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「QuinRose」
アリスシリーズ

トライアングル ラブシック(ブログ企画、ブラッド×アリス×エリオット)

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「俺は、ブラッドのことを裏切れねえ」

 迷いのない声に、ゆっくりとアリスは目を伏せた。
 顔を見なくてもわかる。今のエリオットは、きっとどこまでも悲しそうな顔をしている。
 わかりやすすぎるほどにわかりやすく感情を見せるウサギさん。
 アメジスト色の瞳を泣きそうなほどに揺らめかせ、ぎゅっと唇を噛み、眉を強く顰めて。そんな顔をさせてしまったのが自分だと思うと、アリスには顔が上げられない。


 それなのに、アリスは掴んだエリオットの腕を離せない。
 エリオットもまた、片腕できつく抱き寄せたアリスを手放そうとはしない。


 どこで間違ったのか、何がいけなかったのか。
 原因なんてきっと一つじゃない。いろいろな要因が重なり合って、気が付けばもう後戻りのできないところまできてしまっていた。
 ああバカだなとアリスは薄く口元に笑みを引いた。
 またやってしまった。恋なんて疲れること、もう二度とごめんだと思っていたのに。認めたくないけれど、きっとこの振り回されてしまった感情こそが恋で、アリスはまたもや恋で取り返しのつかない失敗をしてしまったのだ。
 しかも今度はもっと性質が悪い。
 どう転んでも、どうにもならなそうな関係や末路しか見えてこない。ろくなもんじゃない。
 もし万が一、再び恋をするチャンスがあったとして、前よりずっと恋にトラウマを持ってしまいそうだ。


「・・・・・・それでも俺、あんたが好きなんだ」


 耳元にそっと落とされた、切実な言葉に胸が震える。
 気を許した人にはとても甘くて優しくて・・・・・・そしてボスに忠実な人。優しい彼につけこんでしまったのは、きっとアリスの方だった。エリオットをこんなにも苦しめることになったのも全て、アリスの我侭にすぎない。
 いつの間にか愛しいと思った。彼の存在が、アリスの中で救いだった。

 他人は笑うだろうか。同時に二人を好きになった、少女のことを。


「ごめん・・・・・・・・ごめんな、アリス・・・・・・・・ごめん・・・・」
(謝らないでよ)


 じわりと目元が熱くなるけれど、言葉は出さない。
 言う資格なんてない。「私も好き」だなんて。多分、それは、言ってはいけないことなんだろう。
 言葉の代わりに、少しだけ背伸びをして。
 アリスは自ら、泣きそうなウサギのそれと唇を重ねた。





 帽子屋の愛人。
 そんな風に見られるようになったのは、いつの頃からだったろう。否定しようにも、実際にそう呼ぶしかない関係だったから何と言っていいかわからない。
 気まぐれだと彼は言った。
 ブラッドにしては長く続いているとは思うけれど、いつ飽きて捨てられるか殺されるかしてもおかしくない、危うい関係であることに変わりはない。ただ体を繋げて、一時の快楽を共にするだけ。そこに愛情はないのだろう。彼は面倒は嫌いだとも言っていた。
 アリスはブラッドにとって、所有物のひとつにすぎない。
 退屈を紛らわしてくれる珍しい玩具。飽きたら簡単に捨てられてしまう、それこそきっと「代えのきく」もの。

 「愛人」などという肩書きは、正直屈辱的だったが、それでもアリスは受け入れていた。
 だって、これは夢の世界なのだ。長い長い夢であろうと、いつかは覚める。それはもう決まっていることだ。
 どんなに辛くとも、面倒でも、いつかは終わると思っていた。そう・・・・・信じていたかった。夢だと割り切っていたからこそ、アリスは流されるままにココにいる。


 現状を招いたのはアリスにも原因があると、彼女はわかっていた。

 本当は、薄々勘付いているのだ。この世界が夢という一言で片付けられる場所ではないこと。
 そして・・・・・・恐ろしいことに、アリス自身がブラッドに惹かれてしまっているということ。


 きっかけは流されたことだったのかもしれない。堕落した関係を続ける中で、どうして彼を好きだなんて思ったのか。ふとした瞬間に優しくなったり、子供っぽくなったり・・・・・・まるで大切なものを扱うように、アリスに接してくるブラッドに、何か勘違いでもしてしまったのだろうか。
 本気で愛されたいと願ってしまった。
 愛人ではなく、もっと違う関係を望んでしまった。
 ブラッドに、振り向いて欲しい・・・・・・なんて。とても報われない想いを、最悪なことに、アリスは知ってしまった。


(知りたくなかったわ・・・・・・・そんなの。辛くなるだけだもの)


 自分の気持ちに沈みかけた瞬間、乱暴に顎を掴まれて固定される。
 無理矢理あげさせられた瞳に、苛立たしげな表情が映りこんだ。鋭い視線に射られ、目を逸らすこともできなくなる。少しでも逸らした瞬間に、殺されてしまいそうだ。それほどまでに、目の前にいるブラッドから発せられる殺気はすさまじい。
 一般人にすぎないアリスには、指先ひとつも動かせなくなるほどの威圧感。
 恐怖に体が動かなくなる、というのはこういうことなのかとアリスの冷静な部分が納得する。頭の奥で危険信号が鳴り響いているというのに、アリスには掴まれた腕を振り払うことすらできない。

「・・・・・・さて、お嬢さん。私に何か言い訳することはないのかな?」
「・・・・・・何を言い訳する必要があるの?」
「おや、清廉潔白だとでも主張するつもりかな?それとも・・・・・・言い訳をする価値もない、とでも?」

 最後の言葉が絶対零度の声音で告げられる。あまりの剣呑さに、一瞬呼吸ができなくなりそうになった。
 ブラッドの自室のソファに問答無用で押し倒された瞬間から嫌な予感はしていたが、今の言葉で大体の事情を理解する。バレないと思っていたわけでもなかったが、実際にその時がくると、気分が重くなる。


「私は、自分のものに手を出されるのが嫌いでね。それはお嬢さんも知っているだろう?例え相手が身内であれ・・・・・・私のものに手を出したことは、許しがたい。・・・・・・・殺してしまいたくなる」


 くくっ、と口元だけで笑ってみせるその表情は、まさにマフィアのボスという肩書きがぴったりだ。
 だが皮肉げなその口調や表情とは裏腹に、彼の目はちっとも笑っていない。おそらく、彼は本気だ。本気で・・・・・・「身内」を殺す気だ。

「ハッキリ言ったらどう?私とエリオットが想いあっているのが気に食わない、って」
「・・・・・・認めるのか」
「認めるも何も・・・・・・事実よ。私は、エリオットが好き。エリオットも私のことを好きでいてくれるわ」

 気持ちの半分を隠して告げると、その場の空気がさらに数度下がったような感覚に襲われる。
 ますます凄みの増した殺気に、アリスは内心でそっと微笑んだ。どうしてだろう。こんな命の危険感じるような空気が、嬉しいと思ってしまうのは。
 たとえそれが、自分のものにしたお気に入りの「玩具」を他人に奪われることへの執着だったとしても。
 そんな些細で歪んだ愛情すら、向けてもらえたことを嬉しく思うアリスがいるのだ。


(わかってもらおうなんて思わないわ。あなたにも・・・・・・エリオットにも。どちらが大切とか、どちらが好きとかじゃない。二人とも、私にとってはかけがえのない存在なんだって)


 アリスがエリオットを好きになったのは、彼が変わらずにアリスを好きだと言ってくれたから。
 ブラッドへの「恋」に気付いたばかりの頃、アリスはいつも苦しかった。愛人として扱われることが苦痛で、どうせ報われないのだという絶望的な未来しか見えなくて。
 ・・・・・・・これが夢でないとすれば、どうすればいいのかと不安で。

 そんな時に、エリオットの好意がアリスの心をいつも慰めてくれた。真っ直ぐな愛情を向けられる彼が羨ましくて、その愛情を向けてくれる相手が自分であることが嬉しくて。気が付けば、エリオットといると穏やかな気持ちでいられることが多くなっていた。
 エリオットがアリスに向けていた感情が、段々と「恋」に変わっていくのを理解していて、彼女はそれを止めようとはしなかった。
 向けられる感情の心地よさに甘え、エリオットの優しさに縋り、どうしようもできない心の空虚さを埋めた。アリスにとって、エリオットは逃げ場であり、救いだった。
 今更・・・・・・手放すことができないほど、アリスはエリオットに依存していた。


「なるほど。お嬢さんは主従の血で血を争う結末をお望みかな?あいにくだが、やつは私が『死ね』と言えば喜んで死ぬぞ。どう足掻こうと、君とやつが幸せになることなどない。・・・・・・私が、許さない」
「そうでしょうね。でも、どんな筋書きであっても・・・・・・貴方と私が幸せになる結末もないわ。エリオットを殺したら、私の心も死ぬでしょうね。体を手に入れることはできたとしても・・・・・貴方に、私の全てを手に入れることはできないわ。貴方の思い通りになんて、なってあげない」


 それはきっと事実だ。
 エリオットをブラッドが殺せば、アリスの心も恐らく死ぬのだろう。彼女の心は、ブラッドとエリオットに半分ずつ奪われているのだ。どちらか片方だけ残ったところで、意味はないのだ。
 両方存在していなければ、アリスがこの世界に残る意味もない。



「・・・・・・そうか。ならば、仕方ない」



 するりと。
 顎を押さえていた指が離され、代わりに首へと手がかけられる。何を言う暇もなく、その手に力が込められた。
 押さえつけられた気道の圧迫感が思考を奪い取っていく。声を出そうとしても、うまく呼吸できない吐息の音が漏れ聞こえるだけ。頭がガンガンと痛み、視界がぼやけていく。自由になる方の手で必死に喉元を締め付ける力に爪を立てたが、それはびくとも揺るがない。

「奪えないのなら・・・・・・壊せばいい。私の手で、な」

 チカチカと赤い光が目の前を飛ぶ。
 ブラッドと名前を呼ぼうとした唇が震えたが、音にはならないまま。
 彼がどんな表情をしているのか、滲んだ視界では見えない。歪んで、ゆらゆらと揺れて。やがてゆっくりと思考も何もかもが闇の中に沈み込んでいく。


(・・・・・・・・そう、死ぬのね)


 不思議と気持ちは穏やかだった。死にたくないわけではないけれど、ブラッドに殺されるのは仕方ないかと思えた。ブラッドか・・・・・あるいはエリオットに。
 あの二人になら、殺されてしまっても仕方がない。恨むことなんてできない。それだけのことをしてしまった自覚はある。
 ふわりふわりとした意識の中で、どうしてかブラッドが泣きそうな表情をしているように思えた。
 置いていかれた子供みたいな、迷子の・・・・・・・どうしてそう見えたのかなんて、わからない。もうろくに見えないはずなのに。

(知りたかった、な・・・・・・ブラッドの気持ち・・・・・)

 いつも隠されてばかりで、不安だった。振り向いてもらえないと決定的になるのが怖くて、何も聞けずにいた。
 どうしてかこんな段階になって、ブラッドに優しくされたときの記憶がよぎった。本当に愛されていると錯覚してしまいそうな・・・・・・そんな甘い眼差しを、不意に思い出してしまった。
 本音を教えてと。
 そう尋ねる勇気がアリスにあったなら、もしかして何かは変わっただろうか。エリオットを苦しませずに済んだだろうか。ブラッドに愛されていると・・・・・・自信を持つことができたのだろうか。



「っ・・・・・・・そんな目を、するな」



 遠くなり始めた耳に、悲痛な声が聞こえた。
 開放感が不意に喉元を中心に広がり、アリスは勢いよく咳き込んだ。肺へと突然入り込んできた空気が、ひどく痛くて涙が出た。
 滲んだ目元にそっと何かが触れ、視界がクリアになる。
 先ほどよりずっと遠くにブラッドの顔があった。表情は相変わらず厳しいままだったが、労わるように目元を拭う指先がひどく優しくて、アリスは別の涙が出そうになるのを懸命に堪えた。


「・・・・・・・そんな目、って・・・・・?」
「・・・・・・・」


 うまく呼吸が追いつかず、ひゅーひゅーと音を立てながら何とか言葉を口にする。
 けれどブラッドは何も言わず、小さく舌打ちしただけだった。機嫌は悪そうだが・・・・・・殺気は、幾分かおさまっているようにも感じる。

「アリス。君は、私のものだ」
「・・・・・・・・・・」
「君が否定しようとも、どこに行こうと、何をしようと。それだけは変わらない。私がそう決めたからな。君は私のものだ、と」

 多分、否定したところで無駄なのだろう。アリスは力なく首を振った。
 結局何も変わらない。何も・・・・・・・変えることができない。
 ブラッドが不意に立ち上がる。そのまま部屋の出口へと歩いていき、ドアを開く前に少しだけアリスを振り返った。その表情は、いつもの読めないマフィアのボス、そのものの笑みだった。


「君がそのことを覚えてさえいるのならば・・・・・・たまに、少しの火遊びも大目に見てやるとしよう。お嬢さんにも刺激のひとつやふたつ、欲しいこともあるだろうからな」
「・・・・・・・ブラッド?」
「まだまだ、やつには働いてもらわなければならないこともある。当分は生かしておいてやろう。だが、忘れるな、お嬢さん。君があまりにも火遊びに夢中になるようならば・・・・・・二度目は、ない」


 そのままドアの向こうへと消えた背中を呆然と見送る。
 ゆっくりと体を起こし、アリスはそっと首元に手をやった。この首をへし折らんばかりの力の余韻が、まだじんわりと残っている。


「・・・・・・本当に、素直じゃないんだから」


 ぽろぽろと涙が零れて、アリスはこみ上げる嗚咽を押し殺した。
 殺したくないと、多分思ったのだろう。
 彼の感情はわかりにくいけれど、恐らく躊躇いがあったのは事実だ。アリスもエリオットも殺さないという選択を、ブラッドは許容した。それは最大限の譲歩だろう。だが同時に、この関係にピリオドを打たないという道を選んだことにもなる。

 どうせなら終わらせて欲しかった。
 終わらせてもよかったのだ。このまま進んだところで、この関係が何かを生むとは思えない。
 辛い気持ちのまま、先も見えない時間をただ繰り返すのみというのなら、何も残らずに消してくれればよかったのに。
 自分で終わらせる勇気もないのに。終わりを与えてくれる瞬間を、待ちわびている。
 わかっている。これはただの我侭だ。



「・・・・・・・・・好きよ・・・・・・・」



 応える声のない、冷たく広い部屋の中で。
 少女の呟きだけが、寂しく消えた。





End.
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