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 ←番外編 Bitter WhiteDay3 →年下カレシ その2
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「QuinRose」
アリスシリーズ

年下カレシ その1(少年グレイ×アリス、ifストーリー)

 ←番外編 Bitter WhiteDay3 →年下カレシ その2
※このお話では、13~16歳時のグレイが出てきます。
 キッカの妄想全開でお届けしておりますので、閲覧する際にはくれぐれもご注意ください
 本気でグレイの性格が違いすぎます。本家のイメージ崩したくない人にはおすすめしません、これはもう真剣に注意しておきます。読み終えた後の苦情はご遠慮ください。










 グレイとケンカした。
 理由なんて些細なことだったと思う。わざわざ誰かに話す気もなくなるような、くだらないこと。彼が大人で・・・・私が子供であるが故の、意見の食い違い。
 それなのに、子供な私はそれを素直に受け入れることができなくて、変な意地を張ってしまった。どうしようもない年の差が寂しくて悲しくて、彼を突き放してそのまんま。

 ・・・・・・・グレイと口をきかなくなって、十数時間帯が過ぎていた。

 正直、凹んでいる。反省もしているし、いつものごとくうじうじと思い悩んでもいる。
 謝ればいいと思うのに、彼の姿を見てまず私がすることと言えば逃げ出すことくらい。何だかもう、自分が情けなさすぎて泣きそうだ。
 いくら大人の彼だって、きっともう呆れている。嫌われたかもしれない。こんな面倒くさくて可愛くない女が恋人なんてと呆れているかもしれない。そんな後ろ向きな考えばかりが浮かんで、結局何も行動できずにいる。
 溜息をひとつつき、整理した資料を手に立ち上がる。これをグレイに届けなければならない。いくらケンカ中とは言え、仕事は仕事だ。ものすごく気まずいけれど、そこは割り切らないといけない。

(グレイも・・・・・グレイだって、何か言ってくれればいいのに)

 トボトボと歩きながら、そんな甘えたことを考えてしまう自分にますます落ち込む。
 彼はこの状況を嫌だとは思ってくれないのだろうか?このまま会話もできず、気まずくなっていくばかりの関係をどうにかしようとは思ってくれないのだろうか?
 グレイが何も言ってくれないのは、私への気持ちが冷めてしまったという意味じゃないの?
 ・・・・・・・グレイの考えていることがわからないのは、私が子供だからだろうか。


「早くロープ持ってこい、急げ!!」
「お、お願いですから大人しくしてください!!」


 ばたばたと騒々しい音に、落ち込んでいた思考が少し浮上する。
 ナイトメアが脱走を図るたび、毎度毎度この騒がしさが展開する。もうすっかり慣れた、クローバーの塔お馴染みの光景だ。
 今度は仕事か病院か・・・・・・いずれにせよ、懲りない男だ。
 声は前方の曲がり角から聞こえる。ちょうどすぐそこでナイトメアが捕らえられたようだ。そのまま仕事に強制連行されるか・・・・・抵抗して吐血してベッドに運ばれるか・・・・・・ワンパターンすぎて、いい加減少し飽きたと言いたくなってくる。
 ナイトメアにそんなところで意外性を求めてもしょうがないのだが、たまにはダメ上司でない部分のひとつやふたつ・・・・・・・

「ダメ上司とはなんだ、ダメ上司とは!!それに、私は仕事からも病院からも逃げていない!!」
「うわっ、ナイトメア!?」

 突然曲がり角から姿を現したナイトメアに、思わず驚いて足を止めた。
 予想とは違い、ナイトメアは普通に立っている。縄を巻かれてもいないし、逃げないように部下にはがいじめにされながら連行されていく様子もない。


「え、じゃあ誰が捕まったの?もしかして侵入者とか・・・・・?」
「いや。なんというか・・・・・その・・・・・・あー、その、だなあ・・・・・」
「?何よ、私には言えない・・・・・・」
「っ、離せっつってんだろーが、殺されてえのか!?つーか勝ち逃げするつもりか、この×××な芋虫が!!離しやがれ!!その息の根止めてやる!!」


 曲がり角の方向から聞こえてきた怒鳴り声に、ナイトメアは軽く肩をすくめる。
 男の子・・・・・・の声だ。どこか聞き覚えのある低音だが、いつも聞いているよりは若干高めだった。子供っぽいというか、お世辞にも口がいいとは言えない。
 ああいう喋り方の少年は、学校に通っていた時にも見かけたことがある。下町生まれの子達の中でも、特に悪ぶっている感じで、素行の悪い・・・・・いわゆる不良といった感じの子達が、大人に対してやたらと突っかかっている時と似ている。

 塔で働く人達に引きずられるようにして、縄をかけられた少年が姿を現した。
 ぎろりと鋭い金色の瞳と、視線があった。爬虫類に似た光彩の瞳。
 年は帽子屋屋敷の双子と同じくらい・・・・・だろうか。背丈もアリスとほとんど変わらない。少し長めに伸びた黒髪に、片耳にあけたピアスが、いかにも擦れた感じの少年といった風体だ。

 そして首には・・・・・・・黒いトカゲのタトゥーが、あった。

 手にしていた書類が、手からすべり落ちる。
 その姿は知らないはずなのに、見覚えがありすぎた。


「・・・・・・・・・ぐれい?」


 確かめるように問いかける。
 いつもなら温かい微笑が向けられた。とても甘い瞳で、その視線が私を映していた。かけられる言葉は、棘など滅多に含まない優しさがあった。



「誰だ、お前?なんで俺を知ってる?」



 彼の面影を残した少年は、私を冷たく睨む。
 警戒心と不信感に満ちた声に、私はただ呆然と目を瞬かせるしかなかった。





「時間が逆行している?」
「まあこの世界じゃあまり珍しいものではないが・・・・・・記憶まで昔に戻っているのは意外だったな。どうしてこうなったのか、私にもサッパリだ」
「グレイは・・・・・元に戻るの?」
「その辺りは心配ない。普通に逆行しているだけなら、数時間帯もすれば元に戻る」
「でも今回のことは、珍しいことなんでしょう?だったら、普通に戻るとも言い切れないんじゃない?」

 ナイトメアは何も答えず、少し困った顔で私の頭を優しく叩く。それが何よりの答えのように感じた。
 やっぱり・・・・・・絶対元に戻るなんて断言できないんだろう。

 ちらりと視線を目の前の少年に向ける。
 縄でしっかりと縛られたままソファに座った子供姿のグレイは、不安などこれっぽちも感じていないようだ。ただ不機嫌そうに眉をよせ、黙って私達の話を聞いている。
 時折向けられる鋭い視線に、グレイが私のことを何も覚えていないのだと思い知らされる。
 記憶ごと過去に戻ってしまっているのだから、しょうがないとはわかっている。だって私は、この頃のグレイのことを何も知らない。

「とりあえずの話は理解した。時間の逆行なら話はまだわかる・・・・・記憶の方まで逆行しているとか言う話も、百歩譲って認めてやってもいい。その方が俺も納得いくしな」
(・・・・・・偉そうだなあ、すごく)

 終始上から目線の物言いに、何だか呆気に取られてしまう。捕まっているのに堂々としていると褒めるべきか、ものすごい自信家と呆れるべきか。
 目の前にいるのがグレイだというのを一瞬忘れそうになる。それくらい、大人のグレイとはイメージがかけ離れていた。
 昔のグレイは相当悪かったと聞いていたし、本人もその話を持ち出されると嫌そうな顔をしていたのは知っているけれど・・・・・・実際見てみると、なるほど、ちょっと今のグレイが落ち込んでいた理由もわかる気がする。

「だけど、どうしても納得できねえ・・・・・・・俺が夢魔の手下?適当なこと言ってんじゃねえぞ」
「適当に言っていないよ、グレイ。お前はこの私、ナイトメア=ゴットシャルクの部下として働いているんだ。その姿の頃のお前とはまだ出会っていなかったから、信じられない気持ちもわかるが・・・・・・」
「当たり前だ、誰が信じるか!!俺は誰かに仕えるなんて真っ平御免だし、それがよりにもよって人の心が読める化け物になんて・・・・・」
「っ、ちょっと!!今の言葉、取り消しなさいよ!!」

 咄嗟に声が出ていた。爬虫類に似た瞳がぎろりとこちらに向けられるが、怖いとは思わない。それよりも腹が立ったから、私も負けずに睨み返してやる。
 いくら相手が昔のグレイだとは言え・・・・・・いや、グレイだからこそ。彼が、ナイトメアを忌み嫌うような言葉を吐くのが許せなかった。


「ナイトメアは化け物なんかじゃない!!よく知りもしないで、あなたがそんなこと言わないで!!」


 今のグレイは、ナイトメアのことを知らない。私のことも知らない。そんなことはわかっている。
 でも言わずにはいられない。そんなことを口にして、全てを思い出した後で傷つくのはグレイだ。
 だって、グレイはなんだかんだ言いつつナイトメアを大切に思っているし、彼なりに尊敬していると知っている。
 グレイの瞳が少し丸くなる。純粋に驚いた、とでも言うようなそんな表情が浮かぶ。そういう顔をしていると、なんだか尖った雰囲気が抜けて年相応に見える。

「確かに仕事はサボるわ、病院に行きたがらないわ、ろくにできもしないくせに見栄はってバカなことばっかりやっては他人様に迷惑かけるわ、本当に子供っぽくてどうしようもないダメダメ男だけど・・・・・・・ナイトメアにはナイトメアのいいところがあるのよ!?」
「・・・・・・アリス、君の言葉の方が傷つくんだが・・・・・・」
「だって本当のことだもの。本当に尊敬される上司になりたいなら、もっと威厳を感じさせるような行動とりなさいよね。子供と同レベルのダダばっかりこねてるから、昔のグレイにまでなめられるんじゃないの」
「ぐ、ぐっさあああああああああああ!!!!ひどい・・・・・・ひどいぞアリス!!グレイに忘れられて悔しいからって、私にまで八つ当たりしなくても・・・・・・!!ううっ、き、気分が・・・・・」
「なっ、だ、誰が八つ当たりしてるもんですか!!てかあんた、また勝手に人の心を・・・・・・!!」
「うっ・・・・・・・げほげほ、う、うえっ、げほ・・・・・・!!」

 咳き込んだと思ったら、いつものごとくド派手に吐血したナイトメアの姿に、グレイが「うおっ!?」と驚いた声をあげる。
 しばられたまま器用にソファの上で飛び退り、まじまじと吐血しまくる男を見ている。

「あーもう、また・・・・・・ほら、しっかりしなさいよ」
「ま、また・・・・・・・?てか、何だこれ、暗殺か・・・・・・?毒殺・・・・?」
「ぐっ、ひ、人を勝手に殺すな・・・・・・・まだ死んで・・・・・・う、げほげほごはっ!?」
「い、今にも死にそうだろうが!!つーか吐血しながらこっち見て叫ぶな!!無駄に迫力あんだよ!!そこのお前も・・・・・・なんでそんな冷静に背中なでてんだ!?」
「いや、もう慣れたし・・・・・・いつものことだしね・・・・・」
「いつものこと?暗殺未遂が?」
「違うわよ。ナイトメアの場合、ただ病弱なだけ。病弱な夢魔なの、この人」
「・・・・・・・・・びょおじゃくなむま?」

 結びつかない言葉に呆気に取られているらしい。確か、自分も初めてナイトメアが吐血した姿を見た時も、こんな反応だった気がする。
 明らかに困惑顔で首を傾げるグレイの顔は幼くて、こんな時だというのに不覚にも可愛いと思ってしまった。
 考えてみれば、グレイがこんなに露骨に表情を表に出しているのは、初めて見たかもしれない。普通の同じ年頃くらいの子供よりは表情が乏しい気もするが、大人の姿のグレイよりずっと素直に感情が顔に表れている。
 いつもならグレイの気持ちを読み取るのは難しいけれど・・・・・今のグレイなら、何となくわかるような気さえした。

「・・・・・・・病院行けよ。そんでもって入院しろ。明らかにそのレベルだろうが」
「それはできない・・・・・・・・私は、病院に行くわけにはいかない」
「はあ?自殺願望でもあんのか、あんた。なら無理には言わねえけど。それとも病院に何か恨みでも・・・・・」
「私は病院が嫌いなんだ!!!怖い、注射とか薬とか絶対に嫌だ!!私は絶対に行かないぞ、病院には行かない!!」

 ・・・・・・・あ、グレイが絶句してる。
 ナイトメアの言葉がよっぽど予想外だったのだろう。一瞬冷静さを取り戻しかけていた少年は、完全に面食らった顔になった。
 その顔が静かに俯く。よく見れば、肩が少し震えていた。


「・・・・・・・・が」
「ん?」
「ガキか、てめえはーーーーーーーーーー!!!!!」


 もっともすぎるツッコミの怒声が、部屋に響き渡る。
 なんだか新鮮だ。今更ナイトメア相手にこんなことを言う住人は珍しい。当たり前すぎて、今更誰もツッコまなくなっていた。
 思わず少し噴出す。この世界に来たばかりの頃の自分を見ているようだ。それと同じ反応をしている今のグレイが何だか面白くて、状況も忘れてしまいそうになる。
 今のグレイをやたら身近に感じることが、ちょっと不思議な気分だった。





 吐血するナイトメアをベッドに寝かしつけた後、グレイと並んで廊下を歩く。
 縄を解かれた彼は、用心深く周囲や私の一挙一動を警戒しながら、それでも大人しくついてきてくれる。
 現状を理解してもらったなら下手な行動は起こさないだろうというナイトメアの判断で、グレイは元の姿に戻るまでクローバーの塔で今まで通り生活してもらうことになっている。

「何かわからないことがあったら、遠慮なく聞いてくれていいから。グレイにも少し仕事を手伝ってもらうことになると思うけど、しばらくは私と一緒に仕事の補助をやることになると思うから・・・・・・」

 グレイの部屋へと案内をしながら、あれやこれやと話しかける。
 基本的に返事はないけれど、一応聞いてはいてくれるらしい。時々相づちを打ったり、言葉が止まれば続きを促すかのように視線だけが向けられる。
 悪ぶっている・・・・・・というか、実際に悪いのだろうが、根のところではマジメな性格のようだ。人の話を無視できないあたり、ちょっと優しいのかもしれない。ナイトメアが吐血してダダをこねていた時も、ああだこうだと説教をしていたりもしたし、面倒見がいいところもあるようだ。
 そういうところは、昔も今も変わっていないのだろう。とてもグレイらしい性格だと思う。

「お前・・・・・・・俺を怖がらないんだな」
「え?」
「さっきも俺に向かって普通に啖呵きってみせるし、今だって・・・・・・男と二人きりで部屋に向かわされてるって言うのに、警戒している素振りもない。余所者ってのは、皆そういうもんなのか?」

 私の方をまっすぐ見つめた瞳が同じ位置にあることが新鮮で、少しドキドキする。いつも彼の顔を見るときは見上げなければいけなかったけれど、今はそれが必要ない。
 つい見惚れてしまった次の瞬間、ひゅっと首に冷たいものが押し当てられる。
 どこから出したのか、小ぶりのナイフがいつの間にか首筋に向けられていた。眉ひとつ動かさず、無表情でグレイが私を見つめる。
 少しでも動いたりした瞬間、彼は迷いなく私の首を掻き切るに違いない。そう直感するほどに、グレイの瞳は冷たかった。

「ふん、なんだ。一人で俺の監視役なんて言うから、どれだけの腕前かと思えば・・・・・・驚いた、全然弱っちいじゃねえか。顔なしより弱そうだ」
「・・・・・・・・・どういうつもり?」
「それは俺の台詞だよ。ふと気を抜いた瞬間に殺されるかもしれないとか思わなかったのか?部屋まで案内した途端連れ込まれて、無理矢理犯される可能性とか想定しなかったのか?俺は別になんだっていいんだぜ。こうやって脅しちまえば、お前みたいな非力な女どうとでもできる。人質にされることも考えず、のこのこ俺についてきて・・・・・・お前こそ、何を考えてるんだ?」

 ちりっとした痛みが、首に走る。
 最近は平和だったから忘れかけていたけれど、ここはそういう世界だ。簡単に人の命が奪われる世界。そのことを誰も嘆いたりしない。傷つけることが当たり前で、弱ければ生き残っていけない。
 自覚すると少し怖い。今のグレイは私のことなんて覚えていないわけだし、本当に殺されかねない。
 ・・・・・・・・それでも。


「私、この塔の人達のこと信じているの」


 ナイトメアは、普段があれでもいざという時にとても頼りになる。彼が自分の領域であるクローバーの塔で、部下に知人を殺させるようなことをするはずがないという。それくらい大切に思われていると、自惚れではなく知っているのだから。
 そしてもちろん、グレイのことも。

「貴方に、私は殺せない」
「・・・・・・・・言い切るじゃねえか。試してみるか?その信頼とやらを」
「信じているっていうか・・・・・・信じたいの。グレイはどんなになったって、私を殺そうとはしないって・・・・・・・私が、そう勝手に信じていたいだけ」

 絶対だなんて多分ない。これは私の希望にすぎない。
 現実主義者を気取っているくせに、そういうところだけは夢を見てしまう。期待、してしまう。
 じっと見つめてくるグレイの瞳を真正面から真っ直ぐに見つめ返す。子供の姿でも大人の姿でも・・・・・・彼の目は、変わらない。
 こんな状況でも、不思議と安心して・・・・・・同時にとても心乱される。


「余所者・・・・・誰にでも好かれる、か・・・・・・・」


 先に視線を外したのは、グレイだった。
 深々と溜息をつき、ナイフを引っ込める。助かったのかと思うと同時に、額に思いっきり痛みを感じた。ピンポイントな激痛に、思わず額を両手で押さえたて呻く
 容赦なく私の額にデコピンをかましたグレイは、どこか不機嫌そうな顔をしていた。

「がたがた震えて脅えてるくせに、言うこと生意気なんだよ。めんどくせえ女・・・・・・・」
「なっ、生意気ってなによ!!今はグレイの方が年下じゃない!!」
「年は関係ねえよ、この世界では。弱いくせに年上面すんな」

 ひくりと思わず口元が引きつった。
 本当にこの少年、グレイの過去の姿・・・・・・なんだろうか。かけ離れすぎていて、やっぱりちょっと信じられない。むしろ、こんなクソ生意気なのが、自分の恋人と同一人物と信じたくないと言った方が正しいかもしれない。
 グレイの過去ならどんな姿だって受け入れられると思っていたはずの決心が、ちょっと揺らいだ。

「第一、年上ならそれらしく礼儀ってもんを見せてみろよ。名前も名乗らないのが年上か?」
「え?」
「お前は俺を知ってるかもしれないけどな、今の俺はお前と初対面なんだよ。ちゃんと自己紹介くらいしたらどうだ。俺はグレイ=リングマーク。あんたの名前はなんだ、余所者」

 ご丁寧に自分の名前をわざわざ名乗ってくれるあたり、やっぱりマジメだと思う。
 彼が言うのも確かで、確かに今のグレイは私と初対面なわけで。
 「お前」だとかなんだとか呼ぶのも生意気だと思っていたけれど、言われてみればきちんと自己紹介もしていないこちらの方が失礼だったかもしれない。


「・・・・・・・アリス=リデル、です」
「アリス、ねえ・・・・・まあよろしく?」


 すっと差し出された手に、つられて手を差し出す。
 握手をした手がぎゅっと握られたと思った瞬間、握った手が思いっきり引かれた。バランスが崩れてよろめいたと同時に、何かが軽く頬に触れた。
 わざとらしくチュッと音を立てて、少し冷たくも確かな弾力を持った何かが離れていく。

 思考が停止する。
 完全に動きの止まった私を横目に、さっさとグレイが先に歩き出す。
 でこぴんの痛みは忘れた。首筋にナイフを押し当てられた時の、ひりつく痛みも忘れた。ただ残るのは、頬に落とされた可愛らしいキスの感触。



「隙がありすぎだ。それでちょっとは懲りろよ、アリス?」



 ニッと軽く振り返って笑ったその表情が、年下のくせに無駄に色気がありすぎて、思わず顔が赤くなる。
 悪戯っぽく微笑むその顔は、大人の姿だったグレイがたまに見せる「ずるい顔」とまるっきり一緒で。


「・・・・・と、年下のくせになんであの顔なのよ・・・・・・反則でしょ・・・・・・!?」


 教えられた部屋へと姿を消したグレイの姿が見えなくなった後、私はその場にへなへなとしゃがみこんだ。
 不覚だ。あんな生意気なくせに、カッコいいだなんて、ずるすぎる。

 私のことを忘れてしまっても・・・・・・姿や態度が変わってしまっても・・・・・・・変わらず、グレイは私を翻弄するみたいで。なんだかそれが無性に悔しい。今は同い年くらいなのに・・・・・結局私は、グレイには勝てないとかそういうことなのだろう。
 惚れたもの負けとか言うのは、本当みたいだ。


(そういえば、グレイとあんなにしゃべったの・・・・・久しぶりかも・・・・・・)


 ケンカしてからまともにしゃべっていなかった。
 むしろ、あんなに素直に自分の言葉をグレイに向かって言えたことがあっただろうか。
 今の姿のグレイは・・・・・・何だか普段よりも身近に感じて、すごくしゃべりやすい。言っていることは、いちいち生意気でちょっとカチンとくるけれど。

(遠慮してたのね・・・・・・・結構。グレイには、バレてたかしら?)

 どことなく彼の気持ちに遠慮していたと、今更強く思い知る。
 言いたいことやワガママをどこか隠して・・・・・・あの些細なケンカが長引いてしまったのは、その不満が積もっていた結果だったのかもしれない。今更ながら、そんなことに思い至る。


「早くちゃんと謝りたいな・・・・・・・グレイに」


 グレイが元の姿に戻ったら、一番に謝ろう。
 ひとつ決心をして、私はようやく立ち上がった。





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