てたか』
「えっと、大丈夫・・・・・だけど、どうしたの理一郎。こんな時間に」
『お前な・・・・・・あんなメール送っといて、どうしたのはこっちの台詞だろ』

 
 ついさっきまで散々考えていた相手が、携帯越しに呆れた声を響かせる。
 低く少しかすれた低音に、先ほどまで感じていた疲れも寂しさもゆるりと融かされていくような気持ちになる。浮かれたつ気持ちが声に表れないよう、撫子は緩む口元を軽く押さえた。

「私、なにか変なこと書いた?」
『・・・・・・・・・無意識かよ。どんだけ性質悪いんだ』
「理一郎?」
『まあいい。別に何でもないならいい、けど・・・・・・このまま帰るのもバカらしいから、とっとと降りて来いよ。親父さんには見つかるなよ、面倒だから』

 思いもよらない言葉に、携帯を落としそうになる。
 慌ててカーテンを開けて、門の方を見る。外は真っ暗でよく見えないが、門のあたりの灯りに照らされた見覚えのある長身のシルエットがかろうじて確認できた。

「え、ちょ、理一郎まさか外にいるの!?」
『・・・・・・・会いたいって言ったの、お前だろ』
「そっ・・・・・それは確かにそう、だけど・・・・・」

 今更ながら、顔が一気に赤くなる。見られているわけでもないのに、撫子は思わず顔を隠すように片手で覆った。
 最後に半ば無意識に付け加えたメールの一文。まさかそれだけで、来てくれるとは思わなかった。近所とは言え、敷地面積が広い理一郎と撫子の家は、結構な距離があるというのに。


「本当に・・・・・・・来て、くれたの・・・・・?」
『・・・・・・・・・あんなこと言われて、無視できるか、ばーか』


 どこか照れくさそうなぶっきらぼうな声に、なんだか泣きそうなくらい胸が熱くなる。
 幼馴染で、物心つく頃からずっと一緒で、互いの考えることも行動パターンも大体予想がつくくらいによく知っているのに、まだまだ知らない面があると思い知らされるのは、こんな時だ。
 そして、好きだという気持ちを思い知らされるのも。

「ちょっと待ってて、今行く!」
『別にそんなに焦らなくていい。急いで転ばれる方が迷惑だ。・・・・・・・ちゃんと待っててやるから』

 優しさの感じられる言葉に、堪らず上着だけひっつかんで部屋を飛び出る。
 着替える時間も惜しいし、電話を切るのも勿体なくてできない。急いで、けれどなるばく物音を立てないように玄関へと降り立つ。鍵を開ける音を誰かに聞きとがめられないかとドキドキしながら、そっと外へ飛び出す。
 門までの何でもない距離が、やたらと遠く感じて急ぎ足になる。


「・・・・・・・会いたかったのは、俺も同じだ」


 耳に押し付けたままの携帯電話越しの声と、門の向こうに立つ人影の声が重なる。
 門の外電灯に照らされて振り返った顔の、小さな微笑に向かって、撫子は思いっきり抱きついた。




『会いたいけど、また明日ね』



 そんな可愛いこと言われて、おとなしくしていられるわけないだろ。
 甘い甘い恋人の独り言を聞きとがめて、彼女が顔を赤く染めるのは、二人で明かした夜のその後のこと。





End.
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