スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←罪愛~Invidia~(クローバーの国、ボリアリ、ヤンデレ注意) →捧げる物語
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
総もくじ  3kaku_s_L.png ネオロマ
総もくじ  3kaku_s_L.png QuinRose
総もくじ  3kaku_s_L.png オトメイト系
総もくじ  3kaku_s_L.png リジェ系
もくじ  3kaku_s_L.png その他
総もくじ  3kaku_s_L.png お題もの
  • 【罪愛~Invidia~(クローバーの国、ボリアリ、ヤンデレ注意)】へ
  • 【捧げる物語】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「オトメイト系」
CLOCK ZERO

to "Someone"(円撫、帰還数週間後)

 ←罪愛~Invidia~(クローバーの国、ボリアリ、ヤンデレ注意) →捧げる物語
 どうして大切なものほど、目には見えないんだろう。
 どうして、手放したくないと願うものほど、手の内から零れていってしまうのだろう。

 ・・・・・・・・・・どうして、忘れたくないのに、彼の笑顔が薄れてしまうの。

 嫌だとわめいて泣いて泣いて、消えないでと必死に手を伸ばして、記憶のふちにしがみつく。
 彼が生きていた温もり、くれた言葉、見せた表情、一緒に過ごした時間、なにもかも。まだ、私の胸に残っている。忘れてなんていない。
 「彼」を愛した気持ちだって、確かにあるのに。

 怖い。
 時間が経つにつれ、どんどん失われていく未来の記憶。
 忘れたくないと必死にあがいて、それでも消えていくことに絶望する。このままじゃきっと、私は「彼」を忘れてしまう。


 もしも「かみさま」というものがいるのなら。

 お願いだから、確かに存在した「未来」の記憶を消さないで。




 私の記憶に生きる「円」まで、私から奪ったりしないで。




「・・・・・・・撫子さん」


 恐る恐る、といった感じにかけられた声に肩が震える。
 誰かの気配がすぐ傍に近づいてくるのを感じたけれど、膝を抱えたまま、顔も上げないでおく。・・・・・上げられなかったし、上げたいとも思わなかった。きっと今の私はひどい顔だ。
 泣きすぎたせいで熱くなった目元を、じっと膝小僧に押し付ける。
 喉がカラカラで、鼻の奥が痛い。頭がどこかぼんやりとして、ひどく気だるくて・・・・・それでもまだ、胸の奥が痛くて痛くて、ふとした拍子に泣いてしまいそうだった。

 両手で握りしめたブレスレットが手に食い込んで、その確かな感触を教えてくれる。
 あの世界が夢じゃなかった何よりもの証。「円」がくれた贈り物は、曖昧になっていく私の記憶を繋ぎとめてくれる唯一のものとなっていた。


「泣いて、いるんですか?」

 ――どうしてこんなところで泣いてるんです、あなたは。


 ふと、聞こえないはずの声を聴いた気がした。
 きっと「彼」なら、そう言うだろう。なにみっともないことしてるんですか、とかそんな憎まれ口付きで。
 ・・・・・・・・そのくせ、きっと呆れたようにため息をついて、隣に座ってくれるのだろう。肩を抱いて、落ち着くまで傍にいてくれるのだろう。みっともないくらい泣いている私を一人放っておくことなんて、多分できない。そういうところが、とても優しい人。

 少しの間があって、すぐ隣に人の体温を感じた。何度か感じたことのある香りが、右側に腰を降ろす。「彼」と同じで、でもどこか違う・・・・・・優しくて、落ち着く匂い。

「悲しいんですか?」
「・・・・・・」
「央が、心配していました。あなたの様子が、最近おかしいと。僕に、あなたの傍にできるだけついていろと言っていました」
「・・・・・・」
「央を心配させるなんて、許されないことです。それに、ぼくも・・・・・・あなたの様子がおかしいと、なんだか落ち着きません。央のことをあまり考えられなくなってしまいます。それは、あってはならないことです。だから、さっさと元に戻ってください。泣かれると、ぼくが困ります」

 真っ直ぐな視線を向けられているのを感じる。きっとあの大きくて綺麗な群青色の瞳で、私をじっと見つめているんだろう。彼も、そして「彼」も、それが癖だった。
 ぎゅっと唇を噛む。
 ああ、さっきの言葉だって、彼らしい言い草だ。照れ隠しの代わりにそっけなくそんなこと言って、でもその中には相手への思いやりがちゃんと隠れていて・・・・・・・素直じゃない。

 同じだ。彼は「彼」と同じ。
 でも違う。違う人。「彼」じゃない。

 こんなにも会いたくて会いたくて、苦しく想う・・・・・・・「あの人」じゃ、ない。


「・・・・・・・・・・して・・・・・・」

「え?」

「・・・・・どうして、円じゃないの・・・・?」


 どうして忘れていくの。
 どうして消えていくの。
 どうして、どうして。

 覚えていることすら、叶わない願いだとでも言うの?



「っ・・・・・どうして、ここにいるのがあなたなのよおっ!!!!」



 感情のままに叫んだ瞬間、はっと気が付いて顔をあげる。
 泣きはらして重たい私の瞳と、驚いたように傷ついたように見開かれた円の瞳が、静かに交差した。

「あ・・・・・、その・・・・・」
「・・・・・・すみません。あなたの、邪魔をするつもりはありませんでした」

 先に目を逸らしたのは、円だった。
 いつもよりずっと無表情なくせに、ひどく寂しそうな瞳をしていて、それが彼を傷つけてしまったという事実を私に突きつける。淡々とした口調が、無理に感情を押しこめているように聞こえて、胸が痛くなる。
 私の方を見ないまま、円は腰を浮かした。離れていく温もりが急に怖くなって、私は思わずすがりつくように円の腕を掴んでいた。


「撫子、さん?」
「ちがうの、ちがう・・・から・・・・お願い、いかないで・・・・円まで、いなくならないで・・・・!!」


 見上げた円の顔が、ぐにゃりと歪む。
 懲りずにまたもこぼれた涙が、あとからあとから流れて止まらない。言葉にならない、言葉になんてできない想いが嗚咽と一緒にこみ上げて、感情の渦が瞳から零れ落ちる。

 これだから円の顔を見たくなかったのに。
 だって、見たら自覚してしまう。気が付いてしまう。

 色素の薄い髪色、群青色の綺麗な瞳、戸惑ったような幼い表情。

 私の中の円は、もう目の前にいる円になってしまっている。
 そんな事実に、気が付きたくなかった。


 ・・・・・・・もう、私は、あの壊れた世界の「円」の顔を、思い出せない。


 おぼろに霞んでいく記憶が悲しくて、心の奥底に残った恋心を頼りに泣くしかできない。
 交わしたはずの言葉が、気持ちが、全部全部消えていく。もう私の手元に残った思い出は、あと少ししかない。
 こんなにも忘れるもんかと必死なのに、この世界で友人達と過ごすうち、円と一緒にいるうちに・・・・・・もう一つの世界のことを忘れていっている自分に気が付いて、絶望するのだ。

 それが辛くて悲しくて悔しくて。
 私は、自分で選んだはずの世界を、いま目の前にいる円を、少し否定してしまっていた。距離をとろうと、していた。
 幸せそうな「彼ら」の中に混ざって、私も幸せになる・・・・・・それはどうしても許されてはいけないことのような気がして、大事な友達を遠ざけて・・・・・・・ひとりで、消えかけていく「別の未来」にしがみつくことに必死だった。

 それは、私を元の世界に返してくれた「円」の気持ちを裏切ることになるとも、わかっていたはずなのに。
 



「・・・・めん、なさいっ・・・・・・ごめんね、っごめ・・・・・・まどか、ごめん・・・・・っ!!」




 皺になりそうなくらい、円の白い服を握りしめる。ぽたぽたと落ちた滴が、雨のように円の服にシミを作っていくのがわかったけれど、止めようと思えば思うほど涙は溢れて、止まらなかった。
 ふと、戸惑ったように所在なさげだった手が、ゆっくりと背中に回される。躊躇いがちに引き寄せられる力を感じ、円との距離が近くなったところで、ようやく抱きしめられたのだと気が付いた。
 引き寄せられた円の腕の中は、とてもあたたかい。


「・・・・・・小さい頃、怖い夢を見て泣いたことがあって・・・・・・その時、母がこうして抱きしめてくれました。不思議と安心したことを、今でも・・・・・なぜか、覚えています」


 背中に回された手が、ぎこちなく、けれど確かなリズムでとんとんと動く。
 子供をあやすように優しく、大丈夫だと伝えてくるその小さな手の温もり。ゆらりと涙の溜まった視界が揺らめいた。

 幼い抱擁は、あの世界にいた時のような恋しさや息苦しさとはまた違う感情を与えてくれる。
 どこまでも穏やかで・・・・・・幸せな温もりが、胸の痛みを和らげてくれる。




「・・・・・そばに、います」




 すぐ近くで呟かれた言葉に、ぼろりとまた涙が落ちた。
 なにかを言おうとして、だけど嗚咽の止まらない喉は声を発してはくれない。不明瞭な音だけが、私の口からは零れるだけ。



「あなたが嫌でないのなら、ぼくが傍にいますから・・・・・・落ち着くまで、こうしていますから・・・・・・大丈夫、です。もう泣かなくていいです」

「・・・・・・っ、・・・・・・ふ・・・・うえ・・・・・」

「泣かないで、ください・・・・・・どうしていいか、わからなくなる・・・・・」



 ――あなたは怒っている時の方が、可愛いと思います。


 またあの声が聞こえた気がして、すぐ横にある円の顔を見つめる。
 至近距離で合わさった視界の向こう、確かに見えた姿は、薄れてしまっていたはずの「彼」の顔。


『なので、どうせなら僕の好きな顔、していてくださいよ。あなたが何も気にせず怒っていられるくらいに、平和で幸せな世界を・・・・・生きてください』


 細められた目、意地悪そうな笑み、からかうような口調・・・・・でも優しさが隠れていること、私は知っている。本当は誰より純粋な人だと・・・・・・家族を大切にしていて、素直じゃないだけで意外とさびしがりな一面があることだって。
 知っている。こんなに好きになった人。泣くほど愛した人。

 私は・・・・・・・
 ああ、やっとはっきり思い出せた。



 私が好きになった人の、顔。

 まだ、覚えている。

 もう絶対、忘れたりなんかしない。



 ぎゅうっと円の背中に腕を伸ばして、しがみつく。
 円の肩口に顔を押し付けて、とうとう声をあげて泣いた。

 抱きしめてくれる彼はそれ以上何も言わず、ただ私の背中を優しく撫でる手は止めないまま。
 掌に握りしめたブレスレットと、抱きしめた背中の温もりを両方抱いて。
 ・・・・・・日が暮れるまで、私は泣き続けた。





 翌朝は、いつになく清々しい気分で目が覚めた。
 泣きはらした目は冷やしたとは言え少し腫れぼったかったけれど、気持ちはすっきりと落ち着いていた。人前で・・・・・・円の前であんなに大泣きしてしまったことは恥ずかしいけれど。
 ひとつ大きく伸びをして、ベッドから降りる。
 あれだけ大泣きしたのは、いつ以来だろう。円には迷惑をかけてしまった・・・・・・訳がわからないまま知り合いに目の前で泣かれたら、きっと困惑しただろうに。あんな・・・・・・

 そこまで考えて、つと首を傾げた。


 どうして私は、あんなに泣いていたんだろう。


 昨日のことなのに、不思議と思い出せない。あれだけ泣いたのだから、よっぽど悲しいことがあったはずなのに、さっぱりその理由がわからなかった。
 釈然としないまま、着替えを済ませる。
 今日は円と央がわざわざ家に迎えに来てくれると言う。あれだけ泣いていた私を気遣ってくれてのことだろうが、なんだかくすぐったい気持ちになる。理一郎以外の友達と登校するなんて、はじめてだ。

 うかれた気持ちのま、何気なく手に取ったそれに気が付き、再び首を傾げる。
 ・・・・・・見覚えのないブレスレット、だ。

 何を当たり前のように持っていこうとしていたのだろう。学校にこういった装飾品をつけるのは、嫌いだったはずなのに。
 そう言えばここのところずっと、なぜかこれを持ち歩いていた。
 確かに可愛いし私の好きな感じだけど、買った覚えがまったくない。どこで手に入れたのか、どうして最近持ち歩いていたのか・・・・・・考えてみても、そこの部分がさっぱり抜けている。


「円からもらったのかしら・・・・?」


 以前もらったストラップを取り出して見比べてみると、どことなくブレスレットも雰囲気が似ている。
 ・・・・・・・もしかしたら円が作って、また私にくれたのかもしれない。
 全然思い出せないけれど、それが一番正解に近いような気がした。そんな気持ちのこもったものを忘れているなんて、私は随分と薄情だ。後悔の念が押し寄せて、なんだかまた胸が痛くなった。



「おーーーーーーい!!撫子ちゃーーーーーん!!」



 唐突に騒がしい声が外から聞こえ、慌てて窓を開ける。
 玄関先で明るく手を振っている央と、その横で軽く頭を下げる円の姿が見えた。
 今行くわ!と返事をして、学校用のカバンを掴む。そのまま部屋を出ようとして・・・・・ふと足を止め、机の上に置いたブレスレットを手に取った。

 ・・・・・・・どうしてだろう。
 いつ手に入れたのかなんて覚えていないのに、とても大事なものだったような気がする。
 懐かしくて、どことなく切なくて・・・・・・私の大切な、宝物。





『さようなら・・・・・・』






 部屋を出る瞬間、誰かの声が聞こえた気がして、振り返る。
 いつもの私の部屋。何も変わらない。誰もいない。ただ、不思議と、いつもより窓から差し込む光がまぶしく感じた。
 手に握ったままだったブレスレットを、カバンの中に仕舞いこむ。 


 いってきます、と誰にかけるでもない言葉をささやいて、私は部屋のドアを閉めた。





End.
関連記事
スポンサーサイト


総もくじ 3kaku_s_L.png ネオロマ
総もくじ 3kaku_s_L.png オトメイト系
総もくじ 3kaku_s_L.png リジェ系
総もくじ 3kaku_s_L.png お題もの
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
総もくじ  3kaku_s_L.png ネオロマ
総もくじ  3kaku_s_L.png QuinRose
総もくじ  3kaku_s_L.png オトメイト系
総もくじ  3kaku_s_L.png リジェ系
もくじ  3kaku_s_L.png その他
総もくじ  3kaku_s_L.png お題もの
  • 【罪愛~Invidia~(クローバーの国、ボリアリ、ヤンデレ注意)】へ
  • 【捧げる物語】へ
  • Tag List 
  •  * |

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【罪愛~Invidia~(クローバーの国、ボリアリ、ヤンデレ注意)】へ
  • 【捧げる物語】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。