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 ←年下カレシ その3 →Double Face(クローバーの国、グレアリ)
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「QuinRose」
アリスシリーズ

年下カレシ その4

 ←年下カレシ その3 →Double Face(クローバーの国、グレアリ)
 キスされながら思ったことは、「似ている」なんていう、場違いでやけに冷静な感想だった。
 近くで見ると、ますますグレイを思い出す。私の目の前にいるのは、姿は幼いとは言えグレイなのだから似ているのも当たり前なのだけど。

 似ている、けど。やっぱり違う。

 少々乱暴に重ねられた唇は、記憶の中にあるグレイよりも温かくて柔らかくて・・・・・・物慣れていない様子で、微かに震えていた。
痛いくらいに私の手首を押さえつける手は、緊張のためか少し汗ばんでさえいる。大人ぶっていたって、こんなことをしてみせたって。結局まだ、目の前で私にキスする彼は、経験の浅い少年なのだろう。
 ゆっくりと唇が離れ、どこかボンヤリとした表情のグレイが私を見つめる。求めるように向けられる視線は、大人の「彼」と同じ熱のようでいて、でもやっぱりどこか違う。

 たとえ同一人物でも、私が欲しい熱は彼じゃない。


「・・・・・・・・っ、泣くほど嫌かよ・・・・・・・・」


 苦しげに眉をよせて呟かれた声に、ようやく我に返る。
 乱暴に目元を擦られて、自分が泣いていることに気がついた。

違うの、と慌てて答えようとして、けれど言葉はこみ上げてくる嗚咽に引っかかって出てこなかった。涙は止まらない。一度泣き出すと止まらない性質ではあるけれど、こんな時に発揮されなくていいじゃないかと自分が情けなくなる。
 ひとけのない森で男に押さえ込まれて、しゃっくりをあげてボロボロ泣いている女・・・・・・・傍から見れば、「いかにも」な光景だろうが、ここで一番傷ついているのは、押さえ込んでいる男の方だろう。
 私は襲われそうになって脅えて泣いているわけでもないし、恋人でもない男(彼が大人になったら恋人だけれど)にキスされて傷ついて泣いているわけでもない。そんな可愛らしい理由じゃない。


「・・・・・・・・・嫌われても、拒絶されても、俺のものにしちまえばいいだけの話だ。欲しいものは奪えばいいし、手放さないように縛り付けてでも傍に置いておけばいい」


 低く呟かれた物騒な言葉。
 目の前にいるグレイが、それを実行させてしまえるだけの力があることは気付いている。いくら私より年下と言っても、彼は男で・・・・・・・なんの力もない余所者の私を好きにすることなど、きっと本当に容易いことなのだろう。

 それでも危機感を感じないのは、グレイの手が優しいから。

 止まらない私の涙をごしごしと拭い続ける指は、乱暴だけど確かな思いやりを持っている。よく私の頭をなでてくれた大人姿のグレイの手よりも、少し小さくて温かい。力加減もよくわかっていないくせに、どうにかして慰めようと・・・・・・涙を止めようとしてくれる気持ちが、伝わってくる。
 ふわりとグレイの頭が、私の肩口に埋められる。
 頬に黒髪が触れて、くすぐったい。木の幹に押さえつけられていた手は、いつの間にか解放されていた。



「なんで・・・・・・っ、奪えばいいってわかってるのに、手出せないんだよ・・・・・・・・っ!!」



 押し殺すように吐き出された言葉に、言いようもない愛おしさがこみ上げる。
 今、目の前で私を好きだと切なく伝えてくる彼は、確かに私の好きな「彼」と同じで、けれど同時に別人だ。
 私の想いは、今はいない「彼」だけのもの。「彼」を独占したくて堪らない気持ちも傍にいて幸せな気持ちも全て・・・・・「彼」だけのもの。

 だけど。


「・・・・・・・・ありがとう、グレイ。私のこと、好きだって言ってくれて」


 「彼」に対する気持ちがあるように、彼に対する気持ちだって、確かに存在している。
 ぶっきらぼうで、でもどこか優しくて、同じ目線に立っていられる人。彼を見ていると、優しくて温かくて・・・・・・・綺麗な気持ちを知ることができる。
 感情に名前なんて付けられない。恋人としての大人のグレイに対する気持ちと、こうして短くも一緒に過ごしてきた子供のグレイに対する気持ちと・・・・・それは、全然違うものだけれども。

 あえて名前をつけるなら、きっとそれは。

 愛しさのままにそっと彼の背中に手を伸ばすと、グレイは大げさなまでに体を固まらせて緊張する。
 気にせずそのまま彼を引き寄せ、抱きしめた。大人姿のグレイには、やろうと思っても身長差があってなかなかできないことだ。
 まるで母親が子供にするかのように、その背中を優しく叩く。強張ったままの体から、次第に力が抜けていく。肩口に伏せられたままの顔は見えなかったけれど、その目元が微かに赤いのが横目で見えた。

「女の涙なんて、めんどくせえだけだったはずなのに・・・・・・・・・お前が泣いてるの見ただけで、何もできなくなるとか・・・・・・・俺、ただの馬鹿だな」
「そういう優しい人の方が、私は好きよ?」
「・・・・・・・・お前さ、それは確信犯か。無自覚で言ってんならマジ最悪だな。どんな悪女だよ。フった男にはとことん冷たくしねーと、つけあがるぞ・・・・・・・忠告しといてやる」
「・・・・・・・・グレイの気持ちが嬉しかったのは、本当だから」
「でも、俺は違うんだろ?あんたが好きなのは、俺じゃない。そういうことも、フるんだったらハッキリ言ってやれよ。変に気を遣われても、うぜえだけだ」

 いつもの憎まれ口を叩いて、グレイは最後に容赦ない私の額にでこぴんをくらわせる。痛みに顔をしかめた私を「変な顔」といつものように笑って、彼は体を離した。
 「いつも」。
 そう、いつものやり取りと言えてしまうほど、子供姿のグレイとも過ごしてきた。突き放せるわけがない。だって、彼に対しての情だって、ちゃんと持ってしまっている。


「・・・・・・・なあ、ひとつ聞いていいか?」
「なに?」
「俺がもっと大人なら・・・・・・・アリスを傷つけないくらい、泣かさないくらいに大人の男だったなら・・・・・・・・アリスは、俺を選んでくれたか?」


 不意に問われた言葉に、瞬きを返す。
 答えを待つ彼の表情は、「少年」とはもう言えないくらいに十分大人びていて。



「グレイが大人になったら、誰よりも好きになっているわ」
「・・・・・・・・・そっか」



 彼はちょっとだけ微笑んで、そのまま私に背を向けた。
 「頭を冷やしてくる」と振り返らずに言った言葉を最後に、その背中は離れていく。一瞬だけそれを呼び止めようとして、何故かそうしてはいけない気がして口を閉ざす。
 見送ったその背中を最後に、彼は私の前から姿を消した。





 大人の土下座っていうのも、なかなか見られたもんじゃない。
 しかもその相手が、スーツをびしっときこなした、いかにもデキる大人のカッコいい男の土下座・・・・・・・そこまで考えて、ようやく我に返る。クローバーの塔の自室へ帰り着き、ドアを開けた途端に飛び込んできた光景に思わず固まっていたが、よくよく見ればその人には見覚えがありすぎる。

「ぐ、グレイ!!?いつ元の姿に戻ったの!?ていうかどうして私の部屋で土下座してるの!?」
「本当にすまなかった、アリス!!!俺は・・・・・俺は自分が許せそうもない。いくら記憶まで逆行していたとは言え、君に散々暴言を吐いた挙句、泣かせるなんて・・・・・・・・!!」
「そ、それはいいから顔を上げてよ」

 床に顔を伏せたままのグレイに駆け寄り、その腕を引っ張ると、ようやく彼は顔を上げてくれた。
 見慣れているのに、今はどこか懐かしくさえ感じる、私よりずっと大人の恋人。
 ひどく申し訳なさそうな表情をするその顔に手を伸ばして、そっと触れる。確かな温もりと存在感がそこにあって、目の前にいる彼が幻なんかじゃないことを教えてくれる。
 ずっとずっと会いたかった人が、そこにはいた。


「アリス、俺はその・・・・・・・っと!?」
「おかえり・・・・・!!おかえりなさい、グレイ!!」


 いろんなことが頭から吹き飛んで、気が付けば私はただ目の前の人に抱きついていた。
 少し戸惑ったような間のあと、ゆっくりと大きな腕が私の背中にも回される。すっぽりと抱きしめられるような格好になって、満たされる気持ちになっていく。彼から感じる煙草の匂いが、不足していた心の何かを埋めてくれるようで。
 「ただいま」と耳元で優しく返された低音に、幸せすぎて泣きそうだった。



「じゃあ、小さくなっていた間のこと、ちゃんと覚えているのね?」
「ああ・・・・・・・・・本当に・・・・・・君にはひどいことばかりをしてしまっていたな。自分が情けない・・・・・・・今ここにあの姿の俺がいたら、殺してやりたいくらいだ」
「い、いやいやいや!!そんな気にしなくていいから!!あれはあれで結構仲良くなれていたし、小さい姿のグレイに好かれて悪い気もしなかったし・・・・・・・」

 本気が滲む物騒な口調に、慌ててフォローの言葉をかける。
 恐らくはないと思うが、もし今のグレイが子供姿のグレイと会うようなことがあったら、本気で彼は過去の自分を殺そうとしかねない。例え話であっても、あまり思い浮かべたくない光景だ。

 第一、グレイが思うほどに私は子供姿のグレイに迷惑をかけられたと思っていない。
 彼は彼で、私の中では「グレイ」という別人のような存在だったし、彼と過ごした時間はそれなりに楽しくて大切な時間だった。子供姿のグレイに対する感情は、大人姿のグレイに抱えるものとまったく違う種類のものだったけれど・・・・・・・あれに名前をつけるなら、多分相応しいものがある。


 私はどちらの姿のグレイにも、「恋」をしていたのだろう。


 狂おしいほど相手が欲しいと思う感情じゃない。どちらかというと、「子供の恋」だった。
 おままごとのように可愛らしく、ただただ綺麗な感情。相手を大切にしてあげたいという、恋愛の綺麗な部分だけを詰め込んだような・・・・・・淡くて儚い気持ちだった。今の私が抱えるには、少し綺麗すぎるものだ。今の私には、多分その綺麗な恋を保つことはできない。きっと壊れてしまう。
 私が求めるのは、そんな綺麗なものじゃない。

「・・・・・・・・やはり君は・・・・・・・」
「え?」
「アリスは、その・・・・・君に相応しいのは、もっと年の近い相手なんだろうな。俺では、君の気持ちを全て理解してやることはできない。もっと俺と君の年が近ければ、よかったのかもしれないが・・・・・そうすれば、ケンカだってしなくて済んだだろう?」

 どこか不安そうなグレイの言葉に、思わず目を瞠る。
 そういえば、グレイが子供の姿になる前にケンカしていたことを思い出す。他愛のないケンカ・・・・・ただ、お互いの価値観の違いによるもので。
 あの時、私も思った。もっと私が大人なら、ケンカなんてしなくて済んだのかなと。
 彼も同じようなことを思っていてくれたなんて、考えてもいなかった。


「・・・・・・・・グレイ、私ね、今回のことで気が付いたことがあるんだけど」


 もしかしたら。グレイが記憶ごと子供の頃に戻っていたのは、それが原因だったのかもしれない。
 私と同じ目線に立てればと思ってくれたから、このクローバーの国でもイレギュラーな事態が起こったのかもしれない。
 確かに年の近いグレイとは過ごしやすかった。忘れかけていた綺麗な恋心を教えてくれるほどに、大切だと思える存在にもなれた。もし、グレイと私の年があれくらい近かったとしたら・・・・・・あの当時のグレイと出合っていたとしたら。
 ・・・・・・・別の形で、私はグレイと恋をしていたのかもしれない。



「私、やっぱり今のグレイが一番好きだわ」



 それでも思うのだ。今の私が好きだと思うのは、年上のグレイなのだと。

 子供姿のグレイにキスをされた時、違うと思った。優しくて温かいキス。嫌だとは思わなかった。どこかで嬉しいと思う自分さえいた。だけど・・・・・・違った。
 気が付いたら、泣いていた。寂しくて会いたくて。
 本当に会いたいのは、ただ一人だった。代えなんてきかない。過去の姿の彼であったって、代わりにはなれない。私がキスして欲しいのは、苦くも甘い感情にしてくれる年上のただひとり。
 隣に座って、少し面食らった表情をするグレイの唇に軽くキスをした。少し体を伸ばさなければ届かない身長差を面倒だなんて思ったことはない。背伸びばかりして疲れることもあるけれど、嫌だなんてありえない。

「君は・・・・・・・・男を喜ばせるのが上手いな。他の男にも同じことをしないか心配だ」
「そう?グレイにしかこんなことしないわよ」
「そのわりには、小さい姿の俺を見事に誑しこんでくれたみたいだが?」
「た、誑し・・・・・・・!?」

 心外だと言い返そうとした言葉は、強く抱きしめられて消えてしまう。
 頬を包む大きな手に誘われるようにして顔をあげると、ゆっくりと唇が重なった。
 最初から求めるような激しさに、頭の奥底がくらりと揺れる。薄目を開けて見つめた先に、肉食獣を思わせる金の瞳があった。背筋が甘く痺れ、微かに震える手がねだるように彼の服を無意識に引っ張る。


「もう二度と、君が他の男を誑かしたりしないように・・・・・・・・しっかりと、繋ぎとめておかないと」
「・・・・・・他の男、じゃないもの」
「前にも言ったかもしれないが・・・・・・・俺は、過去の俺も含めて・・・・・・・君を誰にも渡したくないんだ」


 こつんと互いの額をあわせたまま、内緒話のように囁く。
 甘く微笑む表情の奥底に、本気の独占欲の影を垣間見る。狂気と言ってもいいほどに鋭いその影を見つけて、私も満足して微笑んだ。

 貪欲に次を求めてしまう、醜い感情に支配されても誰かひとりを繋ぎ止めたいと願う・・・・・・汚い感情に振り回されて、それでも確かな幸せを感じることができるもの。それを「大人の恋」と呼んでいいかはわからない。傷つかずにはいられない恋かもしれないけれど、私はこの恋を貫きたいと思える。
 純粋とはとても言えない感情だ。この恋でこれからも傷つくのは目に見えている。大人である彼のことがわからないと不安に思うこともいっぱいある。
 それでもこの気持ちは、彼以外にありえない。

 再び近づいた顔を、満ち足りた気分で受け止める。
 自分の体がベッドの上に沈むのを感じながら、ただただ与えられる熱を求めて返して・・・・・・・幸せな快楽に酔いしれる。


(・・・・・・・・・好き)


 淡く綺麗な「子供の恋」に、最後にさよならとありがとうを呟いて。
 底なし沼のような「大人の恋」に落ちていく。
 あなただけが好きなのだと、私を抱く大人の恋人に微笑んだ。





End.
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