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「オトメイト系」
CLOCK ZERO

ケンカの後は、甘い夢を(円撫、バレンタイン企画提出)

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「円の・・・・・・バカッ!!!!!」

 我ながら子供っぽいとは思ったけれど、そう叫ぶのを堪えることができなかった。
 力いっぱい投げつけてやった手提げの紙袋は、腹立たしいほどあっさりと相手にキャッチされる。「なにするんですか」とか不機嫌そうに言われたけれど、人の気も・・・・・・というか女心も知らないで、そんな心外そうな顔をされたことが、さらに私の怒りを煽った。

 周りを歩く人たちから、チラチラと好奇の視線が向けられるのを感じる。
 平日の昼だから空いているとは言え、さすが都内でもっとも有名なテーマパーク。親子連れやカップルで、人もそれなりにいる。
 それらのすべてに背を向けて、私は踵を返して走り出した。



 ある程度距離を取ったところで、少しスピードを緩めた。ちらりと視線だけ動かして後ろを確認するけれど、円の姿は見えない。
 ・・・・・・普通、こういう時は追いかけるものじゃないだろうか。なんだかちょっとむなしくなって、同時に人前であんな子供っぽいことを晒したことへの自己嫌悪が襲ってきて、私は思いっきり溜息を吐いた。
 ちらりと腕の時計を見やる。時刻は午前11時を少し過ぎた頃。つまり、入場してから一時間足らずでケンカになった、とそういうことになる。

 手近にあったベンチに腰掛け、ぼんやりと周囲を見やる。オリエンタルな雰囲気が並ぶ建物を眺めていると、本当に遠い異国に来た気分になる。夢の国、とはうまい表現だと思う。日本にいても、いろいろな世界を旅しているような不思議でわくわくした気持ちになれる。
 華やかな音楽と行きかう人の声が、意味のない音として耳に届く。そこに混じって、微かに水の音も聞こえた。
 目の前を歩いていく人は、今日がバレンタインということもあってか、カップル率が高かった。元々、カップル向けに作られた部分が多いテーマパークだとも言うから、余計にそうだろう。

 そんな時に、恋人とケンカをして、一人で寒空の下、ベンチに座り込んで・・・・・・本当に何をしているのだろう。

 別に、今日が恋人になって初めてのバレンタインとかそういうわけじゃない。中学の卒業時から付き合い始めた円とは、すでに何回かバレンタインを過ごしていて、毎年ちゃんと手作りのお菓子を渡している。
 大体において円はそれを素直に受け取ってくれるし、きちんと食べてもくれる。それは満足しているのだけれど・・・・・・問題は食べた後、必ず言われる「央には負けますけど、おいしいです」の一言。

 私だって、本職(しかも今や超一流のパティシェ)の央に勝てるようなものを作れると思っていない。
 円が素直じゃない性格だっていうのもわかっている。

 ・・・・・・だけど、さすがにこうも毎年毎年言われると、ちょっと腹が立つのも事実で。

 それで、ほんの少しの対抗心もかねて、今年のバレンタインはいつもより少し違った計画を立ててみた。
 帰国している央に頼み込んで、絶品ガトーショコラの作り方を伝授してもらったり。一度行ってみたかった、カップルのデート定番コースである某テーマパークのバレンタイン限定チケットを購入してみたり。いつもよりちょっと服装やメイクに気を遣ってみたり。
 バレンタイン当日に気兼ねなく遊ぶため、大学院の難しい課題も徹夜で終わらせてきたというのに。

 どうしてか、当日会った時から円はどこか不機嫌で。全然楽しそうじゃなくて。
 少し遊んだだけなのに、なんの前触れもなく「さっさと帰りましょう」なんて言うから、ついカッとなってしまった。
 あとはもう売り言葉に買い言葉、結局エスカレートしたケンカは収集がつかなくなり・・・・・冒頭の通り、という感じだ。

(そりゃ、円がこういうところ苦手なのは何となくわかってたけど・・・・・・何もそんな、怒った顔しなくてもいいじゃないの。私はすっごく楽しみにしてたのに、円のバカバカバカ・・・・・・・)

 まだ胸の中にくすぶっている怒りは、行き場を見失ってぐるぐる回るだけ。
 最近流行っている愛らしいテディベアを抱えたカップルの女性が、すごく楽しそうな笑顔を浮かべていて通り過ぎていくのを、羨ましい気持ちで見送った。20歳をすぎてあの人形は恥ずかしいかもと思っていたけれど、今は無性にあのテディベアが欲しい。あれを抱きしめていたら、少しは気持ちが和らぎそうだ。

 気晴らしに次へ行く場所の検討をつけ、立ち上がりかけた時、不意に目の前に影が差す。
 見上げた先に、むすっと口元をまげて仁王立ちになっている円の姿があった。


「・・・・・・あなたね。子供じゃないんですから、癇癪起こして逃げ出すとかやめてくださいよ。探すのが面倒でしょう。探しました」
「な、なによ悪かったわね!!どうせ子供よ、放っておいて。つまらないんでしょ、さっさと帰れば?私はひとりで遊んでいくから」
「はあ?なに言ってるんですか、変なダダこねないでください。ほら、行きますよ」
「ちょ、ちょっと・・・・・!!」


 ぐいと手を引っ張られ、ベンチから立たされる。重なった円の手がひどく熱く感じたのは、それだけ私が冷え切っているということなのだろう。
 円がまた何か言いたげに眉根を寄せ、がしりと私の両手首を掴む。そのまま持ち上げられた両手は、円の口元へ運ばれ・・・・・・ふわりと温かいものが、吹きかけられた。

 ハアっと吹きかけられた息が、白く煙ってすぐに消える。
 だけど両手に伝わったじんわりとした熱は、私の指先に留まったまま、なかなか消える気配がなかった。

「な、なななっ・・・・・・・!?」
「・・・・・・冷たいです」
「ま、円ちょっと!!こういうこと人前で、そのっ・・・・」
「・・・・・・無理されても、少しも嬉しくないんですよ。ぼくのためだって言うから、まだ許しますけど・・・・・」

 ぼそりと呟かれた言葉を聞き返そうとするより早く、円の手が離れる。けれどすぐに指が絡められ、先ほどよりしっかりと繋いだ手を握りなおされた。
 私の手を引いて少し前を歩く円は、もうこちらを見ようとしない。不機嫌そうな表情も相変わらず、だ。
 だけど不思議と、もうそれを見ても悲しくなったりイライラしたりはしなかった。繋いだ手が、ひどく優しいからかもしれない。態度は怒っているけれど、本気で怒っているわけじゃなくて・・・・・・心配されていると、そんな気がした。

 少し躊躇った後、私は繋がれた手を自分からも握り返した。
 多分、言葉で聞くよりも、その方が早い気がした。私達は、いつだってあまり素直じゃなくて、きっかけがないとちゃんと言えないから。
 私も怒っていないという気持ちが、伝わったのかもしれない。円が小さく溜息を零して、ようやく私を振り返ってくれた。

「・・・・・・撫子さん、昨日、あまり寝ていないでしょう?」
「え?」
「央から聞きました。スケジュールがなかなか合わなくて、ぼくに渡す予定のバレンタインのプレゼント、前日ぎりぎりでの準備になってしまったと。しかもそれが完成した後、大学の課題が終わっていないからこれからやらなければいけないとか話していたそうじゃないですか。そんなハードスケジュールの直後に遊園地で一日遊ぶとか、あなた馬鹿ですか?」

 じとりと睨まれ、私は乾いた笑みしか返せなかった。まさか央経由でそんな話が伝わってしまうとは。
 円にわざわざ話しているあたり、央なりに私の体調を気遣ってくれてのことだろう。そう思うと、央を責めることもできなくなってしまう。

「寝不足で若干足元もおぼつかないくせに、絶叫系やらなんやら乗ろうとしないでくださいよ。あなたが倒れでもしないかと、こっちはさっきから落ち着かなかったんです。あなたがバレンタインを楽しみにして浮かれているみたいだったので、少し大目に見て我慢しましたけど・・・・・・いい加減、限界です。ぼくの精神安定のためにも、大人しく休んでください」
「え、っと・・・・・もしかして、ずっと円が今日、機嫌悪かったのって・・・・・・」
「悪くもなりますよ。あなたが無理をしているのを、ぼくが気が付くより早く、他の男に教えられるなんて・・・・・央だったから少しはマシですけど、やっぱり面白くありません。挙句、バレンタインのプレゼントは投げつけられるわで・・・・・・・ぼくの繊細な心が傷ついたんですけど、どーしてくれるんですか?」

 ちっとも繊細じゃなさそうな口調でそう言って、円がもう一方の手に持った紙袋を軽く振ってみせる。
 それは私が円に向かって思いっきり投げつけてやったものであり、前日にぎりぎりまで格闘していたガトーショコラが入ったバレンタインの贈り物だ。
 
 今年は特別なバレンタインにしたいと思っていたけれど・・・・・・まさか、相手に投げつけてプレゼントを渡すはめになるとは、思わなかった。
 冷静になって思い出すと、自分の子供っぽさに恥ずかしくなる。


「ご、ごめんね・・・・・・?仕切りなおすから、一回それ返して」
「イヤです。一度もらったものを返すほど、礼儀に欠いているつもりはありませんよ、ぼくは」
「ちょ、ちょっと何よそれ!?傷ついたとかそんなこと言ってたくせに・・・・・私だってああいう後味悪い渡し方したくないんだから、返してってば!」
「だから嫌です。これはこれでもらっておきますから、仕切り直ししたいのなら、別のものでくださいよ」
「別のもの?」


 途端。ニッと覚えのある笑みが、円の顔に浮かんだのを見て、私は少し後ずさりしたい気分になった。
 この顔。このやたら意地の悪い笑みを見た日は、大抵ろくな目には遭わない。
 立ち止まった円の顔が近づく。周囲の喧騒が途端に遠くなって、円しか見えなくなる。

「さっき、あなたを少し見失ってしまったのは、どうしてだと思います?」
「え?」
「あなたをゆっくり休ませるための場所を確保していたんですよ。帰るのは嫌みたいでしたから、ホテルを予約しました。英系列のレストランが入っているホテル、この近くにありますしね」
「え・・・・・ええ?」

 内緒話のように囁かれた言葉の内容に、頭がついて行かない。
 だって今日は日帰りの予定で。そりゃあ、夜遅くまでいるつもり・・・・・というか一番のメインは夜のバレンタイン限定ショーだったから、最後まで残って、明日はゆっくり休むつもりだったけれど。
 ・・・・・・少なくとも、泊まる予定はまったくなかったはず。

「折角のバレンタインなのに、恋人との甘い夜がない・・・・・なんて言わないでくださいよ?」
「・・・・・・円。まさかとは思うけど、最初から狙ってたわけじゃないわよね」
「まさか。あなたに休んでほしいって言うのは、本当ですよ。まあ、もともとそういう流れには持っていくつもりでしたから、ホテルには早めに話つけてありましたけど」
「・・・・・休ませる気、本当にあるのか疑わしいんだけど」
「とんでもない。しっかり休んで・・・・・夜に備えてほしい、と思ってます。疲れ切って、途中で寝られると寂しいでしょう?」

 挑発的に視線を合わせる群青色の瞳を、恨めしさを込めて睨む。
 だけど、相手はますます楽しそうに笑みを深めるだけで。


「せっかく夢の国に遊びに来たんですから、ぼくにもいい夢・・・・・・見せてくれますよね?」


 耳元に落とされた言葉を悔しいと思うのに、結局拒むなんてこと考えもしない自分は、どうしたって円に振り回されている気がする。
 顔が熱い。絶対、私の顔は真っ赤だ。恥ずかしすぎて、まともに顔も上げられない。


「・・・・・・・そっちのプレゼント、ちゃんと食べてからね」


 円が手にした袋を見ながら、ようやくそれだけ返す。
 「どっちも楽しみにしてますよ」と答える円の声が、満足そうだった。
 二人で並んで歩き出す距離が、少し遠い気がして、円の腕に体をくっつけるようにして寄り添った。横目で見上げた彼の耳が、わずかに赤いのが見えて、なんだかくすぐったい気持ちになる。少しだけ仕返しができたような気になって、口元に笑みが浮かぶ。

 繋いだ手の温かさは、二人一緒のものだった。





Happy Valentine!!!
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