スポンサー広告

スポンサーサイト

 ←その子、最強につき →好き嫌い、禁止!
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
総もくじ  3kaku_s_L.png ネオロマ
総もくじ  3kaku_s_L.png QuinRose
総もくじ  3kaku_s_L.png オトメイト系
総もくじ  3kaku_s_L.png リジェ系
もくじ  3kaku_s_L.png その他
総もくじ  3kaku_s_L.png お題もの
  • 【その子、最強につき】へ
  • 【好き嫌い、禁止!】へ
  • TB(-)|
  • CO(-) 
  • Edit

「QuinRose」
アリスシリーズ

one night(ハートの国、ユリアリ)

 ←その子、最強につき →好き嫌い、禁止!
 恋なんてしたくないと思っていたから、結婚なんてもっと遠いことのように思っていた。いつかは結婚しなくちゃならないんだろうという漠然とした想像はしていても、いつだってそれは他人事で。
 私にとっては、「面倒」なことのひとつだった。

 だから、とんだ予想外の事態だ、こんなの。
 夢か現実かも未だによくわからないような世界で、こんなに早く結婚することになるなんて。
 しかも相手は年上の、とびっきり偏屈な引きこもり男。
 仕事に夢中になりすぎると周りが見えなくなって、いつも仏頂面で、言葉は辛らつで、私といい勝負のネガティブ思考の持ち主。そんな相手が旦那様。
 姉さんが聞いたら、どう思うのかしら。


 でも、でもね、姉さん。
 私、ユリウスと結婚すること、悪くないって思えたのよ。



one night



「普通もうちょっとくらい何かあると思うのよ」
「・・・・・・何がだ」

 いつまでも寝ようとしないまま、ベッドの上からしつこく話しかける私にいい加減疲れたのか、ユリウスはようやくこちらを振り返った。
 眼鏡をかけた仕事スタイル。
 眉間に皺をよせて、不機嫌そうな顔。
 でもそれが、別に私がうるさくしていたせいだからというわけじゃないことくらいわかってる。どちらかというと・・・・・・今は心配してくれている。眠れない様子の私のために、わざわざ仕事を中断してまで向かい合ってくれる人。口には出さないけど、それくらいならわかるようになった。
 ユリウスはわかりにくくて、よく誤解される態度を取ってしまう不器用な人だ。それでもある程度は読めるくらいに、私はユリウスにとって近い存在になったと自負している。

 いつの間にかこんなにも。
 近くて大切な存在になっていた。

「疲れていたんじゃないのか?さっさと寝ろ。お前に体調を崩されても迷惑だ」
「寝るわよ?寝るけど・・・・・・ユリウスが寝ないんだもの」
「私はまだ仕事が残っている。構わずに寝ていればいいだろう。それとも何だ?今更作業の音が気になって眠れないなどと言うわけでは・・・・・・・」
「そうじゃなくて・・・・・・・」

 思わず深々と溜息をついてしまう。
 ユリウス相手に女心を理解しろという方が無理だろうか。それでもこの場合、男でも気にするものというか・・・・・・・普通、そういう流れになると思うのだけど。
 私の勝手な思い違いだったりするのかもしれない。

「あのね、ユリウス。私達、つい数時間帯前に結婚式挙げたばかりよね?」
「?ああ、そうだが」
「つまり私達って夫婦ってことになるわよね?しかも新婚」
「まあ、そういうことになるな」
「そして今は、夜の時間帯。結婚式迎えてから、初めての夜・・・・・・」
「・・・・・・・・・」

 さすがにここまで言えば、何を言いたいかくらいはわかったのか、ユリウスが持っていた工具を落とした。
 慌てて背けた顔が薄闇でも赤いのが、ハッキリとわかる。
 ・・・・・・正しい乙女の反応だ。
 どうして、アレやらコレやらも済ませているような関係なのに、今更そんなに初心な態度を返せるのだろう。普通それは私がやるべき反応なのかもしれないけれど、残念ながら私はそんなに純情でもなかったらしい。


「・・・・・・折角の初夜に、花嫁を一人寝させるのもどうかと思うのよ、個人的に」
「しょっ!!?お、お前はまたそうやって・・・・・・!!」
「私からしてみれば、今更そんなに照れるユリウスの方が謎なんだけど」


 少し不満たらしく言ってみせると、ユリウスはぐっと言葉に詰まった。
 ちょっと意地悪だったかもしれないけれど、これくらいは許して欲しい。だって、何だか不満なのだ。これじゃあ、私だけが欲しがっているみたい。

 ・・・・・・・好きな人の全てが欲しいと思うのは、男だけの感情じゃない。
 ユリウスと恋をして、夫婦になって、知った感情。彼を独占したくて仕方がない。

 しばらく何やら悩んでいるような素振りを見せた後、少しばかり自暴自棄になったのか、ユリウスが眼鏡を乱暴に外した。そのままムスッとした顔でベッドに近づく。ベッドの上にまで上がってくることはせず、二段ベッドへと続くはしごの辺りから私を恨めしそうに睨みつける。
 前にもこんなことがあったっけなと懐かしく思いながら、間近に迫った顔に微笑みかけた。

「いちいち煽るな・・・・・・お前は疲れているんじゃなかったのか?」
「疲れてるわよ?結婚式があんなに神経使うものだとは思わなかったわ・・・・・」

 思わずしみじみと呟く。
 数時間帯前に何とか無事に終えたユリウスとの結婚式は、精神的にほんっっっとうに疲れた。
 準備の段階でも慣れないことの連続に大変だったが、当日は当日で目まぐるしかった。
 ひっそりと行われるはずだった結婚式が、当の主役夫婦も知らないうちにものすごい規模の結婚式に何故か変更されていたところから始まり、お色直しの回数が倍増しているわ、招待客は誰も彼もが好き勝手し放題だわ、あちらこちらで険悪なムードが流れかけるわ、花嫁略奪を企む輩までいるわ・・・・・・・考えてみると、とても「無事に終えた」とは言えない結婚式だったように思う。
 おかげで、未だに疲労が抜けきらない。本音を言うならば、寝ていたいくらいだ。

「・・・・・・・お前は他の奴らに人気があるからな。いつもいい顔ばかりして」
「またそういうこと・・・・・・・んっ!?」

 不意に顔を引き寄せられ、キスをされる。
 驚いたのは一瞬だけ、すぐに目を閉じてユリウスを受け入れる。
 いつもより性急に深められたキスに酔いしれ、応えて手を伸ばす。私からもユリウスを引き寄せ、舌を絡めていく。息苦しさに生理的な涙が浮かぶけれど、嫌ではない。
 ただただ嬉しい。
 彼の体温を感じられること。彼が私を求めてくれること。



 他の誰でもない、ユリウスと夫婦になれたこと。



 どうしてだろう。別に結婚したからと言って、私達の生活が劇的に変わったわけじゃない。
 だって私は結婚する前からずっとユリウスと暮らしてきたし、キスだって、それ以上のことだって、彼と済ませてしまっている。
 ユリウスの考えていることは大体わかるようになったし、好みのコーヒーの味だとか仕事の休憩に声をかけるタイミングだとか、意識しなくても自然と振舞えるようにもなった。たまに顔を出すエースからは「熟年夫婦って感じだよな~」なんてからかわれるくらい、当たり前のように一緒にいたから。
 正直、結婚しても、私達は何も変わらない。
 前と同じ生活が、続いていくだけ。

 それでも結婚式を終えて、こうして夫婦としての「初夜」を迎えて。
 そうしたら、何だか今がとても特別なことのように思えた。
 今までとは違う、新しくてくすぐったい絆が生まれたような気がした。疲れているなんてことを理由にして、「初夜」に何の思い出もないまま終わらせてしまうことが、もったいない気がした。
 私は、ユリウスと何か思い出を作りたかったんだと思う。

 だけど、同じくらい疲れているはずのユリウスは、真っ先に溜まっている仕事に取り掛かった。それが私には不満だし、心配で。
 ・・・・・・構ってもらえないのが不満で、疲れているユリウスのことが心配。
 だから、理由付けは何だっていい。休んで欲しいし、甘えさせて欲しいのだ。そんな我侭にすぎないことってわかっているけれど、夫婦になって初めての夜くらい・・・・・・そんな特別を許して欲しい。
 そう思うのは、やっぱり迷惑だろうか?


「疲れている、と言っていたから・・・・・」
「え・・・・・?」


 キスの合い間に囁かれた言葉に、目を開ける。
 唇が少し離れ、おでこを軽くコツンと合わせられる。
 すぐ間近で、群青色の瞳が優しい色を宿していた。ユリウスの表情は見えなかったけれど、きっと恥ずかしくなるくらい優しい笑顔を浮かべてくれているんだろうなと感じた。



「お前が疲れていると言っていたから、休ませてやろうと思っていたんだが・・・・・・やめた。夫を煽った責任は、妻が取るべきだろう?」



 そう言って再び重ねられた唇に、小さく微笑み返す。
 夫と妻。
 その響きがくすぐったい。
 何が変わったわけじゃないかもしれないけど、小さな実感が心に優しい幸せを与えてくれる。


 ねえ、姉さん。


 届かない大切な人に。もう会うことのできない人に、呼びかける。

 結婚なんてね、面倒くさいだけだと思っていたの。
 恋愛なんてね、辛くて情けないだけだと思っていたの。

 でも、ユリウスと結婚した私はね、今、とっても幸せよ。


 幸せになっちゃいけないと思った。どうしてかそう思っていた。
 だけど幸せにしてあげたい人ができた。
 その人の幸せを考えたら、私も幸せになっていた。

 私はその人の幸せのためだったら、何だってできるから。
 だから、ねえ、姉さん。



 私は幸せになってもいいですか?



「・・・・・・・愛している」



 幸せの中で彼が囁く愛しい言葉。
 きっとそれが答えだから。

 私もとびっきりの愛をこめて、同じ言葉を囁いた。





End.
関連記事
スポンサーサイト


総もくじ 3kaku_s_L.png ネオロマ
総もくじ 3kaku_s_L.png オトメイト系
総もくじ 3kaku_s_L.png リジェ系
総もくじ 3kaku_s_L.png お題もの
もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
総もくじ  3kaku_s_L.png ネオロマ
総もくじ  3kaku_s_L.png QuinRose
総もくじ  3kaku_s_L.png オトメイト系
総もくじ  3kaku_s_L.png リジェ系
もくじ  3kaku_s_L.png その他
総もくじ  3kaku_s_L.png お題もの
  • 【その子、最強につき】へ
  • 【好き嫌い、禁止!】へ
  • Tag List 
  •  * |

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【その子、最強につき】へ
  • 【好き嫌い、禁止!】へ
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。